215:マジック、精霊との連携を試みる。
五階へと到着したが、ダンジョン内の外観は特に変わっていない。
土がむき出しの、あまり手が加えられていないような天然の洞窟っぽくも見える。
まぁ地面は平だし、壁も特に凸凹しているわけではないので歩きやすいけどな。
「セシリア……んところの執事さんの話だと、ここは地属性モンスターの巣窟だっけか?」
「うむ。うちの執事さんはとても優しくて、いろいろ教えてくれるの」
セシリアに似てぽんこつなんだろう。うちのシンフォニアもけっこうぽろり属性持ってるけど、セシリアんところには負けるかもしれない。
「地属性モンスターばっかりなら……ノームとの相性は最悪ってことで」
〔の!?〕
「サラマンダー、出てこい」
〔のおおおぉぉぉぉ〔ぼっ〕
よっぽど俺と一緒に居たいのかノームは。
代わりに出てきたサラマンダーは、二息歩行状態で宙に浮き、腕を組んで明後日の方角を見ている。しかも舌打ちしやがった。
が、チラッチラとこちらを見ては、目線が合うと慌ててそっぽを向く。
ツンデレ過ぎだろ。
「よぉし、先に進むぞ〜」
「「おぉ〜」」
落とし穴がない分、四階より楽勝だな。
いや楽勝過ぎる。
まぁ地属性モンスターの巣窟で落とし穴なんかあったら、奴らもガンガン落ちるだろうしな。そういう意味で四階は飛行系ばかりのフロアだったのか。
〔ぼっぼぼぼっぼ〕
恰幅のいいフォルムのサラマンダーの通常攻撃は、口から吐き出す炎のブレスだ。
丸いが一応ドラゴンっぽい容姿だもんな。それっぽい。
近づいてくるモンスターの所まで飛んでいくと、ブレスを吐きかけて戻ってくる。
相手は地属性。遠距離攻撃手段を持ってないと飛んでる奴には、反撃もできないようだ。
〔ぷ!〕
「いや、あたちでも倒せるかしらって、そもそもお前、攻撃できないだろ」
〔ぶ!〕
そうだったわって……。
しかしなんで攻撃不可な設定したんだろうなぁ。出来るようになればもっと楽なのに。
まぁ今の俺には精霊がいるからな。しかもこっちは餌代が掛からないという、コストパフォーマンスで言えば最高の相棒だ。
ただ――
〔ぼっ。ぼぼぼぉぼぼっ〕
「あ、あぁ。ちゃんとやるって」
俺様ばかり戦わせてないで、てめぇーも戦いやがれ糞が。と仰ってます。
このヤンキーかぶれなのだけはどうにかならないものか……。
こいつにどんなスキルを作って貰うかなぁ。
やっぱ派手なエフェクトの攻撃魔法がいいよなぁ。
「サラマンダー。お前はどんなスキルが作りたいか?」
〔ぼ? ぼ、ぼぼ、ぼぼぼぼぼぉっぼ〕
俺様? そ、そんなの、お前の好きなように考えさせてやってもいいんだぞ……だからなんでツンデレなんだよ!
「マジック君、サラマンダーちゃんは何て言ってるのだ?」
〔ぼ、ぼっぼぉっ!? ぼぼぼぼぼっぼぼっ〕
ちゃん付けされてサラマンダーがお怒り――いや、照れてる?
「サラマンダーちゃん!? 俺様をサラマンダーちゃんなんて呼ぶな恥ずかしい。といいつつ、まんざらでもないようだぞ」
〔ぼっぼぼぼっぼっぼっ〕
「そっか。じゃあサラマンダーちゃん」
にっこり微笑むセシリアを見て、黄色やオレンジ交じりのサラマンダーの体は、完全に真っ赤な炎に変わった。
更にサラマンダーがきらきら光り、そのきらきらがセシリアを包む。
【サラマンダーの新スキルが作成されました】
そんなシステムメッセージが浮かぶ。
おい、絆されてスキル作ってんじゃねえぞ!
いったい何を作ったんだ。
ステータスを見てみると――
【炎の勇気と保護】
武器に炎属性を付与。
防具に炎によるバリアコーティング。
これにより、火属性による被ダメージ30%ダウン。
地属性による被ダメージ50%ダウン。
……バフスキルじゃねえかあぁぁぁっ!
「武器に属性が付いたよマジック君!? これがサラマンダーちゃんのスキル?」
〔ぼっ〕
腕を組んで随分とドヤ顔じゃねえかサラマンダーよ。
俺は攻撃スキルを作って欲しかったのに……あとでスキル忘却してやる。
このスキルを俺が使えるようになったら、全部効果が真逆になるんだよな?
武器への付与はどうなるか分からないが、防具のほうはダメージアップするようになるから恐ろしい効果になってしまう。
却下だ却下っ。
「サラマンダー。後でスキル取り直しな」
〔ぼっ!〕
「マジック氏、精霊に振り回されてるな」
「精霊って、もっと従順なのかと思ってました」
俺的には割と自分勝手にやってるイメージだな。
ただノームなんかは出来る子ではある。
まぁこの辺りは付き合いの長さも関係しているかもしれないので、ここでサラマンダーとの良好な関係を築いていかないとな。
「よし、サラマンダー! 俺との連携魔法、行くぞっ」
……。
返事がない。
くるっと振り返ると、背を向け宙に寝そべる奴の姿があった。




