第44話 帝都大学付属第一中学校 三年B組の文通による交流記録
ちきゅうのともだちへ。
こんにちは、ちきゅうのともだち。
あなたたちとこうりゅうできたことを、とてもうれしくおもいます。
ししょうにおねがいして、あなたたちにおてがみをかくことにしました。
わたしは、まだちきゅうのもぢをべんきょうちゅうなので、ちょっとよみずらいとおもいます。
これからどんどんうまくなっていくよていなので、よろしくおねがいしますね。
りぃるより
「うわあ、本当に手紙だ!」
「おい、俺にも見せろよ!」
「返事書こうぜ!いいですよね、先生?」
「そうですね。では、誰が返事を書くかですが・・・」
リィルさんへ。
こんにちは、異界の友だち。
僕たちも、こうしてあなたと交流することができて大変うれしく思います。
僕たちも、最近あなたたちの世界の言語や文字を勉強し始めました。
これからもこうして文通することを通して、交流をしていきましょう。
よろしくお願いします!
追伸
これから交代しながら、学級の皆が一人ずつ手紙を書きます!
帝都大学付属第一中学校 三年B組 大滝 正太郎
「ししょう、ししょう!へんじがきた!」
「うん、よかったね。しかし彼らは、綺麗な字を書くものだな」
「でもなんで、びんせんがあけてあるんだろう?」
「・・・。ああ、それは・・・」
ちきゅうのともだちへ。
おへんぢありがとうございます。
これからも、おてがみをかいていきます。
きょうは、わたしのししょうのおはなしをします。
わたしのししょうは、ちょっといやな入です。
とてもつよいけれど、小ごとばかりです。
りょうりがじょうづだけれど、おさけばかりのみます。
でも、わたしのたいせつなししょうです。
りぃるより
「ししょう?師匠かな?」
「あの時の赤毛のでっかい人かな」
「うーん。料理が上手なら、こっちの食材とか贈れないかな」
「先生!私たちで先日のお礼、何か贈りましょうよ!」
「そうですね。しかし、保存がきくものの方がよいと思いますよ。向こうへ着くまでに、時間がかかるかもしれません」
リィル様。
こんにちは、異界の友だち。
今日は、私たちから先日のお礼をお贈りしました。
貴女には日本のお茶を。貴女のお師匠さんには、お酒を。
本当はお菓子とか食材なんかを贈りたかったんですけれど、環の管理区域を通り抜けるまでにどれだけ時間がかかるか分からないので、保存がきくものにしました。
ほんの一端ではありますが、私たち大日本帝國の味を楽しんでくださいね。
追伸
私たちは、これから■■に修学旅行に行きます。
貴女がこの手紙を読んでいる頃には、私たちは■■■に乗っている最中かもしれませんね。
帝都大学付属第一中学校 三年B組 十和田 恭子
「うーん。おかしがよかったなぁ」
「他人様から頂いたものに、文句をつけてはいけないよ」
「ところでししょう。このぬりつぶされているのはなんですか」
「ああ・・・、うん。恐らく、検閲だろうね」
「けんえつ?」
ちきゅうのともだちへ。
おくりものをありがとう。たいせつにあじわわせてもらいます。
りょこうというのはいいですね。わたしも、ついせんじつこきょうのむらへりょこうにいきました。
なんとそこには■■■■があらわれていて、たいへんなさわぎになっていました。
そこでししょうが、■■■■をやっつけて、むらをすくってくれたんです。
ししょうはロうるさい入ですが、とてもつよい入です。
リぃルより
「何だろ?何かと戦ったのかな?」
「やっぱモンスター?ドラゴンとかだったりして!」
「あの赤毛の人、すごく強いのかぁ」
「しっかしまあ、子どもの書く手紙まで検閲するなんてなあ・・・」
「先生!まさか私たちの手紙まで、されてないでしょうね!?」
リィルちゃんへ。
今回は、学校で勉強していることについて書きます。
俺たちの学校では、文字や計算、歴史とか外国のことなんかを勉強しています。
俺たち日本の周りには、■■や■■■なんて国があって、現在周辺国にちょっかいを出しまくっていて大変迷惑です。
それをよく思わない■■■■を始めとする■■■■なんていう国同士の連合が、仲のいい国に軍隊を駐屯させて、睨み合っています。
そっちにもあるのかな?
■■というやつです。
俺たち日本はどうにか中立を保てていますが、そのうち――
「・・・これは、駄目だな」
「ああ。とりあえず、委員会を通して校長に警告しておこう」
「しかし、子ども同士の文通ですら、こうして目を通さねばならんとはな」
「まったく、不健全な関係だよ」
リィルちゃんへ。
この手紙の前に別の手紙を書いたのですが、管理局の方で誤って紛失してしまったそうなので、改めて書きます。
俺たちは、毎日をこの学校で勉強して過ごしています。
勉強するのは、将来のためです。
例えば俺は、将来は■■■■を開発する研究者になりたいと思っています。
この前、そっちの世界で見たあの■■■■を見て、感動したからです。
俺は絶対に、この日本でも二足歩行型の巨大■■■■を作るつもりです!
もし完成したら、リィルちゃんを呼んで乗せてあげるからね!
帝都大学付属第一中学校 三年B組 相良 真治
「うーん、なんだろう、これ?」
「ひょっとして、巨像のことではないかな?」
「・・・ああ、なるほど!このひとは、きょぞうをつくるぎじゅつしゃになりたいのか!」
「しかしまあ。この程度の情報にすら神経を尖らせるとは・・・」
ちきゅうのともだちへ。
しょうらいのことをかんがえているなんて、すごいですね。
わたしもせんじつ、ししょうからしょうらいのことについてかんがえるようにいわれました。
ししょうがいうには、わたしは■■■■■■■がむいているんだそうです。
ししょう白しんが■■■■■だから、わたしにもおなじことをしてもらいたいようです。
■■■■■■■というのが、とてもたいせつなしごとだというのはわかります。
でも、わたしはかみさまなんてきらいだし、あんまりなりたくないなあ、とおもっています。
まだまだわたしは子どもなので、もうすこしかんがえてからこたえを出そうとおもいます。
リィルより
「・・・?なんだろうな?」
「やっぱりゲームの職業みたいに、なんかすっごい重要なクラスとかなんじゃないの?」
「うおお、かっこいー!」
「意外と普通の職業かもよ。・・・どうしたの、汐里?」
「・・・。うん、ちょっとね・・・」
リィルさんへ。
今日は、私たちの世界のことを書きます。
私たちの世界は、■■というとても悲しい状態に陥っています。
一歩間違えば■■になるという状態のことです。
私たち日本のことは、■■■■が守ってくれていますが、貴女たちの世界とも同じような関係になっています。
この手紙も、■■■■■■■■■■■■■■■■■。
貴女とのほんの些細な語らいも、許されないようです。とても悲しいことです。
でも、私はめげません!
いつかまた、貴女と一緒に遊びたい!
私の故郷、■■■を案内したいんです。
■■■は、■■■でとても有名なんです!
絶対に絶対に、もう一度会いましょう!
帝都大学付属第一中学校 三年B組 江原 汐里
「ううん。ししょう、これじゃあよくわからない・・・」
「ふむ・・・。よし、ちょっと待っていなさい」
「え?」
「人と会ってくるよ。返事を書いていなさい」
ちきゅうのともだちへ。
なんだか、わたしたちの手がみをおとなたちがかってによんで、きにいらないぶぶんをけしてしまっていたようですね。
とてもかなしいことです。
あのときのわたしたちは、あまりことばはつうじなくとも、たしかにこころをつうじあわせていたはずなのです。
人やものがつうじにくいあいだがらであっても、せめてこのささやかな手がみくらいは、つうじてほしいとおもっています。
リィルより
「素通ししろと言うのか?」
「領主から直々の指示だ。もともと子ども同士の他愛もない文通だったんだ。書かれていたことなんて、向こうが知っていることばかりだっただろう」
「・・・まあ、今までが異常だったのかもしれないな」
「これを機に、ニホンとの交流の淀みが少しでも解消できれば、かえって良いんだろう」
私たちの友だち、リィルさんへ!
やっとまともにお手紙のやり取りができるようになって、とてもうれしく思います!
私たち三年B組の皆も、いいえ、付属第一中の皆も、同じ気持ちです。
私たち二つの世界は、長い時間の中で不幸な行き違いがあったようです。
しかしながら、貴女のようなやさしい女の子と交流することができているということは、関係の改善は可能だということを証明していると思います。
私たちが貴女の世界を訪れた時に、貴女は精一杯のおもてなしをしてくれました。
その気持ちを、私たちはとてもうれしく感じたんです。
これって、私たちと貴女たちが、同じような心を持っているってことですよね。
こからは大人たちに頼らずに、私たちの力でどんどん交流の機会を増やしていきましょう!
今度は、ぜひとも私たちの地球へ。
日本へ、来てくださいね!
帝都大学付属第一中学校 三年B組 大鳥 加奈子
「ししょう、ちゃんとぶんつうできるようになりましたね」
「ああ。骨を折った甲斐があったよ」
「いったいなにをしたんですか」
「いや、なに。ちょっと領主と話し合っただけさ。真剣に、ね」
「・・・」




