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さん


「…そう、定期をなくしたんだよ、だから朝は自腹だし」



現在昼12時、俺は教室で森野と弁当を食べていた。


森野って言うのは俺の親友である。生徒会書記をやっていて真面目なんだが、頭が固いなんてことはなく、結構くだけた感じの良い奴だ。

友達つくるならどんな奴がいいかって聞かれたら、間違いなく森野って言う。そんくらいだ。



「あら、佐藤君んちって結構遠かったよね?片道500円くらいかな?」


そうなのだ。片道550円もするので定期は必需品。しかもあと1ヵ月分余ってるし。


「…まじ最悪だ。」


「帰りにでも窓口いってみたら?なんか対応してくれるはずでしょ」


「…だな」



森野はホントにいいやつだ。人の失敗を笑わず聞いてくれるし。




そういえば、森野は俺の病気のことを話したとき、疑わずに素直に心配してくれた唯一の人間でもある。あの時はホントに泣きそうになった。


ちなみに、俺のアレルギーについて知ってる人は少ない。医者に家族、そしてこの学校には森野の他にあと一人。それは…



「何々?定期なくしたんだって?」



「ぶぇくしゅ!!」


ご飯中に本気でくしゃみをしてしまった。森野スマン。


「アハハッ!相変わらず激しいくしゃみだこと」


「…半径2メートル以上離れろっていってんだろ!」


「今のは空中セーフだもん、ほれほれー」

「やめろって…ヘクション!」



今、俺の周りで調子のってるこの女は青木しずく。俺の幼なじみで、アレルギーのことを知ってるもう一人の人間だ。


こいつは森野と違って悪戯好きなわんぱく女である。俺がアレルギーなことを知ってるくせにわざと近づいてきやがる。


まぁただ、青木のおかげで俺はこの高校で上手くやっていけてるといっても過言ではない。彼女は顔が広いから、俺の近くでしゃべってる女子たちをさりげなく移動させてくれたりする。そこは本当に感謝しているところだ。


ただ、イタズラで完全チャラだけどな。



「でも定期なくすなんて、翼ってホントにどんくさいね」


「うるせー」


「まぁまぁ二人とも」



この三人はクラスが一緒で、基本的にこのメンバーで普段は過ごしている。もちろん他にも友達はいるけど、なんかこの面子がバランスがとれてるというか…まぁ居心地がいいってかんじなのだ。


だから今日もこんな感じで昼休みを過ごしていた。


しかし。



ガラッ



騒がしかった教室が少し静かになった。



…ん?どうしたんだ?


森野も青木もなにやら教室に入ってきた生徒を見ている様子。


俺はゆっくりと後ろの方を振り返った。



…え?



手に持っていた思わず箸を落としてしまった。


そんな…まさかこんなことがあるのか……!?


その状態で固まっている俺の方に生徒は歩み寄っていく。そして目の前に来て一言。


「…よぉ、おっぱい野郎!」

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