にじゅーさん
ごめんなさい><
「じゃじゃーん!!」
妹が大人の階段をのぼって数日後の昼休み、筑紫さんが無駄に元気よく話し掛けてきた。俺は目の前に差し出された紙の意味がよくわからなかった。
「…なにそれ?」
「遊園地のチケット!!なんかお母さんがパート先でもらったんだって!しかも6枚!!」
それはウチから電車で1時間程で着くここらでは一番大きな遊園地のフリーパス券だった。あそこは地味に高いから近くだけどなかなか行けないんだよな、
「それはよかったな、楽しんでこいよ」
俺がそういってさっきまで読んでた本に目を向けると、彼女は物凄い早さで本を取り上げた。
「なにいってんの?佐藤くんも行くのよ、遊園地」
「…はぁ?」
話が見えない俺を無視して彼女は急に顔を耳元に近付けてきた。
「くしゅ!ばかっ!近いって!!」
「ごめんごめん、でも少しボリューム下げるからさ」
彼女は俺のギリギリ許容範囲のところまで離れてから、ちょっと大きめのコショコショ話をはじめた。
「いや、6枚あるからいつもの5人で行きたいなって。それで、あわよくば紅さんと二人きりになりたいな…なんて思ってるのよ」
なるほど、お前が言いたいことはよくわかった。
要するに、この券を口実に二人きりになって話したいと。
「そ!それで、佐藤くんに協力してほしいってわけ!」
筑紫さんの作戦はこうだ。
俺がいつもの5人と誰かもう一人誘って6人で遊園地に行く。そして頃合いをみて二人一組の3ペアにわかれて遊ぶよう提案、あらかじめ仕込んだクジを使って委員長と紅さんの二人組にする。
まぁ、シンプルな計画だ。
「わかったよ、協力するよ」
「ありがとう!!さすが佐藤くん!!」
そう大声をあげると委員長は俺に飛び付いてきた。
「ぐぁぶしょ!!だから止めろ!!」
「あ、ごめん、なんか癖で。」
癖になんなよ!!その癖のせいで俺は毎回死にそうになるんだぞ!!
まぁ、計画は上手く行くだろう。というのもあと一人は一年の小倉を誘えば、彼女だって森野と二人きりで話とかしたいだろうしな。
青木にはまぁ申し訳ないが、今回は俺とペアを組んでもらうとするか。
「せっかく二人きりになるチャンスなんだ、がんばれよ」
「もちろん!できたら告白なんかも狙ってく!!」
「マジかよ!?」
「マジ!」
なんていうか、筑紫さんの強気は尊敬に値するよ。
紅さんと二人きりねぇ…。
俺は先日の猫の件を思い出しながら、またあんなことあるのかなぁ、なんて考えていた。




