にじゅーに
「…はぁ」
なんか今日は疲れた。
あれから俺たちはクロと遊びつつ本屋で買った『猫のきもち』を片手に試行錯誤していた。
「肉食だからベーコン食べるんじゃね?」
「いやいやそんな油もん食べさしちゃダメでしょ!」
「でもウチの冷蔵庫なんもないしな〜」
「…なんでベーコンはあるんだよ」
なんて言い争いをし、結局キャットフードを買うことに。じゃんけんで負けた俺が猛ダッシュで買いにいったよ。
それからまたクロとじゃれあってから俺は彼女の家を後にした。家を出たあとに大の大人が
『なんじゃこりゃ!!めちゃくちゃかわいいのー!!!』
なんて叫んでる声が聞こえたが、空耳だったことにしよう。
以上、軽く回想おしまい。
まぁ、とにかく酷く忙しい1日だったんだ。
そしてやっとのことで家に帰れたわけだ。
「…ただいまぁ」
俺はカバンを置いて玄関に座り込んだ。あぁ、靴ひも解くのすらめんどくせぇ。
ダダダダダ…
なにやら階段から走り音が聞こえる。…まぁ、正体はわかってるのだが。
「お帰り!!おにぃ!!」
階段の向こうに声の主が現れた。
そう、妹である。
彼女の名前は佐藤芳和。小学6年生にもなって兄にベタベタなダメ妹である。いや、ブラコンってほどじゃないぞ?本当に。
「おにぃ〜!!」
って言ってる傍から俺にダイブを仕掛けてきた。まぁいつものとこなんだが。
…え?アレルギー大丈夫なのかって?そこは大丈夫!何故なら彼女はまだガキンチョだから俺のアレルギー対象外なのだ。
「遅かったね〜!!!」
見てろよ読者、今中に浮かんでる妹を俺が華麗に受けとめてやるからな。
くちゅ
「…え?」
「ん?どうしたのおにぃ?」
「ど、どうして…くちゅ」
な、なんだ!?くしゃみが…でるだと?
いつもに比べたら格段に弱いけど、これは間違いなくくしゃみ… まさか!?
「へんなおにぃ。
…あ、そうだおにぃ!よしかね、新しいお洋服買ってもらったんだよ!この本に載ってるモデルさんが着てるのと同じなんだよ!かわいいでしょ!?」
そういって自慢げに服と雑誌を見せびらかす妹。
確かに雑誌の女性は素敵で、妹もすっかりなりきっている。
しかし俺はそれどころではなかった。
「妹が…立派な女性になってしまった……」
俺は妹の成長をしみじみ思いつつ、妹と仲良く遊んだ日々を懐かしく思い返して心の中で涙を流したのだった。




