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【完結】変身時間のディフェンスフォース 〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜  作者: 半袖高太郎
第1部 間章 〜personal information1〜

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情報と経歴3

「事故が起きたと思えば、自分もボロボロになりながら蘭華を助けて訓練場の壁を壊して私のところまでやってきた」


「そんなことが出来るのはヒーローだけのはず……! 飛彩は生まれ持って世界展開リアライズを持っていたという情報はその時に?」


「ええ。死に物狂いでやってきたせいかしら。飛彩はもっと傷だらけになってて……正直、心底恐怖した」


自分の身を顧みない飛彩をこのまま目覚めさせてはいけない。それがメイの使命になるのにそう時間はいらなかった。


「悪いけど左腕の能力についてはまだ詳しく分からない。当時も全体的な身体能力向上しか観測出来なかった。今回みたいな能力は初めて見たわ」


「そうか……」


明らかに落胆した様子の黒斗。常に飛彩に厳しい言葉を投げかけていた割には、何かあった時に飛彩の支えになろうという心情が端々から見て取れた。


結局は飛彩が復帰した後に少しでも助けになろうとしている黒斗の優しさに他ならない。


それを感じ取っていたメイは片目を閉じ、妖艶な笑みを浮かべながら問いを投げかけた。


「——これ、全部包み隠さず報告してたらどうなってた?」


「飛彩は間違いなくヒーロー本部の方に引き渡され、実験材料か……運が良ければヒーローになっていたろうな」


「まあ、十中八九モルモットになってたはずだから私はとにかく飛彩のことを隠したんだ」

 

「世界と飛彩を天秤にかけて、飛彩をとったと」


「だめ?」


わかりきった質問を投げかけたメイに、黒斗は即答した。


「きっと、俺もそうした。ありがとう、メイ」


今度は茶化すことなくメイはにこやかにどういたしまして、と微笑む。


封印されていた力が観測された時期は判明した。


しかし、それはつい最近まで押しとどめられていたことも証明している。それの答え合わせをするようにメイはインジェクターについて語り出した。


「インジェクターは濃縮された展開エネルギーで一時的に世界展開リアライズに対抗することが出来る。それは知ってるわよね?」


「ああ。それが飛彩の力を抑えていた……そのようなこともお前は語っていたな」


「つまりあれは飛彩の力が表に出てこないようにするために別の力を無理やり入れてたってことなの」


カタストロフ級のヴィランをも倒すことが出来る飛彩もまたカタストロフ級の災厄になりうることもある。


その重責を十年近くメイは一人で抱えてきたのだ。


「まー、インジェクターじゃ飛彩の力は抑えられなかったけど、飛彩が消滅することなく力を引き出せた……やっぱ私って天才かな?」


 飛彩の過去を紐解き、世界展開リアライズの謎を解こうと思った黒斗だが、詳しい情報を得られただけで飛彩の力について解決する術はなさそうだと嘆息する。


「欲しい情報だった?」


「興味深かったが……どうにもならんな。覚醒した飛彩と上手く付き合っていくしかない。とりあえずヒーローへの転属手続きでも進めておこう。あの戦力を遊ばせるわけにはいかない」


「そーねぇ」


「だが一つ注意しておく」


「えー、なんでよぉ。全部話したのにっ!」


靴音を響かせて黒斗はメイへと顔を近づける。恋人同士でしか踏み込めない距離にズカズカと入り込む黒斗に、メイは驚きつつ顔が赤く染まる。


「何かあったら俺を頼れ。上官命令だ」


「——は?」


そんな優しい言葉をかけられるとは思ってもいなかったメイは、椅子からずり落ちそうになる。シワが深く刻まれた白衣をさらにくしゃくしゃにさせた。


「一人で背負うな、いいな?」


「う、うん……」


いつもは年下を茶化す余裕ある大人の女性を気取るメイだが、その余裕は簡単に砕かれ唇をパクパクと動かすことしか出来ない。


「また何かわかったことがあれば報告しろ。お前の覚悟、俺も一緒に背負ってやる」


「か、カッコつけたこと言わないでって……」


どんどん声が小さくなるメイ。年端もいかぬ少女のように頬を染め、黒斗が去っていく背中を見つめる。


 その背中は、司令官という立場以外の理由で大きく映った。


「——はー、研究ばっかしてるとこういう時に弱いわね」


後輩たちの前では、恋愛経験豊富に振舞っているメイだが簡単にメッキは剥がされた。今度は飛彩や蘭華を連れてデートしてもいいかもしれない、そう思いながら椅子を回転させて机に向き直る。


「ふふっ……」


メイは嬉しかったのだ。飛彩を想う気持ちが黒斗と一緒だったこと。戦いが孤独じゃなかったことも含め。


黒斗の言う通り、もっと頼ってもよかったのなぁと独り言ちる。


「よし、もうひと頑張りしますか!」


この秘密の話し合いの数日後、飛彩は目を覚まして護利隊に残る宣言をするという二人の予想を大きく超える発言をすることになる。


 しかし、二人の大人は少年の決意を見守ろうとすぐに考えを改めるのであった。

小説でいう第1巻の部分が終わりました!


これからも書き続けますので、面白いと思っていただけましたら

是非ともブックマーク&評価お願いします!

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—————————————————————

『次章予告』


自分の世界展開を手に入れた飛彩は、大規模侵攻の後も護利隊として戦い続けていた。

だが、あの戦いで一部のヒーローに護利隊の存在を明かすことになってしまったことが、波紋を呼ぶ……


次回!

『『『Scar』』』


「守ってやるぜ! ヒーローの変身途中!」

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