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【完結】変身時間のディフェンスフォース 〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜  作者: 半袖高太郎
第1部 6章 〜ギャンブリングワールド〜

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微笑むは、勝利の女神

(ちっ、せっかく押せてるってのによぉ!)


「能力は支配できても、この私までは支配できなかったようだなぁ!」


そんな二人の間に割って入るようにホーリーフォーチュンの展開が混ざり合う。


発生したヴィジョンが飛彩とギャブランを大きく引き離す形で発生し、強制的にその未来へと向かった。


「何っ!?」


 大きく攻撃を空振りしたギャブランは土壇場で進化したホリィを睨みつける。


兜の奥が赤く光り、怒りを露わにしているのが丸分かりだった。


対する飛彩はホリィの真横まで移動させられている。


「飛彩くん、無茶しすぎです……いくら強くてもまだ訓練生なんでしょ? こういうのはヒーローに任せてください」


「——はっ、おめでたい奴だなお前は」


「な、何ですか? せっかく助けてあげたのに」


これが飛彩の素なのか、と理解したが、そこまでホリィは嫌悪感を抱かなかった。


未だに護利隊に影から守られていることに気づけないのはお嬢様育ちが原因なのだろうか。


「そんなことより、ここから私が代わります」


「立ってるだけでも精一杯だろ? ふざけるのも大概にしろよ」


「飛彩くんには……ずっと助けられっぱなしなんです! いや、忍者のヒーローさん!」


ここが恩を返す時だと意気込むホリィだが、飛彩はため息をつきながらホリィの頭を撫でた。


「言ったろ? 会う資格がねぇって」


 あの言葉は飛彩の心情そのものだったとホリィはすぐさま理解した。


忍者のように陰ながらヒーローを守ってきた自身が、ヒーローに憧れられるなど、あり得ないと言わんばかりの様子の飛彩にホリィは口を閉じた。


「だから待っててくれ」


「えっ?」


蘭華やカクリが血涙を流しながら見守っているとも知らぬ飛彩は、そのまま言葉を続ける。


「お前がすごいって言ってくれたように、俺もお前がすげえと思っちまった。腐りたくなるような環境に負けず、ヒーローになったお前を」


真剣な告白のような状況。なんと飛彩は戦いの最中にホリィも顔を赤らめた。


「お前も、熱太も……刑だって、めっちゃすげぇって認めたくないだけで理解してた」


 燻っていた気持ちをやっと届けた後に、飛彩は再びギャブランへと展開を広げる。


初めて使う能力だというのに長年の相棒と言ったような様子だった。


「俺は、ヒーローになれなくてもいい。ただ、胸張ってお前に会える、熱太に会える、皆の前に立てる、そんな俺になりたかった」


「いつまで無駄口を!」


 音を置き去りにするほどの飛び蹴りを軽々と左手で払い、ギャブランを瓦礫の山へと吹き飛ばす。


此処一番で冷静な飛彩は広い視野で戦況を把握していた。


ここまで冷静に戦えた経験はない、と飛彩は改めて世界展開の凄まじさを体感する。


そして想いの強さというものも。


「ただ、世界を救うのはガラじゃねぇ、人前に出るのも嫌いだ。俺が希望ってのも変だろ?」


 わざと目つきを悪くする飛彩にホリィは笑ってしまった。


ヒーローでもない守る対象だった飛彩に完全にペースを握られていることを恥ずかしがりながらも、ホリィは初めて人を心の底から頼れたような気がした。


「だから、そういうのはお前たちに任せる。俺はそんなお前たちを全力で守るからよ」


「ふざけるな小僧ぉぉぉぉぉぉ!」


再び勢いよく突撃するギャブランだが、ホリィの未来確定能力で飛彩に懐に潜り込まれてしまう。


その交差は、時間にしてはあまりにもわずかなものだったがギャブランに走馬灯を十分よぎらせるものだった。


そして飛彩には勝利を確信させる。


「勝利の女神がやっと微笑んでくれたみてぇだな」


「じゃあ、決めてください。ヒーローのヒーローさん」


「ああ。何もできなかった俺の拳は……」


 一気に凝縮された展開が、左手一本にだけ集まりギャブラン自身も吸い寄せられるように動いた。


炸裂するカウンターパンチが兜の中心へとめり込み、崩壊の音色を奏でた。


「今なら届く!」


鎧が砕け散りながら、空中へと飛び上がっていくギャブランへと一瞬で追いついた飛彩は悪のエネルギーを吸い取りながら、今まで支配下に置いてきたものも全て拳にのせる。


「ぶっ飛べ、クソ雑魚がぁぁぁぁ!」


すでに入っていた亀裂が暴走をはじめ、ギャブランを終焉へと走らせていく。


さらにひび割れた心臓の位置へ叩き込まれた追撃。


それと同時にギャブランの鎧に走ったヒビから崩れ去っていく。


そこから漏れ出すギャブランがギャブランたるための源も全て飛彩に吸われていった。


「くっ!?」


「そうか、それもそうだな。ただの人間が私を完全に支配下に置くことなどできまい」


 壊れた鎧から聞こえるか細い声。


ギャブランの言う通り、飛彩はギャブランから流れ込んでくる悪のエネルギーに悲鳴をあげ、吸収を中断してしまう。


これがメイの危惧していた限界か。


現に、飛彩は身体に劇毒を吸収しているようなものなのだから。

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