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【完結】変身時間のディフェンスフォース 〜ヒーローの変身途中が『隙だらけ』なので死ぬ気で護るしかないし、実は最強の俺が何故か裏方に!?〜  作者: 半袖高太郎
第1部 5章 〜挫折リヴェンジャー〜

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途切れた路

「ヒーローを目指すことは我々も許さないし、彼の本部も許すことはないだろう」


「ブラックリスト扱い!? ど、どうしてだよ?」


 夢へと続いていた道が、揚々と歩いていたはずの道が音を立てて崩れ去る。


意気込んでいたこともあり、心臓の鼓動が有り得ないほどに早まっていく。


「お前の抱いた夢は正しかった……だがそれに至るプロセスが間違っていた、それだけだ」


「ふざけんな! お前なんかに俺の約束を潰されてたまるかよ!」


座っている黒斗に掴みかかる飛彩。黒斗は目をそらさず、想いを受け止め続ける。


「俺はヒーローにならなきゃいけないんだ! そのためなら辛い訓練も汚れ仕事もなんだって引き受けてきた!」


「お前がやらなくとも誰かが代わる」


「だとしても! 俺は! 皆の応援に応えたい!」


 完全に頭に血が上ってしまい、拳を大きく振り上げる。


「背負う覚悟があるのか?」


 その言葉を飛彩は理解しようとしなかった。するだけの冷静さもなかったが、おかげで雑念が拳にこもる。


気がつくと天井を見上げていた。対する黒斗は椅子に座ったままである。


「私に勝てもしないのに、ヒーローを目指すか。片腹痛いぞ飛彩」


「くそっ!」


 幼少期から黒斗に勝ったことはない。飛彩はいつも訓練でこれでもかというほどに敗北していた。


そしてそれは黒斗が司令になった今もなお続いている。


「お前がまだヒーローを目指すというのなら私が力づくで止める。覚えておけ」


悔しさからか寝そべったままの飛彩を見下ろすように黒斗は立ち上がった。書類の雨を飛彩の上へと降らせる。


「お前は一応秘密を知る者。監視や不自由はあるかもしれんが、死ぬまで税金で金持ち生活を送れるぞ。学のないお前への退職金代わりと言ったところだな。もしくはこれら全てを投げ捨てて無意味な挑戦し続けるか、だ」


 もはや飛彩のプライドはズタズタに引き裂かれていた。自身に降り注いだ書類を跳ね飛ばし、飛彩は外へと駆け出した。


「飛彩、三日以内に答えを出せ」


耳に届いたその言葉を振り払うように飛彩は司令室を飛び出した。


振り出しどころか、地獄に落とされたも同然の飛彩は施設の廊下を駆けていく。


自分を監視カメラが追っているような感覚、何かにつけられている感覚、全てが鬱陶しかった。


ありもしない視線に怯える自身が何より情けなかった。




 飛び出した飛彩と入れ替わるように司令室に入ったメイは柔和な印象をかき消すようなキッとした目で睨む。


「司令官、彼は軽く百人分は働いてくれる人材ですよね? 貴方もそう評価している」


「だからこそ残念だよ。あいつの出す損害は百では賄いきれないのがね」


飛彩の手前凄んではいたが、やはり黒斗にとっても苦渋の選択だったのだ。


「だったら……」


「勝手に援助、か? そんなことをすればクビじゃすまないぞ」


「構わないわ。あの子は弟同然だもの。インジェクターがあれば飛彩は戦える」


「インジェクターのことと言い、肩入れしすぎじゃないか?」


 そこで黒斗は以前から感じていた疑問をとうとう言葉にする。


「——うむ、質問を変えよう。飛彩に何がある?」


 決意に満ちていたこともあってか、若干の動揺を黒斗はすぐに感じ取った。


「お前の庇いようは異常だ……そうだな、まるで危険なものを押さえ込もうとしているような」


震える手で机を思い切り叩いたメイは啖呵を切るように言葉を吐き出す。


「勝手に言ってればいいわ! 私は私のやりたいようにやる!」


肩で息をしながら飛び出していったメイを止めることもなく、黒斗は監視対象を増やした。


「……弟、か」

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