意外な訪問者
説教モードは終わりだと表情が告げ、メイは口元を緩ませて、飛彩の隣へと滑り込む。
「じゃあ、お姉さんが身体拭いてあげるね」
「は、はぁっ!?」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
過剰反応な蘭華とカクリがメイを無理やり引き剥がす。怪我人はすでに意識があやふやだ。
「ひ、飛彩の身体は、一番付き合いが長い私が拭くから! 飛彩も恥ずかしくないよね?」
「ダメです! 飛彩さんは恥ずかしがりなので、服の中にポータルをつないで、服を着たままでも身体を拭けるようにカクリが吹くんですっ!」
「能力の無駄遣いしないでよ! むしろなんかそれエロいから!」
「私もなんか暑くなってきちゃったなぁー」
そうこうしている間に女子同士の取っ組み合いが始まる。
もはや病室ということも忘れていた全員だったが、お陰で飛彩は日常に帰ってこられたと再確認出来た。
「うるせーよお前ら! だったら着替えでも取ってきてくれ!」
日常に戻ったとはいえ、流石にもうすこし眠りたいと感じ始めた飛彩の露骨な態度も、もはや通じず誰が取りに行くかで揉めに揉めている。
「カクリの能力で一瞬で取りに行きますねぇ」
「ダメダメ! 飛彩の服は私が片付けてるから! 私が行く!」
「新作の服着る? 色々作ってるインナーがあってねぇ」
「あーもう! 全員で一緒に行ってこいよ!」
きゃあきゃあと騒ぐ女子たちが部屋から出て行くと、やっと病室らしい静寂が訪れた。
これはこれで寂しいと感じたが、それは胸の奥底へすぐにしまった。
「それにしても、俺、ランクEぶっ倒したんだよな」
遅れてやってきた偉業の誇りに、少しだけ震える。
仲間がいなければどうしようもなかった事実もあり、すぐに喜びは消えたが、ヒーロー本部への転向も充分に考えられる功績だと感じていた。
そうして、脳内で行われる一人反省会が加速する。ベッドに寝そべりながらブツブツと呟く様子は非常に怪しく、入院の日数が伸ばされること間違いなしだった。
倒したとは言え、レスキューレッドの力がなければ確実に負けていた。
未だに埋まらぬヒーローと己の差、そして違いにどうすればもっと近づけるかを思案する。
程なくして、病室がノックされた。集中しきっていた飛彩はそれに全く気づかない。何度か繰り返された後、引き戸がゆっくりと開かれた。
「なんだよ忘れ物か? とっとと出てけよな!」
「えぇと……取り込み中でしたか?」
聞きなれない声に顔を上げる飛彩。それと同時に思い切り上半身を起こし驚いた。
「ホリィ!? さん!?」
思い切り怒鳴られたこともあってか、ホリィはかなり困惑していた。





