護利隊流、共闘護衛
燃え上がる隕石の如き一撃を叩き込んだのは倒れていた熱太ほかならない。
「あらぁ!?」
燃える拳はヴィランの腹部を燃やし、教室棟から大きく吹き飛ばした。
やはり飛彩達の攻撃とは桁が違い、ヴィランは地面を何度も転がる形で吹き飛んでいった。
「ふぅっ……虚を突かれたな」
「展開が消えてなかったろ。油断しすぎなんだよタコ」
見えていないことをいいことに、飛彩は暴言を吐き続ける。
それでも友の救援は嬉しかったはずだろうと蘭華は笑みを漏らした。何が起きているかも分からない熱太は、ヴィランめがけて一気に跳躍した。
「蘭華、俺たちも行くぞ」
「何言ってんのよ撤退するわよ。また規定忘れたの?」
生返事で現場に向かう飛彩を止めるべく蘭華も駆け出した。武装を抱えていても速度の落ちない二人はすぐにヒーローとヴィランの戦場へと戻った。
「止まれ! このバカ!」
「相手はランクEだぞ? 熱太だけじゃヤベェ」
「私たちが行ったって変わんない! ここに向かってる捕獲部隊に攻撃がいかないようにするのが関の山! 一緒に戦うなんて論外だからね!」
顔を覗き込む勢いでまくしたてられた飛彩は歩みを止めた。蘭華にヴィランに負けず劣らずの迫力があったこともそうだが、黒斗からも通信が入る。
「関の山の案が採用されたぞ。次のヒーローが来るまでお前たちは待機だ」
一刻も早く撤退したかった蘭華は大きくため息をつき、飛彩を睨む。余計なことをしなければ今頃シャワーでも浴びられていたはずだ、と。
「レスキューブルー、イエローも現着した。あと無断で出撃したホーリーフォーチュンもな。七、八分もすれば三人のヒーローが変身する。無駄な手出しはせず、防衛に徹しろ」
基本的に変身時間の差異がバレないように戦力の追加投入はないのだが、ランクEが相手だからか、危険な策にも躊躇いがない。
熱太も気にしている余裕もないほどの集中力で戦っていた。だが、それは熱太一人では五分も持たないと案に示している。
「逃げられるか」
乱雑に黒斗との通信を切り、戦っている熱太を毅然と見つめる。
直後、ハイドアウターの掌底により飛彩たちの近くへと吹き飛ばされてきた。
「ぐうっ!」
「チッ、熱太っ!」
ヒーローは嫌いだが、頼れる兄貴分のように見てきた熱太を、どうしても飛彩は特別に思ってしまう。
暑苦しくてうざったい男と敬遠しつつも、それでも接してくる先輩は熱太しか存在しなかった。
弱い弱いとヒーローを嘲りながらも、実力を認める数少ないヒーローでもあり、飛彩は目の色を変えて、小太刀を引き抜く。
「待って、飛彩」
「止めんな」
「あの戦いに割り込んだって流れ弾で死ぬだけ。そんな真似、絶対にさせないから」
視線は見えなくとも真剣な声音が、飛彩に枷をつけるように放たれた。蘭華もまた、どんな規定を破ろうとも飛彩を死なせるつもりはないのだ。
「俺が好きすぎるのもいい加減にしとけバーカ」
「は、ハァァ!? 何言ってんのぶっ飛ばすわよ 人が心配してるのに!」
「ムカつくヒーローだろうと、見殺しには出来ねぇ!」





