大型兵器はロマン!
「ジーニアスが変身すれば勝てる! それまで持ちこたえよう!」
「ああ、わかった!」
飛彩の活躍などそっちのけでジーニアスにすがる隊員たち。
それはまさしく希望の体現だった。六分という地獄の時間がヒーローを待ちわびる希望の時間に変わる。
だが、そこが地獄に変わりないことを忘れてはいけない。
「ブレスだ!」
すでにレギオンの口腔には炎が燻っている。飛彩は周りの温度が急上昇していくのを感じた。
「蘭華! シールドビットがあればすぐに展開しろ!」
返事よりも早く物資一帯を守るように防御装置を展開する。
半透明のシールドが、用意出来た部隊を覆っていった。飛彩も
小太刀で剥ぎ取った鱗を抱えて、後頭部へと駆け抜けていく。
「ガァァオォオォォオォォォ!」
紅蓮の炎が勢いよく地面へと吐き出された。
木々を薙ぎ倒す勢いの炎は直線上にあるものを消し炭に変えていった。
今のは範囲を狭める代わりに、威力を数倍にあげる熱線だったのだろう。
飛彩や蘭華も射線上にいないことから無事だったが。射線上にいた数人の隊員は言葉も亡骸も残さず散っていった。
「マジかこの野郎! カクリィ! アレはどーした?」
「そんなことよりそこから降りて! カクリも! コイツを無理やり下に降ろして!」
震える声でシールドを解除する蘭華。一人の戦場がここまで心細いとは、と戦慄する。
「何度も言いますけど、そんな精密には運べませーん!」
自分の命を省みていない飛彩はさらに舌打ちを重ねる。
自分の今の兵装では、カイザー級を倒す破壊力はない。一度降りたら、ここへ戻ることは出来ないと考えるべきだろう。
「俺の手元じゃなくていい! 俺にやったみてぇにコイツの近くへ送れ!」
予想を上回る飛彩の命知らずさに驚きを超えて呆れ果てる面々。
だが、飛彩の感じているチャンスももっともな話だ。巨大兵装で敵の脳を直接破壊する。
実際に出来ればレギオンは確実に生き絶える。ヒーローなしで勝利した最初の事例になるだろう。
「分かりました〜! 頭上に落ちても知りませんよ〜!」
武器庫で眠っていた飛彩の身の丈ほどのコンテナ。その下に円形の空間が広がり、それは異次元空間は旅していった。
「グオォォォ!」
再び頭を振り回す動きを見せたレギオン。それと同時にコンテナがレギオンから少し離れたところに転送されてきた事も確認する。
「ニアピンにもなってねーぞ!」
「限界超えたんですから褒めてくださいよぉ〜」
普通なら落ちていくのを眺めているしかない最悪の状況だが、飛彩は諦めない。
「はっ、そうだな! さすがは俺の後輩だ!」
頭を振り回すレギオンの勢いを利用し、空中に飛び出す。しかし、想像以上の速度で吹き飛んでいったこともあり、飛彩はコンテナに直撃した。
「ぐおっ!?」
生体認証で解除されるロック。コンテナが勢いよく開き、巨大な剣が飛び出してきた。
「相変わらず重いな!」
コンテナを足場にして蹴り込み、レギオンめがけて射出された剣を掴む。
「対カイザー級特殊装備! バスターチェーンソー!」
巨大な剣。さらに刃は回転する鋭利な牙のような物が取り付けられている。
これならばどんなに厚い鱗でも両断出来そうだ。ただ、残念なことに高度は落ちていた。脳を突き刺してトドメを刺す作戦は霧散していく。





