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魔法使いの本性

「・・・・・・待って、ください!!」


今、空気読まれたら、困る!!


帰ろうとする弁護士を呼び止める。

その顔には「忙しい」「時間が」と書いてあった。


・・・・・・・・財閥が、破綻した?

それが、私が見つかった、理由?

それがどうして、イコールなの?


「ーーーーーもう、いいですか?」

弁護士の冷たい声。


「いいえ、待って、ください!!」

混乱する頭をなんとか整理して、言葉を紡ぐ。


「どういう事ですか。」

考える。


財閥が破綻した。

どうして、それが。


「財閥令嬢」の私と関係があるのか。


まさか。


財閥が破綻するって事は。当然、会社が潰れるって事だ。


まさか。


ーーーーーーー聞きたくない。


まさか。


「借金、負債が、あるんですか?」


弁護士は、笑った。そのまま帰ろうとする。

その弁護士の手を掴む。

「どういう、事ですか。お話し、聞かせてください。」

情けない事に、声が震えていた。


だとしたら、私の、本当の家族は。

今何をしているんだろうか。

負債を抱え、借金取りに怯える顔も知らない父親と母親の姿が浮かぶ。


もしも、そうだとしたら。助けたい、と思った。

「どうか、お願いします」

掴んでいた手を離して、頭を下げる。土下座にも近い、いや、土下座だった。

今どうしているのだろうか。私は、知らないーーーー知らないから。


「・・・・・・・」

今、目の前にいる弁護士に縋るしかない。

頭を下げ続ける。


「へぇ」

弁護士は笑った。


「・・・・・」

顔は上げない。

ここで決まるのだから。


畳で揃えた手が震えた。


「・・・・・・びっくりした。普通、こんな事するか?いくら血の繋がった人間でも、何か恩があるわけじゃない、何かをしてもらったわけでもない。ましてや育ててもらったわけでもない、そんな人間の為に」


当たり前だ。その質問の答えに迷う必要はない。


はい、と答える。


「・・・・・疑問に思っていたんです。あなたがすぐに帰った事。」


普通、すぐは帰らない。

いなくなってから、十年以上たってこうして知らせに来てくれたのだ。

十何年も探して見つかった娘。探してくれていたって事は。

会いたいと、思ってくれているはず。


でも、私のお母さんは、彩子さんだから。

そんなにすぐには行けない。

弁護士が説明も少なく帰ってしまったのは、そういう事も考えた上で気を遣ってくれていたんだと、思っていた。


でも、違った。

予想の斜め上をいく、

財閥破綻という言葉に驚いたけどーーーー


財閥が破綻した。


借金?負債?


それがなんだというのだ。


財閥が破綻したからって。


そんなのは、関係ない。


十年以上も、私の事を探して、見つけてくれた。

財閥が破綻する程の状況なら、会社大変だっただろう。私の事を探すのに時間がかかったのも、頷ける。

見つけてくれた、諦めずにいてくれた。

その事が嬉しい。


昨日は、どうして弁護士はすぐに帰ってしまったのか。

どうして家族自身が会いにきてくれないのか、

いくら娘に会いたくても、自分の会社が大変なら会いにはこないだろう。

来ても私は追い返す。ちゃんと働いて欲しい。

私が財閥のご令嬢って事は、お父さんは財閥の当主なんだから。


「助けたい、んです。もしも、困ってるんだったら、私に何ができるかどうか分からないけど、助けたい。こうして、探して、見つけてくれたんだから」


例え、財閥が破綻したとしても。

私は、家族と会いたい。困っているのなら、助けたい。

育ててもらったわけでも、何かをしてくれた訳でもないけれど。

こうして、見つけてくれただけで嬉しい。


例え、財閥が破綻してこれから苦労する事になったとしても、頑張れる。


「・・・・・・嘘だろ、」


弁護士が呟いた。


そして。

くくく、と。上から笑い声がふってくる。


何が、おかしいんですか?

顔を上げる。


「いやっ、ちょっと待って。ーーーーふふふっ、あははははっ!!」


弁護士は涙まで浮かべて笑い始めた。

何がおかしいんですか。財閥が破綻したんでしょう?それだったら、今はそれどころじゃないのに!!


はー、ひー、面白い、と弁護士は涙まで拭った。

そして、真面目な顔で。


「蛙の子は蛙、親も親なら子も子。」


「えっ?」

いきなりなんですか?意味が分からない。


「この親にしてこの子のあり、あんな録でもない親から生まれたんだから、娘の方も録でもないと思っていたが・・・・実際に他の奴らは録でもなかったしな・・・・・・ははっ、まさかなぁ・・・」


なに、言っている意味が分からない。


この人は、何を言っているんだろうか。


「はぁ・・・・・」

弁護士は、ため息をつく。


「いい加減あんた気づけよ、俺はあんたに財閥の負債の催促に来たんだよ。」




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