表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/53

逃げた先にあったもの

「行こうか」と手を引かれて、成績順位表のあった場所から本館を抜け、分館を抜け、どこだか分からない場所を、彼についていく。

ここから離れられるなら、願ったり叶ったりだ。

さっきの、女子たちの殺気だった目。男子たちの嫉妬の目。穂花のびっくりした顔が次々と浮かんでくる。


ど、どうしよう。

もし、私がそのままあの場にいたとして、満足のいく説明できる気がしなくて、手を引かれたまま、ついていくことにした。

ついてくるなとも言われていないし、だったらついていくしかないじゃないかっ。


・・・・でも、もういいよ、ね?


何も言わずに、どんどん人気のない場所へ進んでいく背中。

もう手は離れている。立ち止まって、方向転換する。


「どこに行くの?」

「・・・・・」


ひいっ。声は出さなかった。学習したんだ。

嫌な予感がする。すっごく嫌な予感がする。動物的勘がチリチリと警鐘を鳴らしている。


コツ、近づいてくる足音がした。

その分、後ろに下がる。


「・・・・・小鳥遊さん、君、見てたよね?」


何を?

ーーーー女と抱き合っていた姿が、すぐに頭に浮かんだ。

顔に出ていたらしい。心得たように彼は微笑んだ。

しまった、今更、誤魔化すことは出来ない。それが分かった。


「・・・・やっぱり。ごめんね、小鳥遊さん、僕ーーー苦手みたいだ」

「・・・・」


にっこり、と微笑んだ。何だろう、この背筋を這い上がる悪寒。

もしかしなくても、脅されてる?


「俺には好きな人がいるんだ」

「へひっ!?」


いきなり何の話!?

その言葉は声にならず、奇声になった。

話が見えない・・・私が話を聞く体勢になったのが分かったのか、話し始めた。


「小鳥遊さん、政略結婚って知ってる?」


セイリャク、結婚。

知ってる、けど・・・でも現代に存在するの・・・?

そんな疑問が浮かんだが、彼は私の疑問を必要としていないようだった。


「僕には好きな人がいる、僕は彼女が好きなんだ・・・・」


纏っている雰囲気が、突然変わった。目が虚ろだ。狂気じみている。

なに、この人・・・怖い、この人怖い!

どうしよう?どうやって逃げよう、どう逃げたらいいの?

逃げる方法を、考える。ああ、でも足が早そうだ、逃げ切れるだろうか・・・


「ーーーーーーい?」


「は、はいっ!」


「ありがとう、小鳥遊さんなら、受けてくれると思ってたよ」


「・・・・ 今なんて・・・言った、んですか?」


聞いてなかった。彼は嬉しそうに答えた。


「僕の、偽の恋人になってくれるんだよね、ありがとう、小鳥遊さん」



え?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ