そして、また逃げる。
「祐翔!」
その声。
「っ!」
何処かで聞いたことがあるような声。
ーーーーー沢城さん。
その姿を見た瞬間、反射的に体が動いた。
入学式の後から避けてに避けて、避け続けた人物の登場だ。
「皇帝がお待ちです!」
「・・・・・蒼、お前・・・」
その人は、沢城さんはなにやら難しい会話をしている。
二人はーーー知り合い?
あの沢城さんとどうゆう関係?
「ふ、ぎゅっぅ」
突然、背後から伸びてきた何かに、拘束さる。背中にはふたつのシリコンの塊。
保健室の匂い。香水の匂い。恐ろしいほど強い拘束力。
「ま、きさん!?」
女装の保健医・真木さんだった。
「シッ!!声が大きい!移動するわよっ!逃げるが勝ち!」
「むぎゅぃ・・・」
力が強い、力が強い。
そのまま、窒息気味にズルズルと引きずられ、私はその場を後にした。
「遅いと思ってきてみれば、あなた本当に地雷ばっかり踏むわよねー。まぁ、予想通りといえば予想通りなんだけど!?」
保健室に戻れば、言葉のマシンガンが襲いかかってきた。
「ひっ!ごめんなさい、すみません!!」
保健室のベットにて土下座。こういう話は個室である場所でしかできないので、必然的にこうなる。
朱青藍の保健室ベットは、個室なのだ。
「・・・真木さん、あの人誰ですか?」
「・・・・その精神、マジで図太い、俺死んじゃいそう・・」
ぐでん、と鬘でさえ生気を失った真木さん。
半ゾンビ化しながら、答えてくれた。
「平和に学園生活を送りたいのなら、一番近付かない方がいい相手よ」
・・・真木さんが、地雷って言ってた意味理解した。
・・・・そうなのか。今すぐ帰りたい・・・もしくはタイムマシンに乗りたい・・。
もしくは、私の事を忘れていて欲しい。
ああ、でも、あんなの見られたら、誰だって顔覚える。私だったら覚える。
そんな風に後悔したって、時は巻き戻らない!
穂花に言った言葉が、ブーメランのように私に突き刺さった。
その後、保健室で回復した穂花に連れられて、講堂に向かう。
あのキスシーンを見て忘れていたけど、今日は朱青藍高校の学園階級が決まる日だった・・・忘れてた・・・これによりクラス替えもあるみたいだしーーーえっ、穂花!?そんな話聞いてない!
掲示、と書かれたA4サイズの紙に、そんな事が書いてある・・・早く言って!と思ったけど、言われて何も出来ない・・考え直そう。
「沢城様と同じクラスになれるかしら!?」
「まぁっ、如月様なら大丈夫でしょうけど、あなたは無理ではないかしら?」
わー、お嬢様怖い。朱青藍女子怖い。むしろ女子怖い。
どんっ、と余所見をしていたせいで誰かにぶつかってしまった。
「わぷっ、ごめんなさいすみませんっ、ああっ、申し訳ありません!」
「ひぃい!、こちらこそこちらこそっ、ひいぃ、呪います呪ってください!!ひぃい!」
お互いに混乱し、すみませんすみませんの大合唱。
その時、集まっていた人混みがどよめく。どうやら、順位発表がされたらしい。
集まっていた人たちは、我先に前へ行こうとする。
「うわぁっ!?」
その波に押されて、彼女とはぐれてしまう。
「きゃっ、のろいますのろいます・・・っ!」
そんな声が、人混みの中から聞こえた
「っ!!」
気がつくと、掲示板の前だった。しかも、見上げると・・・
雪城 穂花。
その時、本人の姿が見えた。
「見つけた!もう、葵!探したんだからっ!」
「穂花っ!見つけたよ!!」
「えっ、何?」
穂花も自分の名前を見つけた。
「ふぅううう」
わっ、安心しすぎて穂花の口から魂が!!
「穂花!しっかり!!」
「よかったぁ、安心した・・・」
お互いに手を握りあい、検討を讃える。よかった、よかった。
「よし、次は葵ね!」
「たかなし、あおい?」
突然、誰かに名前を呼ばれた。男の声。
「ひぃ!」
喉に色々つっかかった。
まさか、ああああの、人?
恐る恐る振り返る。そこには。
全然知らない人。別人、だった。
「なんであの人、葵の名前・・・」
穂花は呟いた。
嫌な、予感がする。
そして、それはすぐに的中した。




