シンデレラの噂 1
この一ヶ月間、この朱青藍高校の校内で「入学式で新入生代表挨拶をした外部生が、皇帝会により追放された」という噂が流れている。
嘘だけど。
その張本人の私は、ここにいる。
今だって、目の前を皇帝会メンバーが通り過ぎていった。
清々しい程に気付かない。
少し前までは、皇帝会メンバーが通るたびにビクビクしていた。
けれど、そのビクビクが逆に怪しまれている事に気付いてからは、堂々とするようにしている。
ちなみに噂を流しているのは、真木さんだ。
何でも外部生の代表を追放した、というのは、この朱青藍高校内のパワーゲームを大きく崩すらしい。
今までの事なかれ主義で、皇帝派になっている外部生の支持を集める意図があるらしい。今動かないと、次は我が身、と。
その噂が功を奏し、皇帝会への支持は離れつつあるらしい。
学園内に噂が広がっていく。
噂が広まれば広まるほど、皇帝と皇帝会は焦り、外部生に危害を加えはじめている。
・・・・壁に耳をつける。また皇帝会が何かをやっているようだ。
「まだ見つからないのか?」「そうらしい」
「どこにいるんだろうな」「案外近くにいたりして」
「まさか」「でもあり得るかもしれない、だってーーー」
どくん、どくん。
か、会話が核心に近づいている。
ふと、誰かの視線を感じた。
振り返る。
ちが、茅野さんっ!?
びびびびび、びっくりした。
「こ、こんな所でどうしたんですか?」
そんな、そーーって立ってるなんて。
「・・・・・何してるの?」
茅野さんは、何か残念なものを見る様な目で私を見ている。
あー、何だか、身に覚えが・・・・
そろそろ、後ろに下がる。
「余計な、事は?」
「しない、です・・・?」
茅野さんの細くて長い指が私の心臓を指した。
皇帝が、外部生に危害を加え始めている。
・・・・だから、少しでも被害を減らそうと・・・盗み聞き・・・を・・・・。
「・・・・・」
にっこり。
す、すみません、余計な事をしました………




