そして
え、えええっ?
お姉様の手が、ソファーを掴んだ。
目に入る光景が信じられない。
えええええー?
「ごめんなさい、手が滑りましたの」
ドコン!!
「手が」「滑った」?
対するエミリ様は、その直撃を華麗に避け、顔には微笑みを湛えたまま。
その細腕でどう考えても持ち上がりそうにないものを軽々と持ち上げ、「うふふ、手が滑りましたわ・・・うふふふ」と言いながら色々かっと飛ばしていた。
いろんな破壊音が連続する。
「手が」「滑った」?
まさに、手当たり次第。
テーブルにあった高そうな茶器たち、ソファーといった調度品。
全て例外なく、壊されていく。
その情け容赦のない壊しっぷり。
うわぁ・・・
自分が今どんな状態にあるのかを忘れて、お姉様達の戦いに見入ってしまった。
その瞬間、だった。
ぐいっと、腕を引かれる。
香水、の匂いがした。
「・・・・・っ、・・・・・!!」
白い首筋、衝撃。
「っ」
言葉は、無かった。
ただ、沢城さんが痛みに顔を歪めていた。
「え?」
私を・・・・?
「きゃあ!?沢城様!?」
「大丈夫ですのっ!?」
お姉様方の悲鳴が連続してあがった。
「・・・ええ、大丈夫です、」
沢城さんは、それを全部その一言で切り捨てると、私の腕を引いた。
そして、小さな声で。
「ーーーー立って」
小さな声とは裏腹に、腕をつかむ力は強い。
「・・・申し訳ありません、ここで失礼いたします」
私はそのまま、沢城さんに引きずられるようにして、部屋を出た。




