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VS
その瞬間、だ。
ガチャリ、
ドアが開く音。
あんなに逃げたいと思っていたのに、いざとなると、体が動かない。
怖い、怖い、また、ぶたれるんじゃ無いかって。
固く目を閉じて、うずくまる。
カツン、カツン。
足音が近づいてくる。来ないでっ、こっちに、来ないで・・・・っ。
そう願えば願うほど、近づいてくる足音。
それは、私の前で止まった。
「・・・・・っ」
ぎゅっ、と固く目を瞑る。
「ごきげんよう、篠原お姉様」
「ごきげんよう、西園寺エミリ様」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
それが、合図だった。




