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シンデレラと誤解

・・・・寒い。

ずぶ濡れの私を見て、「雨が降ってたんですか?」と聞かれた。

空を見上げる柏木さん。


・・・・申し訳なくて、噴水に落ちたことを言う。

雨なんか降っていません。

もちろん落とされた事と、双子と命の恩人の事は言わなかった。


柏木さんなら、笑ってくれるかなー、と思ったけど、眉をひそめられただけだった。

今は、その反応と空気が一番辛いです。


「濡れ鼠みたいですね」

私は、ネズミですか・・・・。

確かに今の私は濡れ鼠みたいだ。

黙って柏木さんの後をついていく。

歩くたびに、水が落ちる。ううう、・・・・ごめんなさい。

校舎の中は外観に、違う事ない構造をしていた。

どれもこれもが、凄すぎる・・・・

足元は赤い絨毯が敷かれていて、頭上ではシャンデリアが煌めいていた。


・・・・・すごい。


「口を閉めてくださいね?」


いけない。


「キョロキョロしないで下さい。」


視線を柏木さんの後頭部に固定。


「・・・・・・殺されたいんですか?」


後頭部を見られるのが嫌らしい。

それは、後頭部に危機を覚えているからなのだろうか?

肌色の部分を探す、うん、無いですよ?


校舎に入った瞬間に、どこから持ってきたのか、白いバスタオルを頭からかけられた。


「・・・・・・・・」


ぎゅしゃぎゅしゃぎゅしゃーーー

バスタオルと濡れ髪がサンドされる。頭をかき回されて、ぐるぐるする。

がっしんがっしん、痛い痛い痛い、ぐるぐる回って気持ち悪い。

その間にも前に歩かされるので、首が伸びそうだ。


「さぁ、ここですよ。」


柏木さんが足を止めた。まだぐるぐるする。

チラリと見えた、重厚感あふれる扉。

何だか、魔王とかいそうだ。


「失礼します」


失礼だとも何も思ってないだろ、という程棒読みだった。

その証明のように、返事を聞く前にドアを開けている。


「ちょっ、おまっ、待てよっ、まだっ、うおおおおっ!!」


ガシャガタガタガタガタガア!!


すごい音がした。

頭にかけられたバスタオルの隙間から、物に押しつぶされた誰かが見えた。


「きゅーーーーっ」

目を回して、奇声をあげている。


「キモイなお前。」柏木さんは冷静だ。


「だ、大丈夫ですか!?」

思わず、駆け寄る。

「きゅーーー」だなんて正気じゃ無い奇声をあげるほどダメージを受けているのだ。救急車でも読んだほうがいいのでは無いか。

倒れていたのは、柏木さんと同じくらいの歳の男の人だった。


「お、女の声っ!!?」


ガシャンギャシャギャシャッ


押しつぶされた物を跳ねあげて、起きた。

そのまま後ろに後ずさる。

だ、大丈夫そう。

・・・見た事無いぐらいすごい勢いだ。

あまりの凄さに、思わず口が空いた。


相手と目があった。


相手も、ぽかんと口を開けた。


私たちは、鏡を挟んだみたいに同じ顔をしていた。


「口は閉めてください 」


柏木さんの鶴の一声で、私たちは口を閉める。

すごい勢いの後ずさり・・・だったなぁ。いきなり触られるのはそんなに嫌だっただろうか?


じぃ、と思わず目の前の人を見てしまう。


・・・顔が赤い。


あっ、どこか打ってしまったのでは?

たんこぶとか、出来てませんか?


手を伸ばし、後頭部に触れようとすると、見事に後ろに後ずさりされた。

勢い余って後ろの壁にぶつかった。え?


こ、これだけ元気なら・・・・大丈夫・・・・です?


何だが大丈夫には、見えないんだけど・・・・・


何となく、伸ばした手を下げた。

そのまま、微妙な空気が流れる。その間にも、その人の顔はー赤みを増していく。

助けを求めて、柏木さんを見ると、これまで見たことが無い微妙な顔でその人を見ていた。


「・・・・・理事長。」


柏木さんの口から信じられ無い言葉が出た。理事長?


「あ・・・・ああ、たか、みち?」


理事長と呼ばれたその人は、柏木さんの下の名前を呼んだ。


「ーーーー今日はどうしたんだ?」


キリッ。表情を引き締めて言った。でもその体勢は・・・・・ごめんなさい。

あんまりです。綺麗な顔をしている事が、残念です。

対する、柏木さん。


「まさか忘れたとは言いませんよね?」

微笑んだ。・・その笑顔は、怖い。


「って、事はまさか。この子が三原、花梨かっ!?」


みはら、かりん?


私を指して、この人はそう言った。

聞きなれない名前。

表情と口調からするに、相当嫌われている気がする。

その、みはらかりんさん。


「私は、小鳥遊葵です・・・・」


みはらかりんって、子じゃありません。


「俺は、理事長だ。」


その瞬間。私たちは確かに通じ合った。ああ、心の友よ。

がしっ、手を握り合った。

そして、はっ、と我に返った理事長さんに手を離された。

顔の赤みが増した気がする。恥ずかしいのかな?

柏木さんは、半笑いだった。

そんな薄目で見ないで下さい。悲しいです。


「お、おい、隆道!!聞いてないぞ!」


理事長は、柏木さんを連れて部屋の隅に移動した。

そして、そのままこそこそと何か喋っていた。

手持ち無沙汰担って、部屋の中を見渡す。

・・・・・理事長は掃除が苦手らしい。

紙の束が乱立して・・・・書類のビル群が出来上がっている。

部屋の壁一面にある書架にも、紙の束が無造作に押し込まれていたり、何かが飛び出ていたり。

全然ジャンルの違うタイトルの本が隣同士で並べられている。


ふと、違和感を感じて、一冊本を引き出してみた。


男の人同士が抱き合っている、薄い本。

怪しい雰囲気だ。


これ、もしかしてーーーー。

湊都に聞いた事がある。

そういうの好きな人がいるって。

すこし本棚を探してみると、幾つかそんな本が見つかった。

・・・・すこし、考えて。

散らばっているその本たちを、一箇所にまとめて大きさや厚さを考慮して置いた。

湊都が言っていた。

こう言うのを見たら、並べて置いておくのがマナーだって。


「あおい、さん?」

顔の赤い理事長が立っていた。


「は、はいっ」

びっくりした。

やましい事はしていない、つもりなんだけど、心臓がひっくり返るかと思った。


「!」


という事は。

今までの行動を、考えて。

理事長は、柏木さんの事が好きなのだろうか?


その事を頭に置いてみると、今までの行動に説明がつく。

赤くなっていたのも、柏木さんがいたからなのだろう。


何だか、私なんかが出しゃばってすみません・・・・・。

駆け寄ったり、色々とぶち壊してしまっている・・・・ごめんなさい。



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