*気迫負け
夕食はホテルのレストランに向かうため、部屋から出てきた彼に眉をひそめた。
「……他に服、無いんですか?」
いつもと変わりない彼の服装にブーたれた。折角の旅行なのに……
「何が不満だ」
その口調には当惑したような感情が読み取れる。
彼のそんな表情に少しうれしさを感じたが、やはり彼女にとっては大切な時間でもあった。
服装自体に不満はありませんよ……いつ見ても格好いいし似合ってるけどね。と思いつつエレベータに滑り込む。
「そだ! 思い切って服も買いましょ!」
「! おい?」
彼の手を取り夜の街に駆け出した。
一軒の店に入り、嬉しそうに物色を始める。そうして笑顔でいくつかの服をみつくろい、あっけにとられている彼に半ば強引に手渡した。
「……」
渡される服を仕方なく着ていく。もう何着目になるだろうか、いい加減に疲れてきた。
「ソフィア……あのな」
「次これ! これ着て」
有無を言わさず手渡される服の数々。溜息を吐きつつ、それを受け取った。
なんだかんだで服を買わされ、それを着てホテルに戻る。
「うん、格好いい!」
黒いパンツに長めの焦げ茶色の革ジャンパーは、新鮮な感じがして顔がほころぶ。
本当は腰よりもやや上の短めの革ジャンにしたかったのだが、腰の後ろに装着しているバックサイドホルスターを隠すためにソフィアは仕方なく妥協した。





