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27話 女神様と天使と勉強会

 沙紀と二人きりの勉強会をつつがなく終えた翌日の朝。


「来たわね、晴哉」


 教室に入ると、すぐに玲奈に声を掛けられる。

 言葉から察するに、どうやら俺が登校してくるのを待っていたようだ。

 何か用事でもあるのだろうか。


「どうした、玲奈?」

「今日の放課後、空いてるわよね?」

「あ、空いてるけど……」


 というか、答える前から断言されてたんですけど。


 俺の答えを聞いて、玲奈は満足そうに頷く。


「なら、今日は(・・・)私としましょうか。勉強会」

「えっ」


 予想外の提案再び。

 まさか玲奈からも誘われるとは。

 けど、やはり断る理由なんて無い。


「何よ。もしかして……嫌なの?」


 俺の驚いたリアクションを見て、玲奈はそう解釈したようだ。

 玲奈はどこか不安そうに尋ねる。


「嫌なんかじゃない。むしろ誘ってくれてめちゃくちゃ嬉しいよ」

「そ、そう。なら良いわ」


 玲奈はどこか嬉しそうに口元を僅かに綻ばせた。


「でも、突然どうしたんだ?」

「それは……」


 何事もハッキリ言う玲奈にしては珍しく口籠る。


「別にただの気まぐれよ。偶然、晴哉と勉強会がしたい気分になったの」

「それまた凄い偶然だな。でも、そのおかげで玲奈と勉強会ができるんだから、その偶然には感謝しないとな」

「……ばか」


 俺に聞こえないくらい小さな声でボソッと溢した玲奈は、まるで赤くなった顔を見られたくないかのようにおもむろに窓の方を向くのだった。

 

 ———放課後。


 俺は玲奈と一緒に図書館へ向かう。

 昨日は空いてなかったが、今日は果たして……


「おっ、ラッキー」

 

 見た感じ空いてなさそうだったので諦め掛けていたが、一番奥の席が空いていた。

 空いているのはその席が最後なので、急いで確保する。


「席を確保できてホッとしたわ」

「そうだな。今日()ツイてる」

「……待って」


 腰を下ろそうとしたら、玲奈に待ったを掛けられる。


「晴哉。昨日、雛森さんとの勉強会は図書館ではしなかったの?」


 なんで玲奈は勉強会の事を知って……そう言えば沙紀に誘われた時、玲奈は自分の席で本を読んでいたな。

 おそらく、その時に俺達の話し声が聞こえたのだろう。

 読書中は周りなんか気にしない玲奈にしては珍しい。


「昨日は席が空いてなかったからな」

「なら一体どこで?」


 なんでそんな事を聞くんだ……?


「えっと……」


 場所が場所だけに正直に言っていいのだろうかと一瞬迷ってしまった俺を見て、どうやら玲奈は察したらしい。


「そう……分かったわ」

 

 玲奈はなぜか荷物をまとめる。


「晴哉。場所を変更しましょう」

「き、急にどうした?」

「実は言い忘れていたのだけれど、私って人の多い所だと勉強に集中できないの」


 ……そうだっけ? 

 少なくともストーリーではそんな事は無かったような……

 だが、もう玲奈の中では場所変更は確定事項のようなので、俺は了承して玲奈と共に図書館を後にした。


「それで玲奈、どこに場所を変更するんだ?」

「……私の家よ」


 ……マジか。

 でも、なんとなくそんな気もしてたのであまり驚かなかった。


 学校を出てから20分ほど歩き、やがて玲奈の家に着く。

 来るのはこれで二度目だけどまだ緊張する。


「ただいま」

「おねぇちゃんおかえりー!」


 中に入ると、満面の笑みを浮かべた結奈ちゃんが出迎えてくれた。


「あっ、はるやおにぃちゃん!」

 

 俺に気づいた結奈ちゃんが、可愛い足音を響かせながら近づいて来る。


「きょうはどうしたの? もしかして、ゆいなにあいにきてくれたの?」

「そうだよ」

「えへへー」


 嬉しそうに頬を綻ばせる結奈ちゃん。

 …… 可愛いすぎない?


「結奈。晴哉は今日、私と勉強する為に来たのよ」

「そうなの?」

「そうよ。それじゃあ、晴哉。私の部屋に行きましょうか」


 どうやら勉強会は玲奈の部屋でするらしい。

 俺を部屋に入れるのは二度目だからか、玲奈はあまり抵抗が無いように見える。

 

「ゆいなもいっしょにべんきょうする!」


 結奈ちゃんが俺達について来る。


「結奈。今日はリビングで良い子にしててね。ほら、お母さんも待ってるわ」


 最初、どうにか説得を試みようとしていた玲奈だったが……


「やだ!」

「結奈。あまり我儘言ったらダメよ」

「むぅ。おねぇちゃん、きらい」

「えっ……」


 そんなどこかデジャブを感じるやりとりの末、結局は玲奈が折れて結奈ちゃんの勉強会参加が決まる。


「ゆいな、はるやおにぃちゃんといっしょにすわりたい」


 そう言って、結奈ちゃんは俺の膝の上に座る。

 

「結奈。晴哉の勉強の邪魔しちゃダメよ」

「じゃましてないもん」

「まったくもう…… 晴哉。結奈が我儘言ってごめんなさい」

「気にしないで大丈夫だ」

「…… 晴哉。なんだか嬉しそうね?」


 玲奈がジト目で俺を見る。

 結奈ちゃんに懐かれている俺に嫉妬しているのだろう。


 ………… あれ、そう言えば結奈ちゃんのことで、何か重大な事を忘れているような……

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