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終戦

「さて────そろそろ、この茶番にも飽きたし、終わりにしましょうか」


 誰に言うでもなくそう呟けば、二人はビクッと肩を震わせる。

終わりの時が近付いているのを、彼らも理解しているのだろう。

私は一旦剣を下ろすと、手元に魔法陣を呼び寄せる。


「安心してくださいませ。最後の慈悲として、苦痛なく死なせてあげますから」


「「っ……!!」」


 『そういう話じゃない!』とでも言うように、二人はこちらを睨みつけてきた。

焦りを滲ませる彼らの前で、私は魔法陣の構築に専念する。

────と、ここで予想外の事態が発生した。


「────お逃げ下さい、お兄様!この芋女は、何とか足止めしますわ!ですから、早くっ……!」


「なっ……!?リナ……!!」


 突然ソファから立ち上がったリナさんは、こちらに掴みかかってきた。

無謀だと分かり切っていながら、彼女は最愛の人を逃がすために立ち向かってくる。

魔法陣の構築を阻止しようとする彼女の背後で、カーティス様は出口へ向かった。


 リナさんは、本当にカーティス様のことを愛していたのね。自分の命を投げ出しても、後悔しないくらいに……。

正直、ここまでとは思っていなかったから、感動したわ。でも────。


「─────愛だけじゃ、想い人は救えませんよ」


 私は思い切り剣を振り上げると、情け容赦なくリナさんの首を切り落とした。

そして、自由になった左手で魔法陣を完成させ、カーティス様に向けて放つ。

魔法により顕現した風の刃は、逃げ惑うカーティス様の首を吹き飛ばした。

ゴトッ……ゴトッと、順番に二人の首が床に落ちる。


 ────リナさんの命を張った足止めも、カーティス様の逃亡も全て無駄に終わった。


 血で染まったカーペットをぼんやり眺めながら、私は複雑な心境に陥る。


「これは私が望んだ結果なのに……どうも気持ちが晴れないわね」


 決して誰の耳にも入ることがない独白は、静寂の中に虚しく消えた。


 立て続けに六人も殺した私は精神的に疲弊しながら、リナさんとカーティス様の首を回収する。

民達を説得するためには、『王族を殺した』という証明が必要不可欠だった。


 ────それから、私は国全体にかけた魔法を解き、眠りから覚めた国民たちに王族の首を見せた。

王の死を悟った国民たちは一切抵抗することなく、降伏を受け入れ、エスポワール王国の庇護下に入ることに……。

こうして、カラミタ王国とエスポワール王国の激しい戦争は、幕を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっと静かになりましたね ありがとう!
[気になる点] あれ? 第一王子は殺さないんですか? ここまで一回も出てきていませんけど、いましたよね第一王子……?
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