やるべきこと
「────カラミタ王国との戦争に参加し、民間人への被害を最小限に抑えること……」
戦の引き金が引かれた以上、戦争自体を止めることはもう出来ない。
なら、戦争の被害を最小限に抑えるまで!
絶対的な正義や確かな正解がないのなら、己の正しきに従って行動するのみよ!
迷子のように不安定だった精神は、落ち着きを取り戻した。
自分なりの最適解を導き出し、私は晴れやかな気持ちで顔を上げる。
「ふふっ。自分のやるべきことが見つかったようだね?ニーナ王女」
「はい!オリヴァー様のおかげです!相談に乗って頂き、ありがとうございました!是非、今度お礼させてください!」
感謝の意を表すように、私は満面の笑みでお礼を言った。
釣られるように笑顔になるオリヴァー様は、無邪気に微笑む。
「ふふふっ。お礼なんていい……と言いたいところだけど、一つだけいいかな?カラミタ王国との戦争が終わったら、私の話を聞いてほしいんだ」
「お話を聞くだけですか……?」
「うん。話を聞くだけ。いい?」
「え、ええ、それは構いませんが……本当にそれだけでいいんですか?」
そう問いかければ、オリヴァー様は間髪を容れずに『もちろん』と頷いた。
相談に乗ってくれたお礼がただ話を聞くだけなんて、味気ないけど……まあ、本人の希望なら、そうしましょう。
「分かりました。では、戦争後またお会いしましょう」
「ああ。それまで暫しのお別れだ……ちょっと寂しいけどね」
オリヴァー様は寂しげに微笑むと、チュッと頬に軽いキスを落とした。
柔らかな唇の感触が頬に残り、私はあっという間に赤面する。
な、なっ……!?今キスを……!?
「私のことを忘れないでね?それから、このキスの感触も……分かったね?ニーナ」
耳に残る甘い囁きは私の思考を溶かし、混乱させる。
────オリヴァー・ランドルフは見掛けによらず、意地悪な方だ。




