彼女と私の違い
結局、何が正解だったのだろうか?何が最善だったのだろうか?何がっ……!正義と呼ばれるものだったのだろうか……?
そして────私が今、歩んでいる道は……何に繋がっているのだろう?
漠然とした疑問を抱く私に、オリヴァー様は苦笑を漏らす。
「君は本当に損な生き方をしているね。そんなこと、わざわざ考える必要なんてないのに……まあ、そこが君らしいんだけど」
彼は呆れたように肩を竦めると、私の頬にそっと手を添えた。
彼の体温がじわりと肌に溶けていく────この感覚を私はよく知っていた。
「あのね、ニーナ王女。君も薄々勘づいているだろうけど、その質問にはきっと────正解なんてないよ」
「……」
「だって、正義なんて人によって違うんだから。正解なんてありやしない。だから、皆それぞれ考えながら道を選択して、迷いながら歩いていく」
「そんなのっ……!!分かっています……!でも、ケイト王妃陛下と私では決定的な違いがありました……!ケイト王妃陛下も迷いながら進んでいたのに……!」
涙目になりながら、私はフルフルと首を横に振る。
ちょっと意地になる私を前に、オリヴァー様は困ったように笑った。
必死に答えを探す私に『落ち着いて』とでも言うように、親指の腹で頬を撫でる。
その手つきがあまりにも優しくて……少し擽ったかった。
「ケイト王妃陛下と君の違い、か……。それは多分────信念があるかどうかじゃないかな?」
「信、念……?」
「そう、信念。ケイト王妃陛下には、『苦しむ国民を救いたい』という確固たる信念があった。でも、君にはそれがない……多分、それが君とケイト王妃陛下の差なんだと思う」
自分なりの見解を述べるオリヴァー様は、真っ直ぐにこちらを見据える。
説得力のある言い分に、私はすんなりと……本当にすんなりと納得してしまった。
そっか……そうだったのね……私には、信念がなかったんだわ。
だから、ケイト王妃陛下の強い姿に憧れを抱いた……彼女の行いには、強い信念と揺るぎない覚悟があったから。
じゃあ、私はこれからどうすればいい?私の信念って、何?
自問自答を繰り返す私は、必死に思考を巡らせる。
だが、しかし……明確な答えは返って来なかった。
でも────不思議とやるべきことは理解出来て……使命感にも似た感情に駆られる。
今、私に出来ることは……。
「────カラミタ王国との戦争に参加し、民間人への被害を最小限に抑えること……」




