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勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~  作者: 龍央


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第76話 勇者、急いで帰る



「嫌な予感がするからな。帰るぞ、フラン」

「……連れて帰っちゃいけませんか?」

「捨てられたペットじゃない、駄目だ」

「えぇぇぇぇ……」

「ほら行くぞ。じゃあな、ドラゴン」


 ドラゴンを地面に降ろさせ、フランの襟首を掴んでその場を離れる。

 フランの方からは、この場にしがみ付こうと抵抗を感じるが、今はそれに付き合ってる場合じゃない。

 無理やり引きずって馬を繋げていた場所に戻る。


「ほら、馬に乗れ。さっさと帰るぞ?」

「横暴ですよ、カーライルさん!」

「横暴でもなんでも、嫌な予感がするんだ」

「……きっとそれは……恋? やだぁ、カーライルさんったら……いくら私が可愛いからってぇ……」

「馬鹿な事を言ってないで、さっさと帰るん……だ!」

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ボケているフランを乗せた馬を放し、王城に向かって走らせる。

 悲鳴を上げるフランを追いかけるように、俺も走り始めた。

 ……ボケをスルーされたフランは少し涙目だったが、今はそれに構う暇はない。

 フランのうるさい叫び声……悲鳴をたなびかせながら王城へとひた走った。



「何か様子がおかしいな……」


 城下町の入り口まで来たのは良いが、何やらおかしい雰囲気だ……きな臭いような……。

 いつもなら衛兵がいたはずなのにいない……町を囲んでいる壁の外まで、賑わいが聞こえるはずなのにそれもない。

 日が暮れるには早い時間だ……寝静まっているわけでもないだろう。


「嫌な予感……当たりか……?」

「……当たりとかわけのわからない事を言う前に、何か言う事があるんじゃないですかー?」

「いや、特にないな」

「そんなわけないでしょ!」


 壁の外から中の様子を窺っていると、今まで突き刺さっていたフランが自力で抜け出し、叫ぶ。

 元気だな……いつもより勢いよく突き刺さったはずなのに。


「まったく、盾が無かったら危なかったですよ?」

「盾? お前、そんな物持ってなかっただろ?」

「これですよ、これ。……んっしょ!」


 今までフランが盾を持っているところなんて見た事が無い。

 何を言っているのかとそちらを見ると、フランが突き刺さった事で穴の開いた壁に手を突っ込み、その中から何かを引っ張り出した。


「ふや~なのじゃ~……」

「な、お前!」

「いやー可愛かったからつい」


 フランに引っ張り出されたのは、金属製の盾でもなんでもなく、さっきまで話していたドラゴンだった。

 フランが突き刺さる時、壁に激突する前に盾にされたのだろう、いくらドラゴンとは言え、いきなりそんな事をされたら、目を回すらしい。

 頭をフラフラさせてるドラゴンを撫でながら、照れた様子で言うフラン。


「いや、お前……ついで済む事じゃないだろ」


 ドラゴンの許可も無しに、こんなところまで無理やり連れて来て……拉致だぞ? 捕まるぞ?

 というかそもそも、フランに捕まえられてここまで来たって……ドラゴンなんだから、抵抗したら逃げ出せただろうに……。

 しかも、可愛いからと連れて来たのに、盾にして良いのか?


「はっ! ここはどこじゃ……?」


 フランを問い詰めようとしているところで、ドラゴンが正気に戻ったようだ。

 ……フランより復活が早いな……さすがドラゴンだ。


「どうやら、フランが連れて来てしまったらしいな」

「そうなのかや?」

「てへ」


 舌を出しても、許される事じゃないだろう。

 下手したらドラゴンの怒りで、その舌を引っこ抜かれるぞ。


「ふむ……まぁ、良いのじゃ。壁に激突したのは驚いたが、暇をしていたしの。たまには城を見物するのもな」

「良いのか……花の世話とかしなくて大丈夫か?」

「大丈夫じゃ。あそこに咲いている花は全部、世話をしなくても勝手に育つのじゃ」


 管理している、と言っていたドラゴンがそれで良いのなら、良いんだがな……。

 まぁそんな事よりも、様子がおかしい王城だな。

 俺はフランと、何故かついて来る事になったドラゴンを連れて、城下町へと入った。




別の作品も、連載投稿しておりますので、ページ下部のリンクよりお願い致します。


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