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勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~  作者: 龍央


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第53話 勇者、再会する



「大丈夫か、二人共?」

「えぇ……何とか……はっ! ここは……カーライル!?」

「カーライルがいるなのよ。どうしているなのよ?」

「まぁ、何と言うか……ここが今の俺の職場だからな」


 管理職として採用されたから、ここにいるわけだが……今更ながら魔王であるアルベーリの執務室が職場と言っていいのかどうか……まぁ、アルベーリだから良いか。


「カーライル……会いたかった! 突然魔王国に行くとだけ言って、私を置いていくんだもの!」

「いや、お前、親父殿の所で修行し直すとか言ってたじゃないか……連れて行くわけにもいかないだろ?」

「それはそれ、これはこれ!」

「あぁ、そう……」


 リィムが俺に抱き着きながら言うが……女は時折理不尽だ。

 しかし……フランの抱き心地と比べると……ちょっと物足りないか……。


「やっぱり女豹だったんですね! カーライルさんから離れなさい! さもないと……」

「うるさいなフラン……」

「さもないと、どうするのフランツィカー?」

「フランツィスカです! フランって呼んで下さいと昨日言ったじゃないですか! ともかく、離れないと……」

「離れないと?」

「アルベーリ様が何か怖い事をしてくれます!」

「他人任せかよ!」

「面倒だから嫌だ」


 俺に抱き着いてるリィムとフランが睨み合ってる。

 フランの他人任せに思わず突っ込んでしまった……しかもアルベーリにも断られてるし……こいつは本当に何がしたいんだ……?


「頭のおかしいフランは置いておいて、マイアまでここに来るとは、どういう事だ?」


 さりげなくリィムを引き離しながら、マイアの方を見る。

 ……不満気な顔をしてるなリィム……全然さりげなくできなかったか……。


「私はカーライルに謝るために来たなのよ。ごめんなさいなのよ、カーライル」

「うむ、許す」

「お前が言うな!」


 俺に謝るマイアに、何故かアルベーリが答える。

 お前に謝ったわけじゃないだろうが。


「はぁ……まぁ、許すよ。マイアが反省したならな」

「良いの?」

「当然、反省はしてるなのよ」

「どうせマイアの事だ。金の事をちらつかされて、ルインの口車に乗ったんだろ?」

「……私の性格を見抜かれてるなのよ」

「そりゃ、パーティのリーダーをしていたからな」


 マイアは金にはうるさく、ケチな面もあるが、基本的に善人だ、それはリーダーをしていた俺がよく知ってる。

 ただ、悪事を進んでやらない代わりに、金の事になると見境が無くなるという困った奴でもある。

 口だけは上手いルインが、金が儲かるとかなんとか言って、マイアを乗せたんだろうな。


「ありがとうなのよ、カーライル」

「ふむ……話を聞くに、お前達はカーライルの元パーティメンバー、という事で良いのだな?」

「えぇ、そういう貴方は? カーライルの魔族の友人?」

「というか何で裸なのよ? 変態なのよ?」

「変態ではないし裸でもない! しっかり履いているだろうが!」

「ブーメランパンツだけしか履いてなかったら、ほとんど裸と同じだろうが。そりゃ初めて見たら変態だと思うわ。俺もそうだったしな」

「……そうなの?」

「ああ」

「……うぅぅ」


 アルベーリが涙目になった。

 魔王がこれしきの事で泣いていて良いのか?

 落ち込みながら、いそいそと服を着るアルベーリ……最初っから着ていて欲しいんだがなぁ。


「コホン……私はアルベーリ・ビレコフェイン。このラデルニ魔王国を統べる者なり。そして、カーライルの友である……あ、そっちの方が重要だからな」

「魔王って事より、俺の友って方が重要なのかよ!」

「当然であろう? 勇者の友だぞ、早々なれるものではないぞ?」

「いや、魔王の方が早々なれるもんじゃないだろう……」


 裏表の無さそうなアルベーリに、友と言ってもらえるのは嬉しいが……魔王より重要とか、何か重くて嫌だ。

 ほら、横でフランが楽しそうな顔してウホウホ言ってるし……。




別の作品も、連載投稿しておりますので、ページ下部のリンクよりお願い致します。


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