4本の尻尾。―望乃夏
お久しぶりです
「………………さーてと、一眠りしよっか。」
「だめよ。」
私が被ろうとした布団は、すんでのところで雪乃にひったくられる。
「ああっ!?」
「…………全く…………もうこんな時間よ。遅刻したいの?」
「………………あと5分………………」
「そう………………目覚ましの出番かしら?」
「今すぐ起きますっ」
雪乃が、左手に力を込めるのを見て慌てて飛び起きる。………………雪乃の一撃なんか食らったら、目覚ましどころか永眠しちゃうよ…………。
「………………それで?肩の調子はどう?」
そう言われて気がつく。………………そういえば、右肩痛めてたんだった…………。雪乃の前で、肩をグリグリと回したり、後ろで手を組んで見せる。
「………………もうわかったから、早く着替えなさい。」
と、壁に吊り下げてあった私の制服を投げてよこす。
「ん、ありがと。」
パジャマを脱ぐと、部屋の寒さが暖かい肌を舐める。
「………………寒いね。」
「………………我慢なさい。」
と、横を見れば雪乃は下着一枚でワイシャツに袖を通してる。
「………………雪乃って先に全部脱いじゃうけどさ、寒くないの?」
「朝練で毎朝のように外に行ってたからかしらね、このぐらいならそんなに寒くないわ。」
「ふーん………………」
って、そんなことしてる場合じゃなかった。早く着ないと…………。
ドレッサーの前で襟元を整えると、髪の寝癖が気になってくる。………………ええいっ、めんどくさいっ!!
雑にブラシをかけて後ろで一つにまとめて、いつものポニーを結う。
「………………ほんっとに望乃夏も変わり映えしないわね。」
「だって楽なんだもん。」
細かいところを整えて立ち上がろうとすると、後ろから雪乃に裾を掴まれる。
「…………曲がってるわよ。」
「あ、サンキュ。」
「…………あと、ブラシ貸しなさい。」
「へ?」
なんで?と問い返す間もなくヘアゴムを解かれて、髪の毛がバサッと広がる。
「もー、せっかくまとめたのにっ」
手で結いなおそうとすると、雪乃が私の髪に櫛を走らせる。
「………………ポニテはさすがに見飽きたわ。今日は違うのにしてみない?」
し、してみないって………………「うん」って言う前から結い始めてるじゃん………………。
「………………ヘアゴム、借りるわよ。」
その言葉と同時に、髪を後ろに引っ張られる感じがする。
「ゆ、雪乃………………?」
「………………ん、できたわよ。」
ドレッサー越しに覗き込むと、
「こ、これ………………」
私の後ろ頭から伸びる2本の尻尾。
「こ、こんなのやだぁ…………」
「あら、似合ってるわよ。」
………………そう、いわゆるツインテールが揺れていた。
「今日一日それでいなさい。もし解いてポニーにしたら………………そうね、望乃夏の恥ずかしい話を文化経由で広めてあげるわ。」
「そ、それだけはご勘弁をっ!?」
「歩くコマーシャル」の異名を持つ安栗さんが知ったら、それこそ10分しないうちにクラス中にバレる。私は、頭に伸ばしていた手を下ろさざるをえなかった。
「…………そんなに嫌なの?………………仕方、ないわね。」
雪乃がゴムを2本咥えてドレッサーに腰掛ける。そして、ロングの髪をてきぱきとまとめて2本の尻尾を生やす。
「………………ほら、これでお揃いよ。これでも文句ある?」
振り向いた雪乃の顔は、呆れながらもどこか照れていて。
「………………やっぱりツインテールは雪乃の方が似合うよ。」
何故か気恥ずかしくなった私も目線を逸らす。
「………………ほ、ほら、朝ごはん買うならもうそろそろ出ないとまずいんじゃないかな?」
変な雰囲気を誤魔化そうと強引に話題を変えると、「それもそうね」と呟いた雪乃はすぐにカバンを持つ。
「ほら、行くわよ。」
「…………はーい。」
なんとなく落ち着かない頭を気にしながら、私もカバンを手に取った。
(え、お前一昨日も書いてただろって?………………バレたか)




