結果は。―雪乃
保健室の扉から首を出して、外の様子を伺う。…………誰も、いないわね。
「雪乃、なんでそんなに警戒してるの?」
「………………決まってるでしょ。私達が一緒にいるところを見られたら………………ただでさえ、今は私達は有名人なんだし。」
「………………そんな有名人はやだなぁ。」
なんてボヤく望乃夏の左手を引いて、高等部の下駄箱に向かう。
「…………みんなまだ、授業受けてる頃かな。」
腕時計に目を落とした望乃夏がつぶやく。
「あら、今何時?」
「…………もうすぐ2時ってとこかな。」
「…………そう。ならもう開いてるわね。」
望乃夏にも靴を履かせて、急いで校門に向かう。
「………………待て、どこに行く。」
ガサリ、と庭から姿を現したのは。
「…………用務員さん。」
「………………寮ならあっちだぞ。」
「………………いえ、望乃夏が肩を怪我してるので、整形外科に行こうかと。」
「おい待て、そんなの聞いてないぞ。」
怪訝な顔をする用務員さん。
「………………あー、実はほっとした時になって初めてケガに気がついたんで………………」
望乃夏が、左手で頭をかく。
「火事場の馬鹿力か………………全く、自分の体は大切にしろよ。ほら、早く行け。」
と、校門を指し示す。
「………………ありがとうございます。一応保健室に書き置きしてあるんで。」
「ん。」
それだけ言うと、再び校門へと走る。
「………雪乃、ボクお財布にそんなに持ち合わせないんだけど…………」
「保険証は持ってる?………………私の責任だから、治療費は私が持つわよ。」
「そ、それは流石に悪いって…………」
「今はそんなの考えないで。………………あ、そこの角を曲がって。」
暫く歩くと、見慣れた看板が見える。
「あそこよ。…………良かった、今日は混んでないわ。」
ドアを開けると、ガランとした待合室が見える。…………混んでないというより、患者が居ないの間違いかしら。
「…………望乃夏、こっち来て。」
と、カウンターに望乃夏を連れていく。
「すみません、初診でお願いします。」
差し出された問診票を受け取ると、望乃夏を連れてソファに腰掛ける。
「………………望乃夏、書ける?」
望乃夏にボールペンを渡すと、恐る恐る受け取って問診票に何か書き込んで………………
「…………ごめん、代筆お願い。」
「ん、わかったわ。」
望乃夏の言った通りにサラサラと問診票に書き込んでいく。…………体重に関しては、聞き出すのに一苦労したけど。
問診票を受付に返すと、すぐに望乃夏が呼ばれて診察室に入っていく。
「じゃ、ここで待ってるわね。」
望乃夏を見送ったあと、私はソファに腰掛けてじっと望乃夏の帰りを待っていた。………………まだかしら…………と、壁の時計を睨みつける。
しばらくして、カラカラと診察室の扉が開く。
「望乃夏、どう、だった…………?」
恐る恐る聞くと、望乃夏は、
「…………骨には異常ナシ。内出血が引けば痛みも消えると思うってさ。」
「そ、そう……………」
私は、思わず脱力する。
…………心配して、損した。




