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コーンスープ。―望乃夏

雪乃の一撃で完全に目が覚めた私は、身体を起こして雪乃を見る。………………どうやら、昨夜のことはバレてないみたい。

雪乃はジャージを脱ぎ捨てて、タンスからワイシャツを出して袖を通す。

「…………何してるの?早く着替えるか食べなさい。」

「………………はーい。」

もぞもぞと布団から這い出して、私も壁の制服に手を伸ばす。………………昨日、いや今日?の夜のせいで、あんまり寝てない気がする。…………またホームルームあたりから寝てようかなぁ。

ワイシャツのボタンを留めながら隣を見ると、雪乃がスカートを履きかけて固まっていた。

「………………どうしたの、雪乃。」

「………………ボタンが…………」

「ん?」

ひょいと覗くと、雪乃のスカートの内側のボタンが無くなってた。

「あー、飛んじゃったんだ…………それほつれやすいんだよねぇ。」

キョロキョロと周りを見渡すと、ほつれた糸と外れたボタンが足元に転がっている。

「うーん、今は繕ってる余裕ないから………………雪乃、帰ってきたら縫ってあげるから、今日のところは横のホックでなんとか凌いで?………………ってあれ…………?」

雪乃が、こころなしか青ざめている。

「………………ふ、太った…………。」

「いや、ボタンが飛んだのは糸が弱ってたからだから!!雪乃の体型は変わってないから!!」

慌てて雪乃をフォローする。……………………まさか、昨日せっせと雪乃にカルメ焼きを食べさせたから、じゃないよね?

「ほ、ほら雪乃。早く着替えないとっ。」

「そ、それも、そうね…………。」

気を取り直して、再度お着替えタイム。………………私の方はファスナーが閉まんないとか、ボタンが飛ぶとか、そういうこともなくすんなり履ける。それを雪乃が恨めしそうな目で見てるけど………………はい、やっぱりカルメ焼きのせいかもしれません。

とりあえずひと揃い身につけた私は、雪乃が買ってきたビニール袋の中身をテーブルに空ける。

「………………雪乃、こんなに食べるの?」

「そ、それは望乃夏の分も入ってるからよ!!」

と、雪乃がすかさず言葉を返す。

「あ、そうなの………………ごめん、お金返すね。」

と、財布を取り出そうとする私を雪乃が押しとどめる。

「いいのよ………………一昨日のうどんの材料代にもならないけど、この分は私が持つわ。」

「あ、ありがと………………。なんか、悪いね。」

と答えると、雪乃は、

「いいのよ………………望乃夏にはしてもらってばっかりで何も返せてないもの。」

と、雪乃が少し照れながら答える。でも、それよりも気になったのは。

(雪乃の手、冷たい………………。)

部屋も冷えるし、何よりコンビニまで歩いてきた雪乃。…………きっと、身体の奥も冷えてるはず。

「雪乃、先におにぎりとパン選んでて。」

そう言い残して給湯室に入る。いつも手に取るティーカップ…………じゃなくて、その横にあるマグカップに手を伸ばす。………………私達が仲良くなる前、雪乃が貰ってきたペアのマグカップを、私は初めて手に取った。

よくすすいで、戸棚に置いといたコーンスープのスティックをマグカップに空けて、お湯を注ぎ入れる。………………後はティースプーンでよくかき混ぜてっと。

「望乃夏、何してるの…………?」

ひょこっと顔を覗かせた雪乃に、マグカップを手渡す。

「はい、雪乃。」

「これ、私が貰ってきたやつじゃない………………。それに、コーンスープなんていいわよ…………」

「ダーメ。」

と、雪乃に無理やりマグカップを押し付ける。

「………………雪乃の手、ひんやりとして冷たかった。……………………外は寒かっただろうし、これであったまって。」

「望乃夏………………ありがと。」

マグカップに口をつけると、雪乃がすぐに顔をしかめる。

「ごめん、熱すぎた?」

「いいわ………………それにしても、私の朝はだいたい牛乳なんだけど………………ま、こういうのもいいわね。」

………………もう、雪乃は素直じゃないんだから。

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