リベンジ。―望乃夏
部屋の鍵を開けると、どっと疲れが押し寄せてくる。私は荷物をドサッと下ろすと、そそくさと給湯室に入る。
「どこ行くのよ望乃夏。」
「いやぁ、疲れたからアールグレイでで一息つこうかと。」
「はいはい逃げないの。」
と、襟を掴まれる。
「いやいや逃げないからっ、それにまず荷物も片付けないと…………。」
「…………それも、そうね。」
ふぅ、やっと解放された…………。
クローゼットに今日買った服を畳んで入れていく。…………コートはハンガーで、スラックスは…………いいや、引き出しで。
と、紙袋の底から雪乃に貰ったファンデーションが出てくる。――雪乃には悪いけど、これは『その日』まで使えないや。そっと、コートのポケットに仕舞う。そしてディスカウントストアの袋から『もう1個のファンデーション』を取り出した。
――雪乃は私に見えないように取ろうとしたみたいだけど、実は丸見えだったわけで。雪乃がレジに行った隙に、自分も同じのをカゴに入れて買っちゃった。………………まさかその後、プレゼントされるとは思わなかったけど。
「なにをぐずぐずしてるの、さっさと始めるわよ。」
と、私の想い人が急かしてくる。
はいはい、今行きますよっと。
「さて、まずは基本的なとこから行きましょ。まずは顔を洗ってから化粧水とか乳液を塗り込むんだけど…………今はいいわね。」
ふんふん、これの後にこれね。
「その後下地を塗るのよ。リキッドもあるけど…………そう、このクリームね。隠したいのがあったらコンシーラーを使いなさい。そのあとファンデーションよ。粉の場合はスポンジに付けて内から外に馴染ませなさい。その後はチーク。筆に付けてほっぺにそっと塗れば顔色が良くなるわ。後は…………」
「ま、待って…………」
この時点でもうパンクしそうなんだけど。
「…………あら、まだ2割も終わってないわよ?」
「…………そ、そんながっつりじゃなくていいから…………。」
これ何時間かかるんだろ…………?
「………………しょうがないわね。ま、後はそこにアイシャドーを入れればなんとか形にはなるでしょ。さ、やって見なさい。」
と、ドレッサーの前に座らされる。
うぇぇ…………いきなりやってみろったって………………。えと、まずは液で肌を整えて…………うわ口に入った不味っ。次がベース液…………ちょっと足りない…………けどいいや。んでその次が…………ファンデーションか。やさしくやさしく…………うーん、延びないなぁ。後はチーク…………うぇ、載せすぎた!?あわわ、アイシャドー…………裸眼だと距離が………………
「…………雪乃ぉ…………」
「………………あんた、ホントに不器用ね………………。」
デートへの道は果てしなく遠いようです。




