確かめて欲しい。―雪乃
バス停の屋根越しに差し込む夕日が、私と望乃夏を優しく照らす。
………………いいわね、こういうのも。そう思って望乃夏の方に意識を向けると、望乃夏の手が小刻みに震えてるのが感じられた。
………………寒いのかな。私も寒いし、あっためてあげたい………………。望乃夏の手を握る手に、思わず力がこもる。
「………………雪乃?」
「………………望乃夏、どうしたの?寒いの?」
「………………ああ、うん、寒いね………………」
「そう…………ずっと何か考えてたし震えてたから、寒いのかなって。」
「そうだね、早くバス来ないかなぁ。」
そう言って望乃夏は、空いた手を擦り合わせる。話す息も白くなってて、とっても寒そう。………………私と望乃夏、寒いのは同じだけど…………望乃夏の方がやせっぽっちだから余計に寒そう。………………望乃夏のこと、あっためてあげたい。
そう思ったら、自然と身体が動いてた。
「…………望乃夏」
ん?と振り向いた望乃夏に、腕を広げて抱きつく。途端に望乃夏は目を白黒させて、私との間に腕を入れてスキマをつくる。………………あれ、なんで?
「………………私も、寒いから。………………嫌、だった?」
もしかしたら、いきなりは嫌だったのかな。それなら今度から気をつけよう。
「い、嫌じゃ、ないけどさ………………こ、こんな…………誰が見てるか分かんないようなとこで…………」
………………ああ、そういう事ね。
「大丈夫よ。次のバスまでまだ時間あるし。………………それに、せっかくこんないい雰囲気なのに何もしないのは、ね。」
「ゆ、ゆきのぉ………………」
望乃夏が、情けない声を上げる。それが私の体温をもっと上げていって。………………望乃夏に「あったかい」を分けてあげたくなる。
キョロキョロと辺りを見渡した望乃夏は、私を支える腕の力を少しずつ抜いていく。その代わりに、今度は私の背中へと腕が回される。
コート越しに望乃夏の体温が伝わってきて、私の身体がもっと「あったかく」なる。
「………………雪乃、あったかい。」
「望乃夏もあったかいわ。」
耳元で囁かれるだけで、私の頭がくらくらする。コートの向こうから湧いてくる望乃夏の熱にもっと溺れたくなって、望乃夏に回した手に力を込める。私の胸が、望乃夏のおっぱいに押されて小さな声が漏れる。………………えっちな気持ちが、こぽり、とほんの少しだけ湧いてくる。
すると突然、望乃夏が私を押しのける。
「………………望乃夏?」
いいトコだったのに何するのよ?そんな不満も込めて望乃夏に視線を向けると、
「………………雪乃、ごめん。ここまでにしとこう………………じゃないと………………理性がもたない…………」
と、望乃夏が息も絶え絶えに言う。………………ふむふむ?
「……………………あら、望乃夏は我慢が苦手なのね。」
「…………それは雪乃もでしょ。」
「…………っ!?………………そ、それは、そうだけど………………」
望乃夏をちょっとからかったはずが、すかさずカウンターを決められた。思わずしどろもどろになる私を、望乃夏はそっと抱きとめる。………………けど、それはさっきみたいに上半身全部じゃなくて、腕をしっかりと絡めるだけ。
「………………抱き合うのは、お部屋帰ってからね。」
そっと耳元で呟かれる。………………お、お預け?………………ま、まぁ、人目も全く無いわけじゃないし………………でも。
「………………望乃夏のヘタレ。」
思わずそう言っちゃう。でもその後に、
「………………約束、だからね?」
と付け足すと、望乃夏はコクリと頷いてみせた。
(何だか、すごく疲れた………………)
望乃夏で暖をとりながら、私はベンチの背もたれに深く寄りかかってため息をつく。ホントはもう、望乃夏にくっついてなくても充分暖かくなったんだけど………………望乃夏が離してくんないから、仕方なくそのままくっついてる。
「………………望乃夏、寝てないでしょうね?」
「………………むにゅ……起きてるよ…………」
「半分寝てたよね?」
「………………はい…………」
………………全く、もう………………
「…………ほら、もうそろそろバスが来るわよ。今度は4つ目だからすぐ降りるわよ。………………試飲もできるから、着いたら目が覚めるハーブティーでも飲ませてあげるわよ。」
………………口に合うかどうかは分かんないけど。
「あ、そっか。………………ごめん、目的を忘れかけてた。」
「………………そこまで行くと、怒るどころか呆れるわね………………。」
全く、望乃夏ったら………………。でも、それが望乃夏らしいといえば望乃夏らしいわね。
「ほら、早く荷物まとめなさい。モタモタしてるとここに望乃夏だけ置いてくわよ?」
「き、厳しいなぁ………………」
もちろん本気ではやらないけど、それでも慌てる望乃夏が面白くてつい吹き出した。
夕日は、もうそろそろ沈もうとしてた。




