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くつえらび。―雪乃

ま、全くもう、望乃夏は何を言い出すのよ………………。へ、変な想像、しちゃったじゃない………………。

私は、頭の中にほわーんと浮かんできた妄想をかき消すのに精一杯だった。

………………の、望乃夏の蜜が、私にかけられて絡まって………………た、食べられ、る………………!?

「…………ゆ、雪乃………………?」

「た、食べないで………………」

「…………雪乃、何言ってるの…………?」

「………………の、望乃夏の、えっち!!ヘンタイ!!」

「雪乃、何言ってるの!?」

「………………だって、望乃夏が変なこと言うから………………」

「………………うん、確かにあれはボクが悪かった。」

シュンとする望乃夏に、私の熱も冷めていく。

「………………いいわよ、もう。………………望乃夏の変態。」

「ぐぅ………………」

あ、ぐうの音が出た。

「…………さ、行くわよ。」

「ま、待ってよ雪乃…………」

ハンドバッグを持ってコーヒーショップを出ると、私は望乃夏に構わずずんずんとショッピングモールを進んでいく。

「ま、待ってよ雪乃…………どこ行くの?」

その問いかけにも答えず、ショッピングモールの人混みを進む。やがて、一件のお店にたどり着く。

「………………さ、望乃夏。着いたわよ。」

「も、もう…………一人で行っちゃわないでよ………………。ってあれ、ここは………………」

「………………探してた靴屋さん。さ、さっさと買って帰りましょ。」

「う、うん………………。」

………………ホントは、僅かに残った微熱を冷ましたくて宛もなく進んでただけなんだけどね。


「雪乃、これはどう?」

「うーん………………ちょっと色が明るすぎるわ。他の色はない?」

「…………じゃあ、これ?」

「…………明るすぎるって言ったのになんで蛍光色持ってくるのよ。もっと明るいわ。」

「…………もう、なら自分で探しなよっ。」

………………なんでこんなことになってるかと言うと、


「ゆ、雪乃………………やっぱりまだ、怒ってる?」

「………………そうね、まだちょっとだけ…………変な気分…………。」

靴屋さんに入る前に、近くの物陰に二人で座る。

「………………ご、ごめん…………。」

「…………しばらく、餡蜜は食べられないかも………………思い出しちゃって。」

「…………ほんっとにごめん…………」

「………………望乃夏、もしかして私とそういう『コト』、シてみたいの?」

そういった途端、望乃夏が目に見えてうろたえる。うわぁ…………って目で望乃夏を見ると、叱られた子猫みたいに望乃夏がシュンとする。

「………………ボクは別にそんな趣味は無いし、安栗さんみたいに他の娘に欲情したりはしないけど………………雪乃だと、話は別なんだ………………。雪乃の全部を知りたいし、もっと深くなりたいって思っちゃって………………。」

しどろもどろに答える望乃夏に、私の中でも気持ちが揺れ動く。

「………………じゃないわよ…………。」

「………………えっ?」

「………………私だって、そういうことするの、嫌じゃないわよ………………望乃夏と、なら。」

…………望乃夏に引きずられて、私までおかしくなっちゃったのかしら。いや、きっとこれは私から壊れてったのね。

「………………不思議ね。周りからは『クールが服着て歩いてる』なんて言われてた私が、望乃夏、あなたにだけはこんなにもかき乱されて………………望乃夏の全部が欲しくなるの。」

「ゆ、雪乃、も………………?」

「………………そうよ。は、恥ずかしいからあんまり言わせないで………………/////」

ぽふん、と爆発しそうな頭を風で冷ましていく。望乃夏はと言えば………………やっぱり爆発しそう。

「………………望乃夏?」

「………………ごめん、ちょっと今頭の中で整理がつかない………………」

「…………そう。なら………………私のために靴を選んでくれる?動き回っていれば、そのうち考えもまとまってくるわよ。」

「もう、それは雪乃だけだって。」

少し呆れたような望乃夏だけど、それでも「わかった」と言ってくれる。


………………と、まぁ、こんなわけで。

「………………どう?雪乃。」

「…………いいわね。履き心地も悪くないし、きつくない。」

立ち上がってその辺を歩いてみるけど、前の靴よりも軽くて歩きやすい気がする。

「いいわね、これにしましょ。」

「じゃあ雪乃、こっちも。」

と、望乃夏は色違いの靴も渡してくる。

「あら、一足あればいいのよ。」

「………………雨の日とかどうするの?換えはあるの?」

「…………うっかりしてたわ。ここんとこ雨降ってないから忘れてた。」

望乃夏から箱を受け取って、中の靴を履いてみる。同じ靴の色違いだから特に問題もなく、履き心地も変わんない。

「決めた。こっちは普段使いで、こっちは雨の日用ね。」

私は白い方の靴を先に指さして、黒の方を雨の日用にする。

「えー、ボクは雨の日用?」

「………………望乃夏は黒いものは全部自分のものにしちゃうのね。」

「………………雪乃もでしょ?」

「………………ま、それもそうね。」

元通りに靴をしまってレジに持っていくと、望乃夏が何かを見つけて立ち止まる。

「望乃夏、どうしたの?」

「…………ごめん雪乃、匿って。」

「へ?」

言うが早いか、望乃夏は私の影に隠れる。

「な、何よ………………」

「………………昔のクラスメート。あんまりいい思い出がないから…………」

「………………望乃夏も色々抱えてるわねぇ………………。」

望乃夏の姿を遮るように立って、通り過ぎるのを待つ。

「………………行ったわよ。」

「………………サンキュ、雪乃。」

私の影からゆっくりと望乃夏が身体を起こす。

「………………ここは危険ね、早めに他のとこ行きましょ。」

望乃夏はコクコクと頷いた。

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