ご近所さんのよしみ
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冬休みが明けて早々に、大寒波の到来。
最低気温が氷点下5度をさらに下回るって、この時期にしては記録的な寒さなんだって。
キャンパスの広場を横切る人工の小川に薄く氷が張っているのを見て寒気がした。
この刺々しい冷気、鼻から吸い込めば奥がキーンと痛くなり、口から吸えば唇がビリビリ痺れる。
ガツンと目が覚めるような厳寒だった。
身体がおかしくなるかと思ったけど、その前に部屋の設備がイカれてしまった。
給水管の凍結でお湯が出なくなったのだ。
業者曰く、経年劣化もたたって管が破裂したという。
位置も悪かったらしく、数日掛かりの工事になると言われてしまった。
それまで風呂をどうするか。
表向きは困り顔をしておいて、これ幸いと私は連日眞輔の部屋に足を運んだ。
ご近所さんのよしみって言葉は効果絶大で、
「夏嵐の日の恩返しをするチャンスだよ」
そう言えば彼は嫌でも私を部屋に上げざるを得なかった。
毎晩夕飯時にお邪魔して、一緒にご飯を食べてお風呂を借りて、淑女らしく午前0時を回る頃にはきちんと自分の部屋に帰る。
隣同士のアパート、歩いて1分もしない距離だけど、眞輔は必ず私を家の前まで送ってくれた。
感謝の印にお手製料理を振舞ってやると言うと、眞輔は大層喜んだ。
だけど、私の自信作を見て、
「えっ、鍋にブロッコリー……?」
なによ……。
え? これってそんなに変なのかな。
同棲ゴッコみたいで楽しくて、浮かれていた。
はっきりと言葉にして好意を伝え合っていない手前、こういうなし崩し的な付き合いってだらしないとも思えたけど。
数日でもそんな生活を送っていれば次第に相手の癖や習性みたいなものも見えてきた。
その中にひとつに、やけに引っかかることがあった。
私がお風呂を使うあいだ、眞輔はコンビニに行くってぶらりと出ていくんだけど、徒歩圏内なのに必ず原付を引っ張り出すのだ。
そのまま小一時間、長いときは2時間以上戻らないこともあった。
「星が綺麗だったから、ちょっと遠回りして走ってました」
徘徊癖かな。
こんな寒い時期に出なくてもいいのにって心配したけど、スクーターで北海道を周る人だし、多少ネジが飛んでいるんだろう。
眞輔にとってはこのくらいが日常なんだと思うことにした。
私が彼女面して小言を言うことでもない。
その一方で、私の方にも気付いてほしくない隠し事のひとつやふたつは抱えていたし。
――――例の、名都が目撃されたという噂話の件は黙ったままだった。
わざわざ伝えるほどの大ごとじゃない。
むしろ眞輔へ伝えてしまうことで、私の中で事が大きくなっていく気がして。
自分だけで飲み込んでしまおうと判断した。
私たちには特別な絆がある。
でも、だからって1から10まで気持ちを共有する必要はない。
そういうのって、脆いと思ったんだ。
それは眞輔への遠慮だった?
それとも、私の傲慢だったのだろうか。




