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文句を言われる謂れはない



 師走というくらいだから、先月は慌ただしい月だったんだろう。

 クリスマスが終われば立て続けに年末行事。

 なんだか街全体がチカチカとせわしなく点滅して、人たちの動きを急かしているみたいだった。


 そんな物語の終末感を抜けて、年が明けると一転して寝ぼけムード。

 一度実家へ帰省したってのもあるんだろうけど、リセットされたように空気ががらりと変わって感じた。


 地元にいたってやることないからと、まだ三箇日の中日なのに早々に下宿先へ戻ってきてしまった。

 でも手持ち無沙汰なのはここでも一緒だったな。


「〝惹かれてく〟ってどういう意味?」

「そんなの、私が知りたい」

「問い詰めりゃよかったじゃん! この意気地なし!」

「聞くのも野暮な雰囲気だったのよ」

「雰囲気ぃ? イチャイチャ乳繰(ちちく)り合ってたんでしょ」

「はあぁ!」


 電話の向こうの茉以(まい)は荒れすさんでいた。

 結局イヴまでに素敵な男性が捕まらなかったらしく、やけ食いに次ぐやけ呑みで孤独な聖夜を明かしたという。


「大体聖なる夜を煩悩まみれで過ごそうなんて、日本人はおこがましいのよ! よく知りもしない異国の宗教に影響されて! イエスは嘆いてるわ!」


 そんなアンタの姿を見てイエスは嘲笑ってるでしょうよ。


「もうコンビニ着いちゃったから、切るね。じゃ」


 20分ほどの道のりの退屈しのぎはできたから、もう茉以とのお喋りに用はない。

 非情ながら一方的に通話を切る。


 正月休みでどこのスーパーもやっておらず、仕方なしに少し遠くのコンビニまで足を延ばした。

 生鮮食品なども取り扱うミニ・スーパーの形態を持つチェーン店舗。


 買い物カゴを片手に野菜コーナーを物色していると、私を呼ぶ聞き知った声がした。


「か~ほちゃん」


 (たつみ)の野郎だ。

 普通に返事してもよかったんだけど、以前までの流れを汲んでなんとなくシカトした。


 わざとらしく目の前を素通りした私のあとを、巽はじとっとした眼つきで付いてきた。

 ぴたりと背後に張り付き、手当たり次第に棚の商品を私のカゴに放り込んでくる。

 やることが陰湿なのよ。


「ちょっと。警察呼ぶよ」

「なんだ。俺のこと見えてるじゃん」


 舌打ちしたけど、今度は巽が聞こえないフリをした。


「随分早く戻ってきたんだな。こっちはまだ人気(ひとけ)ないだろ」

「そうみたいだね。巽はいつ帰ったの?」

「俺? 帰省しなかったよ」


 私が手に取ったブロッコリーを興味ありげに覗きながら、


「へえ、お前自炊するんだな。今日の夕飯の献立は?」

「鍋。楽だしね」

「え? 鍋にブロッコリー?」


 何を入れようが、鍋に火を掛ければそれは紛うことなく鍋料理でしょ。

 文句を言われる謂れはない。


 巽は半笑いで憐れむように私を見た。


「んな珍奇なもんより、せっかくだし飯食いに出ようぜ」




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