プロローグ 異世界モノにありがちな居眠り運転トラックを神回避したけど、対向車線からもトラックが来るなんて聞いてねえ
皆様初めまして、前作からの皆様はようこそ待っておりました、往復ミサイルです。早速ですが新作スタートです。性懲りもなく異世界×ミリタリー系の作品になってます。楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ!
ものすごく実家に帰りたい。
よれよれになったスーツに身を包み、カバンを片手に、目元にクマを浮かべながらそんな事を考える。最近は仕事が忙しくて、岩手の実家に帰省する機会も全くない。ひたすら残業、残業、残業……定時退社だとか労働基準法だとか、そういう概念はウチの職場には存在するかどうかも怪しい。顕微鏡で探せばワンチャンあるんじゃね? というレベルである。
俺の名前は『川端明』、25歳社会人。岩手の実家から遠く離れた東京の会社に就職して、よっしゃ今日から俺も社会人の仲間入りだとか、実家に仕送りして母さんに楽させてやるぜヒャッハー、なんて目をキラキラさせていたのも昔の話。今となってはサービス残業当たり前、ブラックコーヒーとエナジードリンクが主食、度重なる残業と疲労で天然のアイシャドウまでプレゼントしてもらえるという実に素晴らしい労働者にランクアップである(これを果たしてランクアップと言っていいものか)。
ただまあ、唯一の救いは給料がそれなりに良い事か。これで給料が安かったら速攻で会社辞めて岩手に帰ってるところだ。まあ実家の周りも山と畑と田んぼと爺ちゃん婆ちゃんオンリーな環境で、盛岡とか北上まで行くには車で山を越えていかなければならないクソのような立地ではあるのだが。
こんど休暇取って岩手に帰ろう、そうしよう。新幹線で実家に帰って畳の上でリラックスしよう。いい加減ブラックコーヒーとエナドリ漬けの生活から脱却しないとヤバいし、何より実家にいる家族の顔が見たい。
しかしまあ、我ながらよく1人で東京までやってきたものだと思う。
信号が青になったので、横断歩道に向かい一歩を踏み出した。
白い線を革靴で踏みつけたのと、やたらと眩しいライトの光、そしてトラックの重厚なエンジン音が迫ってくる。
死んだ目を向けた先に見えたのは、ハンドルに突っ伏して居眠りするドライバーを乗せた暴走トラック。
あーコレ異世界転生モノでよくあるやつだわ。ニートやら何やらにまるで吸い込まれるように突っ込んでは数多の陰キャを異世界に送り込んできた魔の導き手だわ、と他人事のように思いながら両足に力を込め、前へと大きく跳躍した。
ごう、と背後を通過していくトラック。うっかり回避してしまったが、アレ轢かれてたらワンチャン俺異世界転生できてたのかな、と思ってしまう。
いいよね異世界。チート能力で無双できたら最高だろうなぁ、なーんて思いながら着地しようとしていた俺の視界の右側から、今度は別のエンジン音とライトの光。
「……嘘ぉ」
トラックを神回避した―――それまではいい。
でもさ、対 向 車 線 か ら 別 の ト ラ ッ ク が 突 っ 込 ん で く る な ん て 聞 い て ね え 。
奇跡的な確率か、それとも日本の労働環境がついに落ちるところまで落ちたのを示しているのか―――まるで着地狩りを狙っていたかの如く突っ込んできた第二の居眠り運転トラック。
空中であるが故に回避も何もできたもんではなく、やがて視界一杯にトラックのライトとグリルが広がって―――。
ごしゃあっ、と肉も骨も潰れる音と共に川端明という1人の男の人生は終わった。




