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双星の継承者  作者: まさな
■第一章 未開惑星の漂流者 ― Drifters of the Uncharted Planet ―
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●第三話 装備チェックと小休止の夜

 少し警戒しながら問うクローディアに、俺は内心で少し驚いていた。

 賢く頭の回転も速い彼女ならすぐに答えられると思っていたからだ。


「必要なのは水だよ。食料は高栄養キューブが二人で二週間分はあるけど、72時間以内に水を補給しないと俺たちは生物学的に詰む」


「あっ、そうか、船の制御が死んでいるから、水のリサイクルシステムが使えないし、外気精製システムも使えないんだ……」


「そういうこと」


 すると急にクローディアはカッと目を開き、自分の頬を両手で叩いた。バチン!と大きな音がする。


「ど、どうしたんだ!」


「気合いを入れたのよ、腑抜けていた自分にね」


「なんだ、やめてくれよな……。君がネクサスに感染したのかと、少しヒヤッとした」


「ええ? そういえば、味方を攻撃する錯乱状態になったり、AIが乗っ取られたりするという報告例があったわね。でもあれって、侵入されて卵を産み付けられた場合だけでしょ?」


「そうだけどさ、クロ、このあたりにちょっとでもネクサス反応があれば、すぐ教えろよ」


「はは、心配性だなぁ、ハルトは。大丈夫、大丈夫、この惑星がネクサスに汚染されていたら、ボクらが墜落した瞬間からイソギンチャクがご丁寧にお出迎えして絶賛、触手祭りだったはずだよ」


「うぇ、ゾッとする話だな」


「ええ、まったく。さて、私は脱出艇の修理ができないか、チェックしてみる。悪いけど、クロちゃんを借りるわね」


「オーケー! クローディアのためなら、ボクはいつだって協力するからね!」


 俺が返事をする前に、クロがクローディアの肩にジャンプして飛び乗った。


「じゃ、俺は装備をチェックした後、周辺を少し探索してくるよ」


「あまり遠くまで行かないでね? ハルト。単独行動は危険だから」


「分かってる」


 まずは装備だ。すでにクロがチェックしてくれているが、彼は使用可能かどうかを確かめただけで、持ち運びはできないから、俺が使えるものと使えないゴミをより分けておく必要があった。

「さて、クロが気づかなかったようなものがあるかどうか、だな」


 薄暗い船内をスーツの腕ライトで照らして壁面のパネルを開く。


「酸素ボンベ……不要。二酸化炭素の吸収剤……これも不要。シールジェル……これはデブリの衝突で船内に穴が空いた場合に塞ぐためのもの。いらないなあ。環境スキャナ……これもクロがいれば不要だな。携帯用レーダー……もう少し軽ければ持っていくところだが、クロがいればいいや。携帯ビーコン……死んでるな。電源ボタンを押してもうんともすんとも言わない。ブラックホールに落ちたときのエネルギーで壊れたか」


 結局、クロが報告してくれた物だけが地上で使えそうだった。




現在の装備


『救急キット』×2セット

『パルスレーザー・ハンドガン』×2丁

『高栄養キューブ』×30個

『バックパック』×2袋

『マルチツールナイフ』×2本

『マルチソーラーバッテリー』×1個

『透明ポリ袋(小)30センチ×30センチ×40センチ』×30枚。

『インスタントコーヒー粉末スティック』×10本。

『マグカップ』×2個。

『ウイスキーの瓶』×1本。




「意外に少ないな。まぁ、脱出艇なんて、宇宙専用で基本的に地上を移動するようには作られていないからか。ライアン中佐の酒瓶が壊れなくて良かった」


 小さくため息をついたあと、俺は救急キット、高栄養キューブ2個、ナイフ、ポリ袋をバックパックに入れ、ハンドガンをスーツのホルスターに納めてから出発する。


「まずはぐるっと森を歩くか」


 すでに脱出艇はクローディアが木の枝と葉っぱで覆い隠って偽装工作を始めていた。ま、ここでは白い人工物の船体はかなり目立つから必須の作業だろう。


 二時間後――


「報告する……近場には、本当に何もなかった。水も見つけられなかった……」


 へとへとになって俺は脱出艇に戻ってきて、クローディアに報告した。


「そう。そんなに気を落とさなくても大丈夫よ。こちらも、報告するけど、船の修理は絶望的ね。大気圏突入の高温で重要な配線と部品がいくつかやられているんだけど、交換部品が全然足りないわ」


「そうか……」


「だから、明日、二人で少し遠出して水を探しに行きましょ」


「わかった。そうしよう」


 外は少しずつ空が赤くなり、日が暮れていく。

 緑だった葉っぱが焦げ茶色に変わり、風が冷たくなってきた。

 スーツが自動で温度調整を始め、足と腰の部分が温かくなる。

 クローディアは空を見上げた。


「ハルト、見える?」


 遠くで、青い光がふわふわと浮かんでいた。

 炎ではない。光はまるで意思を持つように、ゆらめきながら移動している。


「なんだ、あれは」

「わからない……けど、綺麗」

「生物の発光、か?」

「あるいは、何かの信号かも」


 二人とも無言になった。

 異世界の風が、二人の間を通り抜けていく。

 そして、クローディアが自分の組んだ手を見ながらそっと言った。


「ねえ、もし帰れなかったら……どうする?」

「何言ってるの。帰れるよ。さ、そろそろ寝よう」


 俺は短く答え、スーツのライトを切った。

 外では青い光が、まるで呼吸するように、静かに瞬いていた。

今日の投稿はここまでです。一日一話2000文字くらいで、19時に投稿予定。

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