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双星の継承者  作者: まさな
■第二章 祈りと共に ― Beyond the Prayer ―
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●第六話 風が消える夜

 いよいよ、降誕祭とヴァルプルギスの夜祭が始まった。

 村人達は女衆が派手な服で踊り、男衆が太鼓や角笛などの楽器を鳴らす。俺はどこか中世ということで小馬鹿にしていたが、音楽はそれだけで迫力があり、独特のリズムから来る高揚感はVRゲームにも匹敵するものがある。


 広場中央のキャンプファイヤーは高々と炎が巻き上がり、時折、吹く風によって炎の向きが変わり、まるで生ける大蛇のように荒々しく振る舞っている。


 白い薄着に着替えたフィーナは、結局、巫女を引き受けたようだ。花の冠を被り、照れ笑いしている彼女は月と炎に照らされ、とても美しく見えた。だが、俺と視線が合うとスッと目をそらした。おや? 


「ほれ、客人、肉を食え」


「ああいや、チーズだけで充分なんで」


 村人達が代わる代わる前に来て俺に肉を食わせようとするが、羊の肉は癖が強くて食べにくい。たぶん、調味料がハーブだけというのがよろしくないのだろうが、ここで焼き肉のタレをくれと言ったところで、村にはないのだから、どうしようもなかった。


「皆の者! これより、星の巫女が神託を受ける。心せよ!」


 村長が声を張り上げると、太鼓の音が止み、村人達が静まりかえって、星壇に注目した。


「ハルト、どうやらまずいことになったよ。村長に言って、今すぐ祭りを中止したほうがいいかも」


「はあ? 何を言ってるんだ、クロ。ここで今そんなことをやってみろ、俺たちは怒られるだけじゃすまないぞ。投獄される可能性がある」


 百年の一度のお祭りをよそ者が邪魔したら、間違いなく大問題になりそうだ。拘束は最悪暴力で解決できるが、食料調達が痛い。


「まぁそうだろうね。じゃあ、アーシア観測隊の生存を優先する。これから何があろうと、何もしないことを強く推奨するよ、ハルト。この場合の作戦成功率は100%。きっとそれが最善だ」


「んん? 何を……作戦?」


 クロが問題を認識しているようだが、祭りの何が問題なのか、俺にはさっぱり分からなかった。焚き火の炎は激しく燃えているものの、村人達からは充分な距離がある。焚き火の櫓が崩れても、被害は及ばない。


 その焚き火を支える柱が一本、燃え落ち、一瞬だけ、風が凪ぐ。


 最初に異変に気づいたのはクローディアだった。


「ハルト、よく見て。村の入り口に、武器を持った男達がいるわ。まずい、あれはヴィント村の人じゃないわ! まさか、盗賊!?」


「くそっ、村長! 盗賊だ!」


「なんと! いかん、早く武器を!」


 何人かの村人が気づき、木の棒で応戦しようとしたが、先に盗賊達は弓で矢を放ってきた。


「ぐあっ」「きゃあっ!」


 村人達が射貫かれ、次々と倒れる。悲鳴と怒号が入り交じり、祭りは大混乱に陥った。


「くそっ、あいつら!」


「ダメだよ、ハルト。軍規によりパルスレーザーガンの使用は()()()()()()()()()


「はぁ? 何を言ってる、クロ。目の前で村人が盗賊に殺されてるんだぞ? どう見たって正当防衛だ」


「そうじゃないんだよ、ハルト。彼らは根っからの盗賊じゃない。彼らは隣村からやってきてる別の村人なんだ」


「なっ」


「おそらく飢えてこうするしかなくなったんだ。君も情報として聞いてたよね。このあたりが三年も凶作だったと」


「だからって、頼むなりすればいいだろう! 何もこんなやり方……」


「無駄じゃ。それでワシらが分け与える食料では、到底、生きていけん。ヤツら、この様子ではおそらく種籾もなくしておるわ。馬鹿共が……なぜもっと早く……!」


 村長がやるせなさをにじませた震える声で言う。


「ハルト! どうするの。私はあなたの命令に従う」


「ええ? クローディアはどうすべきだと思う?」


「非介入よ。村人同士の争いなら、絶対に銀河同盟軍が介入してはならない。私たちが使う武器はここでは虐殺に等しいわ。クロも何もするなと言った」


「それはそうだが……とにかく、やめろ!」


 槍で襲いかかろうとした男を羽交い締めにする。


「離せ!」


 そう言いながら、男は泣きながら槍を振り回す。その体は酷く痩せこけていた。


「分かってるんだ! こんなことは悪いことだ! だがっ、村にはもう食い物がない! 殺して奪わねば、娘が、娘が死んでしまう! 離してくれ」


「くっ」


 考えろ。俺たちが持っている食料を差し出せば、いや、ダメだ。高栄養キューブは三十個足らず。ここにいる村人の一日分はまかなえても、その後が続かない。


「クロ! なんとかしろ、クロ!」


「ごめんよ、ハルト。AIであるボクはこうなった状況では深刻なジレンマに陥って、正しい回答は出せない」


「俺だってそうだ!」


「ハルト、フィーナが!」


 クローディアの声に、俺はとっさに星壇の方を見る。祭壇の奥で、フィーナが村の子供をかばうようにして、うずくまっているのが見えた。まだ無事だ。だが、男たちが供物を狙い、よろめく鍬を振り上げ、祭壇へと殺到していく。


「やめろー!」


「ぐっ!」


 とにかく殴り倒す。パルスレーザーガンは使わない。そうだ、殺さなければ問題はないじゃないか! それに気づかなかった自分の間抜けさに腹が立つ。


「クローディア! 銃は使わず、隣村の人間を全員無力化させるぞ!」


「了解!」

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