外交
「アルフ王子、国内の説得、終わったよ。まだまだ荒れてるところもあるけど、概ね関係は良好。少しずつ安定していくと思うよ」
「あぁ、ポポル。助かった。それなら次は俺たちの出番だな」
国内の問題が片付いたなら、今度は外交問題だ。
帝国が俺たちの方を警戒してくれているおかげで、周りの国は滅ぼされずにすんでいる。
北にある最北の国、ミラメルク王国。
北西にある獣人の国、ラグワンド王国。
北東にあるドワーフの国、レンド共国。
そして、帝国の東にある神聖国家、聖ミラク公国。
これらが今帝国に襲われている国々である。
小、中国家の数々。
一国では帝国に歯が立たないことはわかりきっている。
だからこそかの四ヶ国は同盟を組み、固まって帝国に対抗していた。
もちろん、この四ヶ国だけで最大国家である帝国に対抗することは難しい。
今も辛うじて時間を稼いでいるに過ぎなかった。
本気で帝国が攻めてきてしまうとまず落とされてしまう国々である。
だからこそ、今回ユールゲン王国がした結果は彼らに益のあるものであった。
帝国が割く兵の一部をユールゲン王国側に向けさせる。
その結果、辛うじて帝国に対抗できる程度になっていた。
そこで俺たちが魔王を連れて説得に向かう。
魔王は現帝国が恐れを抱く唯一の相手。
個にして、一国を軽く落とせる最強の存在。
さすがに帝国の軍団が攻めると傷を負わせることも考えられるが、それでもかなり痛手を負う相手であり、できれば直接戦うことを避けたい相手だろう。
そんな人物が俺の味方になっている。
そのことを説明した上で、帝国を挟み撃ちにするための一時的な同盟を持ちかける。
おそらく相手は同意してくるはず。
これはお互いに理のある同盟なのだから。
こちらから提供するものは魔王の圧倒的な武力、ということだ。
残念ながらユールゲン王国だけだと、まだ足手まといに思われてしまう。
そこは悔しいところだが、事実は事実として認めるしかない。
でも、メリットさえあれば人手が欲しいのは奴らも同じだ。
この条件で断られるはずもない。
これで帝国包囲網が完成する。
他にも細かい国は多数あるのだが、帝国に直接接している国はこの辺りだった。
そこまで組んで初めて帝国に対抗できる。
ただ、帝国側もそれを読んでいるはず。
つまり、妨害が入ってくるだろう。
「それでも、成功させるしかないな」
このまま放っておくと帝国に支配され、王国の財源は奪われてしまう。それだけは絶対に防がないといけない。
◇
帝国の謁見の間。
皇帝に呼び出されたフルールは少し怯えた表情を見せていた。
それもそのはずでユールゲン王国へ、外交官として出向いていた彼女が王国の状況を知らなかったのだ。
そのことを皇帝に詰められてもおかしくない。
そう思っていたフルール。
だからこそ、なんとか皇帝の怒りを鎮めてもらうこと。
そのことだけに必死に頭を働かせていた。
しかし、皇帝の様子は完全にフルールの予想外で、楽しそうに笑いながら現れる。
「なんだ、フルールか。王国への偵察、ご苦労であった。ゆっくり疲れを癒すといい」
「は、はぁ……。よろしいのですか?」
「あぁ、もちろんだ。そなたのおかげで色々と面白いことになった。感謝してもし足りないくらいだ」
「お、面白い……ですか?」
「そうであろう? もう消化戦でしかなかった雑魚どもが徒党を組んで襲ってくるんだぞ? 勝てるかもしれない、と思っている奴らを蹴散らすのもまた一興であろう」
心の底からの笑みにフルールは少し怖く思えてくる。
「し、しかし、アルフ王子に暗殺者を送った話を聞かせてもらいましたが……」
「あぁ、やつらか。もちろん失敗するであろうな。そもそも一国の王子がそう簡単に暗殺できるはずもないであろう。しかも相手は切れ者だ。まぁ、この程度で引っかかる相手ならそれこそ警戒にも値しないのだがな」
皇帝は暗殺は失敗するであろうことも想定しているようだった。
更にその上で暗殺者がこちらの情報を吐くことすらも想定しているのかもしれない。
この状況を打開する方法があるのか、それともただの狂気か。
フルールは少し末恐ろしく感じていた。
「では、フルールよ。次の命をだす。ミラメルク王国に出向き、そこの王を降して参れ! 方法は問わない」
「はっ、かしこまりました」
明日、転生領主第二巻が発売となります(੭ु˙꒳˙)੭ु⁾
こちらの初回特典に貧乏国家のSSもついてきます。
よろしければ手に取っていただけるとありがたいです(੭ु˙꒳˙)੭ु⁾ぺこっ
また、『悪役になってやる』の更新再開も明後日になりますので、併せてよろしくお願いします。




