アルフの目的
俺たちが小銭を稼いでいる間にポポルとクリスは国内の安定に向けて尽力していた。
「うーん、まだまだこの国は安定してないからね。特に今まで貴族たちが支配していた地はアルフ王子の意思が伝わってないだろうし、下手をすると一方的に、力で下されたと思っている貴族もいるかもしれないもんね」
「確かにそれはあるかもしれませんね。ですが、そんな相手をどうやって口説き落とすのですか?」
「えっ? そんなの簡単だよ? アルフ王子が真にやろうとしていることを説けば良いだけだからね」
「あぁ、そういうことですか。それは分かりやすくて良いですね」
「でしょ。王国の再建と隣国から攻められることのない強い国を作る。そのためにはどんな手も使うアルフ王子の手腕は認めざるを得ないもんね」
「確かに、この弱小国家が生き残るには、帝国と手を組み従国となるか、それとも帝国にも負けない強い国になるかの二つしかないですもんね。プライドを考えるなら後者しかないわけですが」
「うん、その分、負けたら滅ぼされる可能性もある茨の道だよ」
「でも、従国となったとしても、押しつけられる役目は魔族国の防波堤。必要がなくなったらそのまま滅ぼされる。つまり、最終的に生き残れるのもそっちしかないわけですね」
「そういうこと。ただ、そのためには足りない物がたくさんあるからね。武器もそうだし、兵も少ない。国内も安定してないし、収入も少ない。今はグッと堪えて、国内を強くしていく時期だもんね」
「だから、アルフ王子は金鉱を攻めようとしたり、金を集めるのに躍起になっているのですね」
「うん、きっとそうだよ。アルフ王子が無駄なことをするはずがないからね」
今までのアルフの行動からポポルはそう結論づけていた。
まさかアルフの本当の狙いが国庫を潤わせて、その分自分の使える金を増やしたい、ということとは思わなかった。
いや、この国の中でそのことに気づいている人間は誰一人としていなかった。
そして、ポポルたちは王国のために国内を走り回るのだった。
◇
「そういえば、アルフ様はどうして、こんなに王国のために頑張るのですか?」
ギルドの仕事が終わったあとも俺の部屋に来て、仕事を手伝ってくれているシャロ。
彼女はふと思い出したように聞いてくる。
どうして……か。
金のため以外にはないのだけどな。
ユールゲン王国はほぼ国庫もからで何もできることがなかった。
だからこそ、俺がその国庫を潤し、自由に散財する。
それ以外に目的などない。
しかし、さすがにそれを直接シャロに言えるはずもなく。
「ここは俺が生まれ育った国だからな……」
思ってもいないことを呟いていた。
「いくら一時期、帝国に人質として留学させられていたとしても、ここは俺の国だ。滅ぼさせるわけにはいかないからな」
高値で買ってくれるというなら喜んで売り払うつもりでいるんだけどな。
でも、そんなことをいうとせっかく俺のことを信じてくれているシャロの信頼を裏切ることになる。
それだと今は損しかない。
そう考えていたのだが、シャロは目から涙を流して感動していた。
「そ、そうですよね。確かにここはアルフ様の国ですもんね。わかりました。私も全力でここを守らせていただきますね!」
グッと手を握りしめるシャロ。
さすがにここまで感動してくるのは想定外だったが、力を貸してくれるのはありがたい。
特にシャロの場合だと、魔王を自由に動かすことができる。
帝国が唯一恐れているのが魔王だ。
最強の兵器にも等しい。
そんな彼を自在に動かせるのなら、それだけで取れる行動が一気に増える。
「あぁ、ありがとう。すごく助かる。シャロには色々と任せてしまってすまんな」
「いえ、気にしないでください。アルフ様には私も救っていただいた恩があります。アルフ様のためになるならどんなことでも協力しますので」
「よし、それなら俺の小遣いを――」
「はいっ?」
「いや、なんでもない……」
思わず本音が出てしまう。
しかし、慌てて訂正をする。
すると、シャロが不思議そうに首を傾げていた。
「とにかく、これからは色々と忙しくなる。シャロにも手伝ってもらうことになるからよろしく頼むな」
「はいっ!!」
シャロが大きく頷いたあと、満面の笑みを浮かべてくる。




