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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第三章、国力を上げよう

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つかの間の平穏

 やはりポポルの予想通り、帝国は国境の兵を強化しただけで攻め込んでくる様子はなかった。

 しかし、国境の周りにはかなりの兵が待機させられており、一気に緊張感が高まっている。


 いつ開戦してもおかしくない。

 そんな雰囲気が漂っていた。


 ただ、もちろんのことながら今動くつもりはない。

 どう考えても勝ち目はない。

 もし万が一に勝つことができたとしても、我が国も壊滅的被害を受ける。そうなってくると、得をするのは全くの第三国。


 今なら俺たちの代わりに攻められそうになってた小、中国家だ。


 そうなると俺たちは戦い損になる。


 もちろんそんなことにはさせない。

 漁夫の利を得るのは俺たちじゃないといけない。


 そのためにやることは……。



「さて、そろそろ金が必要だな」

「お金……ですか? えっと、ギルドの儲けがありますから少しくらいならお出しすることもできますが……」



 シャロが不安そうに聞いてくる。



「金が欲しい訳じゃない。いや、貰えるならもらっておくが」

「それじゃあ、どういうことなのですか?」



 俺が差し出していた手は華麗にスルーされてしまう。

 行き場のなくなった手を仕方なく戻すと、シャロに説明をする。



「まず考えて見ろ。戦争になると何が必要になる?」

「えっと、武器とかですよね?」

「あぁ、そうだ。武器や防具などが軍によって真っ先に押さえられる。そうなると品薄になり、必然的に値段が上がっていく。希少価値が高まるからな」

「えっと、そこでたくさん売るのですか?」

「いや、少しだけ流す。たくさん出してしまうとすぐに値が落ちてしまう。それよりもこの値段を維持する方を考える。ただ、流すのは俺たちの国だけではない。帝国の方にもゆっくりと流していく」

「ど、どうしてですか!? 帝国の方が武器を持つとより一層帝国が強化されてしまって……」

「武器を持つのは一般人だ。それに帝国軍人が持ったとしてもそれほど影響はない」



 シャロが驚きの表情を見せていたが、考えれば大したことはない。


 帝国は大国家だ、

 もちろん鍛冶師もかなり抱えているし、そもそも帝国兵が武器を持っていないなんてことがあり得るはずもない。


 ただ、他国に武器が流れるのを恐れて武器の流通は制限されてしまう。


 つまり一般人が持つだけではそれほど危険がないにも拘わらずに武器の値段が高騰するという現象が起きてくる。


 それに理由ならもう一つある。


 最高峰の鍛治師たちが作った帝国武器に比べるとどうしてもうちの武器は見劣りしてしまう。


 むしろ帝国兵が持ってくれるなら戦力の低下すら見込める。



「とにかく、武器を流す準備をしてくれ。これを機に国庫を潤す!」

「か、かしこまりました!」


 シャロが慌てて出ていく。

 そして、俺が一人部屋に残される。


 よく考えるとこうやってのんびりした雰囲気なのは久しぶりかもしれない。

 みんなが慌ただしく動いているからこその束の間の休息。


 目を閉じると騒がしい皆の姿がどうしても目に浮かんでくる。


 正直、国を保たせるだけなら適度に魔族と付き合いながら帝国の従国として働く方がいいだろう。

 どこからも襲われることなく平穏無事に過ごせるだろう。


 しかし、それだとこの国が貧乏国家のまま……という部分は変わらない。

 一生搾取され続ける未来なんて考えたくもなかった。


 俺は金を稼ぐ。


 そのためには全ての頂点に立つ。

 搾取される側ではなく、搾取する側に回らないといけない。


 そのためにはやはり帝国の存在は目の上のこぶだ。


 倒すべき存在。

 そのために今すること。


 本来ならしたくない武器の横流しをして金を稼いだあとにすること。


 ――あの時やっぱり金鉱を手に入れておけばよかったなぁ。


 あの場面では仕方ないこととは分かっているが、どうしても後悔してしまう。


 念話兵もこの国には必要な兵だった。

 おかげで国境付近の状況がいち早く手に入れることができたり、帝国に忍ばせている念話兵からも色々な情報を得ることができる。


 情報を制するものは戦も制する。


 彼らは帝国との決戦に必要な戦力になってくれる。


 でも、それとは別に必要だったものを手放す結果になっていた。


 他国を懐柔して帝国と共に戦う、と決意させるための手土産。

 次は彼ら……とは分かってるだろうが、なるべく戦わない方が彼らとしても益がある。


 そこを動かすための贈り物が必要だった。

 金品で済ませたかったのだが、そうもいっていられなくなった。


 別の手を考える必要が出てきたわけだ。


 そう頭を悩ませていた時に魔王がなぜか俺の部屋にやってくる。

 それと同時に俺にある考えが浮かんできた。

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