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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第三章、国力を上げよう

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クリスの策

「さて、仲間にしておいてもらって早速だが、今はまだこの鉱山を落とすのは難しいと思うぞ」

「どうしてだ?」

「確かにここには兵が少ない。一瞬で攻め落とすことができるだろう。しかし、もしここが落とされたら一瞬で帝国の首都へと連絡が行くようになっている。そうなっては一溜まりもないだろう?」



 それもそうだな。

 俺が懸念していたことが当たっていたようだ。



「それならどうしたら良い? ここまで考えていたのなら策はあるのだろう?」



 俺がクリスの目を見ると彼は頷く。



「もちろんだ。でもいいのか? 一度戦争を始めてしまったら勝つか滅ぶかするまで続くぞ?」

「もちろんそのつもりだ、いつまでも帝国の壁として使われるわけにはいかないからな」

「……わかった。ただ、まだ戦力が全く足りてない。金鉱を取ったら一旦引くことになる」

「そうだな。兵力がまだ足りてないからな」

「練度もそうだな。まぁ、それでもこの金鉱なら容易で取れるが――」

「それで今回の策は?」

「あぁ、余計な話だったな。まずは連絡網を断つ。基本的にここでの異常は各地に配置された念話系魔術師たちによって行われる」



 念話か……。



「念話の飛ぶ範囲ってどのくらいだ? ここから帝国の首都まではかなり距離がある。一気に飛ばせるわけではないだろう?」

「えっと、それなら私がわかります。だいたい五ジール……ユールゲン王国で言いますと、王都からポポルさんの領地くらいまでですね」



 シャロが両手を広げながら教えてくれる。

 ポポルの領地か……。それだと俺の国に念話を行き渡らせようとすると最低でも数十人、必要になってくる訳か……。


 俺の国でもそうなのだから、帝国だと凄まじい数の念話兵が必要になってくるな。



「……ちょっと待て。念話が使えるやつってそんなに人数がいるのか?」



 そもそも、魔法を使える人間自体が限られている。

 俺の国だとマリナスは使えるが、それ以外はそこまで多くない。

 弱い魔法なら使えるが、それが戦闘に使えるか……といわれると疑問符が浮かぶ程度の能力を持つ人間しかいなかったからだ。



「――そういうことだ。一応帝国も魔法使いを育てる研究所を作ってはいるが、どうしても念話兵は慢性的に人材が不足している。だからこそ、激務を強いられている上にそのことを知らない兵士からは『戦場にも出ない臆病者』のレッテルを貼られている。いくら給金が良いといっても、そんな状態では兵たちの士気は上がらない。ちょっと甘い言葉を掛けてやれば……な」



 なるほど、ちょっとずつ念話兵を懐柔していって、俺たちの国に連れて行けばいいのか。


 どうしても、現状では財政面では勝てない。

 でも、他の部分はどうにでもできる。


 それで寝返ってくれる人もいるだろう。



「わかった。それじゃあ早速その念話兵のところへと連れて行ってくれるか?」

「あぁ、付いてこい。一応わかりにくい場所にあるからな」







 クリスに連れられて向かった先は金鉱から歩いて数分の距離にある小さな小屋だった。

 周りが木々で覆われ、ここに小屋があると知らないとまず見つけることができなかっただろう。

 しかし、小屋側からは金鉱の入り口がしっかりと見えていた。


 なるほど……。もしクリスに教えてもらってなかったら、ここから帝国の首都に連絡が行っていたのだろう。

 これは助かったな。



「まずは俺が話を付けてくる。その後合図をしたら中に来てくれ」

「わかった。任せたぞ」



 後のことはクリスに任せて、俺たちは周囲を警戒していた。




◇■◇■◇■




 クリスは小屋の中に入っていくと中にはだらけきった数人の男達がボロボロの机に頬杖を付いていた。



「おっ、あんたは――」

「確か新米のクリスだったか?」

「なにかあったのか?」



 男達がクリスの姿を見て顔を向けてくる。



「あぁ、あんたたちに少し相談をしたいことがあってな」

「俺たちに?」

「一体何だ?」



 クリスの言葉に興味を覚えたのか、男達は少し体を起こす。

 その様子を見たクリスはこの交渉はおそらく上手くいくだろうと予測する。



「このまま、帝国についていて良いと思ってるのか?」

「いいもなにも俺たちは帝国民だ。ここ以外にいけるところもないだろう?」

「それに金払いも良いからな」



 やはり、ある程度の不満も金があるからこそ我慢できているようだ。



「……それで不満はないのか? まるでゴミのような扱いを受けて――」

「ご、ゴミなんてそんなことないだろう? 俺たちは帝国の通信網の基盤をささえて――」

「しかし、兵士たちからあたかも役立たずのように言われていたよな……」

「俺も何度も蔑んだ目で見られたな……。俺たちがいないとあいつらへの指令も届かないのに……」



 ちょっと突いてやると念話兵たちから不満が漏れ出していく。



「それらの全てを解決する方法があると言ったらどうする?」



 にやり微笑みながらクリスが言うと、兵士たちはゴクリと息を飲んでいた。



「その方法とは?」

「いや、詳しいことは俺が連れてきた人に聞いてくれ。それでどういう方針を取るか決められると思うからな」

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