対外政策
「良くやってくれた、ポポル。これで反乱の問題は解決したな」
国内にいる貴族たちを降してきてくれたポポルを労う。
しかし、彼女の様子はまだ晴れなかった。
「うん。ただ、このままにしておくわけにはいかないよね。一度謀反を引き起こしているのだから――」
「それはそうだな。どちらにしても領地を治める者は必要になる。適度に甘い汁を吸わせながら口出しをさせない方法がいるな」
「そこで貴族たちをまとめるのに使えそうな人を連れてきたよ」
「あぁ、あの人物か……」
少し後ろで頭を下げていた男に視線を向ける。
「うん、ケビンっていうの。ラグゥのところで反乱を起こしてた、そのリーダーよ」
「なるほどな。それでラグゥはどうした?」
「はっ、やつは他国に逃亡してしまいました」
「それだと本当にお前たちがラグゥの不正を正そうとしたのか、それとも一方的に襲ったのか区別が付かないぞ?」
「そのくらいでしたらアルフ殿下なら既に把握されているかと――」
なるほどな……。
口の利き方等、問題はありそうな奴だがうまく使えば有能そうでもあるな。
「それで、お前にはこれから貴族たちの取りまとめをお願いしたいのだが……できるか?」
「もちろんです。すぐにでもまとめさせていただきます」
ここまで従順な奴が今まで俺の下へ来なかったのには理由があるだろう。
その思惑と敢えてラグゥを逃した理由、その辺りは調べさせる必要があるな。
「とにかく今はゆっくり体を休めてくれ。何もないところだけどな」
「いえ、泥水を啜っていたときのことを考えたら、十分快適ですから」
ケビンの目に陰りが見える。
「それとポポルたちも良くやってくれた。イグナーツとマリナスだけではここまでの成果は出なかっただろう」
「えへへっ、私も久々に楽しかったよ。領内でこもっているだけっていうのも私の性に合わないからね」
「別に今まで通りにここにいてくれても良いんだぞ? ポポルのことだ。すでに領内は順調に回るようになっているのだろう?」
「まぁね。私もそのことを提案しようとここに向かってたんだよ。あとイグナーツともいたいしね」
「あぁ、俺としても助かる。ゆっくりしていってくれ」
「うん、ありがとうね」
ポポルは嬉しそうに返事をしてくる。
その後ろでマリナスはそっぽを向き、つまらなさそうにしていた。
「マリナスも助かったぞ。イグナーツだけだったら今頃どこに行っていたか……」
「あなたのためじゃないわ。シャロちゃんがどうしても、と言ってきたからだ。そこをはき違えないでよ」
「それでも、だ。欲しいものがあったら言ってくれ。準備させてもらうからな」
「それならシャロちゃんを――」
「さすがに俺が準備できないものはやめてくれ。でも、そうだな……。これならどうだ?」
俺が懐をまさぐって取り出したのはシャロのギルドでの食事券。
さすがに報酬と言うには安すぎる気がするが――。
ただ、マリナスの反応は信じられないようなものを見る目で俺のことを見てくる。
「ほ、本当に良いのか? こんな神々しい貴重な食事券を?」
「あぁ、もちろん構わないぞ。それで好きなものでも食ってくれ」
「っ!? そんなことするわけないでしょ! これは額縁に入れて部屋に飾っておくわ。シャロちゃんが頑張って書いてくれた券なんだから――」
「あ、あはは……」
もう乾いた笑みしか浮かべることができなかった。
さて、最後は――。
「イグナーツ、良くやってくれた」
「いえ、私は何もしておりませんゆえ……」
「そんなことないぞ。安心してポポルが交渉ごとに挑めたのは、後ろにイグナーツがいたからだ。そこは誇ってくれ」
「もったいなきお言葉です」
「お前にも何か贈りたいのだが――」
「いえ、私は任務を果たしただけです。そのようなものを受け取るわけには――」
「いや、ぜひ受け取ってくれ。むしろこれは命令だ!」
「は、はぁ……。かしこまりました。それで私めは何を受け取ったらよろしいのでしょうか?」
「もちろん服だ!」
イグナーツは今日も全裸だった。さすがに服のサイズがあっていないなら特注で作らせる必要があるだろう。
「我が肉体こそが最高の服で――」
「いや、そういうことを言いたいわけじゃない。そうだな……、せっかくだからポポルと一緒に見に行ってくれ。金の方は俺がどうにかしておくからな」
「わかりました。アルフ王子がそこまで仰るのでしたら――」
渋々ながらイグナーツは承諾してくれる。
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