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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第三章、国力を上げよう

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商人

 町にいる商人に会いに来た。

 相変わらず忙しそうにバタバタ動き回っているが、以前と違い疎らだが客の出入りがあった。



「あっ、アルフ様。いらっしゃいませ。今日はどのようなご用でしょうか?」



 商人が合間を見て声をかけてくる。



「わざわざ声をかけてこなくて良いんだぞ。それに前から思ったらずいぶん繁盛しているようだな」

「はい、アルフ様のおかげでこの町の人口も増えてきまして、その結果私どももずいぶんと儲けさせていただきました」



 商人がにやり微笑んでくる。

 こいつのこういう包み隠さないところは逆に好印象だな。

 俺も笑みを返す。



「それはよかった。商店もここくらいしかないもんな」

「いえ、ポツポツと名前だけ置いていた人たちがこの国に来ていますので、今は複数のお店が開いていますね」

「そうなのか……。なら競争が激化していきそうだな」

「えぇ……そうですね。ですけど、こうでなくては儲かりませんからね。店が増えるほど客が足を運んでくれます。後はそれをしっかりと捕まえるだけです」

「なるほどな。そういう考え方もできるわけだ」

「あとは、この町の技術者がもっと増えてくれたらものの仕入れ値がもっと下がるのですけど――」



 商人がちらっと俺の目を見てくる。



「そうだな。俺としても技術者は是非欲しいところではあるんだけどな。武器や防具などはもちろんのこと、日常品も色々と作ってもらわないといけないわけだから――。でも、中々良い人材がいないんだよな……」

「そう仰ると思って数人見繕っておいたのですよ」



 なるほどな。元々こっちの話に持っていくつもりだったわけだ。

 俺が今最も欲しいところを予測して……。



 ニヤニヤしている商人に対してため息を吐く。



 こいつはこいつで利益があるんだろうな。

 そうじゃないと俺に提案してくるわけがない。



「はぁ……、わかった。早速呼んできてくれ。まぁ、お前が連れてきてくれる人間なら大丈夫だろうが――」

「はい、畏まりました。すぐにこの国へ呼ばせてもらいます」



 嬉しそうに商人が笑みを浮かべてくる。



 さて、国内で今できることはこのくらいだろうな。

 あとはイグナーツの返事を待つだけだな。




◇■◇■◇■




 街道を歩いているイグナーツとマリナス。

 歩きながら、マリナスはグチグチと悪態をついていた。



「全く、なんであんたと一緒に出かけないといけないのよ!」

「がははっ、仕方ないだろう。これもアルフ様の手紙をしかと届けるためだ!」

「……そういえばそんなことを言ってたわね。全く、荷運びをイグナーツに任せるなんて、一体何を考えているのよ!」

「危険があるところだから仕方ないだろう」

「第一、その程度の依頼、私一人で十分なのよ! 手紙を渡しながら貴族をぶっ飛ばせば良いのでしょう?」

「ダメだダメだ! しっかり返事を聞かないといけない。ぶっ飛ばすのはその後だ!」

「……面倒ね。返事は『シャロちゃん最高!!』でいいでしょ」

「何でだよ! とにかく着いたら後のことは俺に任せておいてくれ!」

「はぁ……、そう言いながら全く別の方向に行かないでくれる?」

「おっと、すまない。無意識に行ってしまったようだ」



 勝手に道を逸れたイグナーツが戻ってくる。



「まぁ、イグナーツと二人きりなんてゾッとするから、さっさと終わらせるわよ!」

「あぁ、それは同意だな。俺もお前と二人きりなんて考えたくない」

「なに、やるの? 相手になるわよ!」

「今の俺を今までの俺と思うなよ! こう見えてもアルフ様の下で日々鍛えているからな」

「そんな暑苦しいのはごめんね。私はシャロちゃんと楽しく遊べたらそれでいいわ」



 マリナスがグッと握りこぶしを作り、イグナーツに向けて戦闘態勢を取る。

 それと同様にイグナーツも拳を構える。



「ちょっと待って!! 二人とも何をしているの!?」



 にらみ合っていると遠くから声が聞こえてくる。



「ポポルじゃない。こんなところに何をしに来たの?」

「たまたま王都へ向かおうとしていたところだけど……、それよりもどうして二人で戦おうとしているのよ!」

「それはだな……」



 イグナーツがポポルに対して説明をする。

 ただ、話を聞いていくとポポルの表情が険しくなっていく。



「はぁ……、そんなことで怒っていたのね」

「ねっ、イグナーツが悪いでしょ」

「何だと!? どう考えてもマリナスが――」



 イグナーツが返答しようとすると、ポポルが笑みのまま鉄扇で地面を叩いていた。



 ドコッ!!



 その威力はイグナーツやマリナスに比べると控えめで、お世辞にも強いとは言いがたかった。

 しかし、ポポルからは発せられる有無を言わさない雰囲気に、彼らは口を閉じていた。



「二人とも、正座」

「はぁ!?」

「こ、ここ、岩がむき出しになった地面……」



 ぽっかりと口を開いたイグナーツと地面を指さすマリナス。

 しかし、ポポルは依然として笑みを崩さずにもう一度地面を叩いていた。



「正座」

「はいっ……」



 その迫力に負けて、二人はポポルの前で正座をしていた。

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