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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第二章、三つ巴の戦い

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ブライトと魔王

 ブライト領は想像以上に酷い状況だった。

 建物は大なり小なり壊れており、傷がない建物がほとんどなく、人々はボロボロの服を身にまとい、たき火にあたり寒さをしのいでいた。


 こんな状況ではろくに食料も集められていないのだろう。

 そのあたりは支援する必要があるな。


 それも早急に……。

 そう思っているとブライトがやってくる。



「あ、アルフ様!? わざわざこの町にお越しくださったのですか!?」

「あぁ、色々と大変だったと聞いたからな」

「確かに少し大変でしたけど、アルフ様のおかげで助かりました」

「俺のおかげ……? 特に何もしていないと思うが?」

「いえ、アルフ様が賢者様をこの町に派遣してくださらなかったら、今頃この町は滅んでいましたので――」

「それはマリナスが勝手にしたことだ。俺は関係ない」

「はい、わかりました。そのように認識しておきますね」



 まぁ、勝手に俺がしたことだと思ってくれるのはいいことか。

 それにしても、以前と比べて妙に親しそうに話しかけてくるな。



「それより町の復旧はどうだ?」

「あまり芳しくないですね……。蓄えていた金を使って最優先で復旧に当たらせていますが、それでも全然足りない状況で――」

「わかった。金の面は気にするな。そちらは俺が何とかしてやる。それよりも一刻も早く民を安心させてやるといい」

「い、良いのですか!? で、ですが、それほどの額が今の王都にあるとはとても……」

「ドジャーノが蓄えていた分があるからな。王都としてはすぐにどうにかなるほど困っていない。それにこの件の費用は俺が出すわけじゃない」

「……? 一体どういうことでしょうか?」

「そのことはあとからゆっくり当人から聞くといい。段取りが付いたら連絡させていただく」

「……アルフ様がそう仰るなら――」

「あと問答無用で斬りかかるなよ」

「――そんなことしませんよ、相手が魔族じゃ無い限り……」



 その言葉を聞いて思わずため息を吐きたくなる。


 相手は魔族なんだけどな……。





 数日後、魔王が保証の金を持ってきてくれたので、そのまま俺はブライトに会いに魔王を連れて行く。

 もちろんとんでもないことにならないように、戻ってきたばかりのシャロ達とイグナーツ、さらにはポポルも呼び寄せて、一緒にブライト領へと向かっていく。



「あっ、アルフ様。っ!?」



 ブライトは一瞬笑みを見せるが、魔王の姿を見た瞬間にその表情は険しいものへと変わっていた。



「貴様、魔族か!!」

「我のことか? 確かに我は魔族だが――」

「っ!? なるほど、こういうことか。つまりはアルフ様……いや、アルフも魔族と組んでいたと言うことだな」

「ちょっとまて、ブライト。話を聞け!」

「問答無用! 魔族は死ね!!」



 ブライトが魔王に向かって斬りかかる。

 しかし、魔王はそれを涼しげな顔をして受け止める。



「残念だが、この程度の攻撃だと我は倒せないな」

「なっ!?」



 驚きの声を上げるブライト。

 そして、何とか剣を引き抜こうとするが、全く動く気配がなかった。



「おいっ、ブライト! まずは話を聞け!」

「魔族に与したやつの話なんて聞けるか!!」



 やはりまともに会話にならないか……。

 それなら仕方ないな……。



「どうしてこいつはこんなに怒っているんだ?」

「ぐっ、魔族がそれを言うか……。私の家族はお前たちに殺されたんだ……」

「ザッシュの被害者……ということか」



 魔王は少し考え込んだ様子を見せたあと、剣から手を離す。

 すると、無理矢理引き離そうとしていたブライトはそのままの衝撃で吹き飛んでいた。



「ぐっ……」



 ゆっくりと起き上がるブライトが目にしたのは、頭を下げる魔王の姿だった。



「すまない。私がしっかり魔族の手綱を握れなかったばかりに――」

「そんなことをしても私の家族はもう帰ってこない……」

「わかっている。だからこそすまなかった――」



 魔王のその姿を見たあと、ブライトは剣を収める。

 そして、背を向けていた。



「わかった。この町の支援もその魔族がしてくれるってことなんだろう? 確かに悪いのはあの魔族だけだ。ただ、私の気持ちはそれだけでは収まらない……。しかし、それと同時に私も罪人だ。アルフ様には色んな迷惑をかけてしまった。……私はここにいない方が良さそうだな」



 それだけ言ってブライトは去って行こうとする。

 確かに以前裏切った貴族の一人だ。いない方が安心できることも確か。


 しかし、本当にこのまま行かせてしまって良いのだろうか?


 そう思っていたときにシャロが一歩前に出て声をかける。



「そのまま行ってしまうのですか? この町の復興を見届けずに――」

「……っ!?」



 予想外の人物から声をかけられたからか、ブライトは声にならない声を上げて立ち止まる。



「せめて、この町が元に戻るまでは手を尽くすべきじゃないでしょうか? それが領主……というものですよね?」

「し、しかし、魔族の援助を受けてまで――」

「それなら私のお願いを一つ聞いてくれる……というのをここで使わせてもらっても良いですか? 復興に手を貸してください」

「ぐっ……。た、確かにそういう約束はしたが――」

「それに魔族……というのなら私も魔族ですよ?」

「な、なにっ!? し、しかし、見た目が――」

「見た目だけで判断しないでください! 魔族にも色んな人がいるのですよ……」

「ぐっ……、わ、わかった。約束は守らせてもらう。それからあとのことは……少し考えさせてくれ」



 それだけ言うとブライトは領地の方へと向かって歩いて行った。

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