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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第二章、三つ巴の戦い

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ブライトvsザッシュ

 マリナスからとんでもないことを聞いたシャロは慌てて旅の準備を始めていた。

 それを見ていたマリナスは「慌てるシャロちゃんも可愛いなぁ」と呟いていたが、そんなことを気にする余裕すらなかった。


 そして、一通り準備を終えると、何か忘れていそうな気はするもののとりあえず旅立つことになる。



「とりあえず国境近くまで向かってみる感じですね」

「えぇ、そうね。でも、シャロちゃんは一応気をつけてね。魔族ってことはばれないと思うけど、いざって時は全力で魔法を使って相手を潰すから」



 目を輝かせながら「潰す」と言うマリナスにシャロは苦笑を浮かべながら「あまり無茶をしないでくださいね」と呟いていた。



「しゃ、シャロちゃんが私のことを心配してくれている……」



 マリナスはシャロのその言葉に、恍惚の表情を浮かべていた。

 ただ、それもいつものことなので、シャロは歩く速度を変えずにそのまま先へと進んでいく。



「マリーさん。先に行ってしまいますよ」

「あーっ、ちょっと待って。すぐに追いつくからー」



 おいていかれそうになったマリナスは慌ててシャロを追いかける。

 そして、すぐ隣を歩いていると再び笑みを浮かべるのだった。



◇■◇■◇■



「ブライト様、た、大変です!」



 書斎で仕事をしていたブライトの下に慌てた様子の兵が入ってくる。



「どうした! なにかあったのか?」



 息を切らせ、必死にやってきたのであろうその様子に違和感を感じたブライトは真剣な眼差しを兵士の方へ向ける。



「は、はいっ、実は魔族が……」



 兵が言葉を発しようとした瞬間に「ドガァァァン!!」と外から爆発音が聞こえてくる。



「――誰が襲ってきた」

「魔族です! 数は一」

「わかった。すぐに兵士長に連絡を! 町の住民を最優先に守れ!」

「ぶ、ブライト様は!?」

「私も出る! このときのために鍛えてきたのだからな」



 ブライトは剣を握るとにやりと微笑む。

 それもそのはずで、ブライトはいつか宿敵の魔族を滅ぼすために自身の鍛錬も欠いたことがなかった。

 それは兵士達も知っているので特に反対することもなく、敬礼をするとすぐに兵士長を呼びに行ってくれる。


 それを見たあとにブライトは町へ向かって駆けだしていた。





 町の状況は酷いもので、のんびりとした心地よい雰囲気はそこにはなく、至る所から火の手が上がり、子供の泣きわめく声や、道で倒れている人が否が応でも視線に入ってくる。


 それを見たブライトは握る拳に力が入る。



「くっ……、私の民達を――。魔族め!!」



 周囲を必死に探り、どこに魔族がいるのかを探す。

 するとちょうど領地の南の方から再び爆発音が上がっていた。



「あっちか!」



 必死に駆け出すブライト。そこで必死に民を守っている警護の兵士達と空を飛ぶ魔族の姿があった。



「ブライト様!? こ、ここは危険です! お逃げください!」

「いや、私も戦うぞ!」



 剣を抜くブライト。

 ただ、空を飛んで魔法を放ってくる魔族にはそれでは、どうしても相手にならなかった。



「だ、駄目ですよ! やつの魔法を侮っては……。この町を一瞬で火の海に変えられてしまったのですから……」

「し、しかし、私は魔族を倒すために――」

「くくくっ、今更人間(ごみ)が一人増えたところで変わらん。皆殺しにしてやるだけだ」

「ど、どうしてこんなことをするんだ?」

「……ラグゥ様から頼まれたこともあるが、そんなの楽しいからに決まってるだろ。馬鹿か?」

「なっ!?」



 きっぱりラグゥの名前を挙げてくる。

 やはり、魔族と手を組んでいたのは彼だったようだ。そして、自分が邪魔になったので消しに来たわけだ。

 ただ、この魔族は人を殺すのが楽しいとはっきり言い切ってきた。

 やはり、どうやっても人間と魔族は相容れぬ存在のようだ。

 そして、この魔族、どこかで見覚えがあるような気がした。



「……んっ? お前、どこかで――。あぁ、そうか。お前はあのとき目の前で子供と女を殺してやった――。くくくっ、今度は自分が殺されに来たのか?」



 魔族の男は口元をつり上げて笑みを浮かべていた。

 しかし、ブライトはその言葉を聞いて、表情が変わる。


 怒りのあまり、剣を持つ手に力が入る。



「お前が私の家族を殺したのか!!」

「あぁ、そうだ。――もしかして、私のことを忘れていたのか? まぁ、どっちでも良いけどな」



 家族を殺された日のことははっきりとは覚えていなかった。

 霞がかっているというのが正しいだろうか。

 しかし、そうでもしないとブライトの心が壊れてしまっていただろう。


 結局自己防衛するには一部の記憶を消すしかなかったのだった。



「それにしても、家族を私に殺されて、その上自分も殺されるなんて、どういう気持ちだ?」



 魔族は楽しそうな笑みを浮かべていた。



「じゃあそろそろ殺すか!」



 魔族が手にさらなる魔力を溜めて、全力の魔法を放とうとする。

 その瞬間に突然何かが魔族を打ち抜いて、魔族は血を吐いていた。

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