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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第二章、三つ巴の戦い

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農家の依頼

 ザッシュは書かれていた手紙を一通り読むとにやり微笑んでいた。



「相変わらず、ラグゥ様は。そんなに私を楽しませたいのですか?」



 にやりと微笑むザッシュ。

 その足下には先ほど手紙を届けてくれた兵の死体が転がっていた。

 兵だった……というのが正しいかもしれない。

 すでに原形をとどめていないそれを、思いっきり踏みつけたザッシュは顔に手を当てて、嘲笑を浮かべる。



「いいでしょう。しっかり報酬はいただきましたからね。その分の仕事はやりましょう。ブライト……という人物を殺ればいいのですね? んっ? どこかで聞いたことがありますね……? ……まぁ、大したことがないでしょう。所詮は人間(ゴミ)なのですから――」



 手紙には地図も添付されており、そこに目的地がしっかりと書かれていた。

 一応ターゲットの顔が描かれた紙も入れられていたが、それは見ずに捨てていた。



「せっかく暴れられるんですからね。一人と言わずに全員を消すくらいのつもりで相手にしましょうか」



 ゆっくりとその姿が魔族の物に変わっていくザッシュ。

 頭には禍々しくねじれた角が、背には漆黒の翼が生える。



「魔族国でも人間(ゴミ)を殺すと犯罪だからな。魔王は温すぎる。ただ、今は力を貯める時期だ。なるべく無駄な力を使わないようにしていたのですが、たまに娯楽がないと飽き飽きしてしまいますからね。その点、ラグゥ様はとってもよくわかっていらっしゃる。人間(ゴミ)は使い捨て。私の贄として使い、仕事の依頼をしてくださるので、よくわかってるお方だ。では、早速仕事をしましょうか……」



 ザッシュは高く飛び上がり、そして、ブライトの領地へ目指して突き進んでいった。



◇■◇■◇■



 ユールゲン王国の冒険者ギルドでは今日も相変わらずのんびりとした空気が流れていた。

 それも、依頼をこなしてくれる人がかなり増えて、前日までに届けられた依頼は朝一番に全てとられていくようになったからだ。

 依頼の数がどんどんと足りなくなってきているので、シャロは更に依頼を取るために町の様子を探っていた。

 すると、農家の人たちが不安そうに相談し合っていた。



「すみません、何かあったのですか?」

「これは冒険者ギルドの……。実は、農作物を外国へ売りに行く商人が中々来られなくて少し心配していたのですよ」

「商人さんが? それは珍しいですね。いつもは時間厳守されているのに……」

「そうなんですよ。それで何かトラブルでもあったのかと思いまして……」

「なるほど……。マリーさんはどう思いますか?」



 シャロは後ろに付いてきていたマリナスに確認をする。



「そうね。今日のシャロちゃんもかわいいね……」

「もう、そういうことを聞いてるんじゃないですよ!」

「その頬を膨らました顔も良いねと言うことでもないのか……。まぁ、魔物でも現れたんじゃないかしら?」

「やっぱりトラブルですか……。商人の方はどこから向かわれているかわかりますか?」

「東のミグルド共和国から来ているみたいです」

「……わかりました。私たちがちょっと調べてきますね。それで問題がありそうならギルドの依頼として、危険な魔物の討伐を頼んでみます」

「……よろしくお願いします」



 農家の人が深々と頭を下げていた。

 しかし、マリナスは首をかしげていた。



「大丈夫なの? ギルドをしばらく開けることになるけど……」

「最近は受付の人も増えたし、料理人の人も雇うことが出来たから、問題はないですね。それにみんなをまとめるのはハーグさんがしてくれますから……」

「……私はもちろんシャロちゃんに付いていくわよ? 誰か護衛の人が居るでしょう?」

「えぇ、よろしくお願いしますね」

「任せて! お礼は戻ってきてからシャロちゃんがハグしてくれたら良いからね」

「……わかりました。そのくらいなら今しましょうか?」



 シャロはゆっくりとマリナスに近づいていく。

 するとマリナスは顔を真っ赤にして、よだれを垂らしながら、息づかいを荒くしていた。



「ちょ、ちょっと待って……。そんなことをしたら私、身動きがとれなくなっちゃうから……。あとで……、うん、依頼が終わってからあとでいいわ」

「そうですか。わかりました」



 シャロが離れるとマリナスは大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着けていた。

 その間も顔は真っ赤にしたままで、冷静とは言いがたかった。



「そ、それよりも調査に行くのなら早く出発しましょうか?」

「で、でも、私はまだ何も持っていませんよ?」



 町の中を見て回るだけのつもりだったので、シャロの持ち物は小さな鞄一つだけだった。



「えっ? 調査に必要な物なんて何もないでしょ?」

「ど、どうしてですか? 水とか食料の準備がいりますよね?」

「食料は現地でとれるでしょ? その辺にいるから――」

「……いる?」

「えぇ、魔物が――」



 マリナスが微笑むが、シャロの表情は固まっていた。

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