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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第二章、三つ巴の戦い

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ラグゥとブライト

 ユールゲン王国、最東に位置するラグゥ領。

 東を温和な友好国、ミグルド共和国。

 南は海。

 北はかなり距離があるものの帝国に挟まれている王国内でも平和な領地である。


 人々はのんびりした様子で、共和国からの通商でかなり利益を得ている地でもある。


 ただ、そこに住む領民たちは知らない秘密が領主ラグゥにはあった。



「くくくっ、全く愉快そのものだな。王国の金の一部を貰い、その後の内戦は傍観する。儂の地まで襲ってくる頃には、すでに弱っていて虫の息というわけだ」



 兵士の報告を受け、ラグゥは笑わずにはいられなかった。



「それにしてもドジャーノは捕まって、魔族領に送られたようだな。助けることも出来るが、そこまでする義理もないだろう。それに今頃、色物好きの魔族に面白おかしく遊ばれている頃だろうな」



 ユールゲン王国国内の地図を広げ、ドジャーノ領があった場所に×印をつけていた。



「まだまだ数は多いな。ただ、勝手に滅ぼし合ってくれて最終的には私の領となるわけだからな。のんびり待たせて貰えば良いな。唯一障害になるとしたらブライトか……。奴は民にも好かれていて、その兵も屈強。まともに当たれば儂だとまず相手にならないからな。まぁ、奴の弱点もはっきりしている。そうなるように仕向けたわけだからな。大金を使ったのに奴本人を殺れなかったのは不服だったが」



 まぁ、そのおかげで奴に魔族を絶対に許さないという弱点が出来たことは喜ぶべきことだろう。

 それがなかったら、今でも王国を裏切るような奴ではなかったしな。

 ……そうだ、せっかくだからな。アルフ王子が奴の家族を殺したという噂でもばらまいてやろうか。

 そうすれば、奴は我らの方に付いてくれる。

 いざというときでも儂の命が守れるからな。


 笑みを浮かべるラグゥ。

 すると、そのタイミングで部屋の扉がノックされる。



「ラグゥ様、お時間よろしいでしょうか?」

「何かあったのか?」

「いえ、ブライト卿の使者という方がお見えになりました。いかがしますか?」

「ちょうどいい。応接間に通しておけ」



 これは天の導きだろうか?

 ちょうどいい。あることないこと含めて教えてやるか。

 王国最強の三人をそろえたアルフ王子と堅実なブライト。

 果たして、ぶつかったときにどっちが生き残るんだろうな……。


 にやりと口をつり上げながら、準備を整えたラグゥは応接間へと向かっていった。



◇■◇■◇■



「ほう……、もうラグゥのところから使者が戻ったのか? やけに早いな……」

「はいっ、どういうわけかラグゥ様にはすぐに会うことが出来たらしいので、かの領地で泊まることなく、すぐに戻ってこられたみたいです」

「忙しい人物だから、普通に合うなら数日はかかると言われているのにな。まぁよい。それで奴の反応はどうだった? すぐに使者を呼んでくれ」



 ブライトは領地に戻った後、すぐに使者を送ったのだが、それがあまりにも早くに返ってきたので、驚きを隠しきれなかった。

 そして、すぐにラグゥ領へと行った使者がやってくる。



「お待たせいたしました」

「あぁ、問題ない。それよりもラグゥの様子はどうだった?」

「それが……、少々問題がありまして――」



 使者が深刻そうな表情を見せる。



「何があった?」

「はいっ、ラグゥ様が仰るには、魔族を裏から操っているのは王子アルフ様……とのことです。その理由もしっかりしていて、私には何が正しいのかわからなくなってしまって……」

「そのあたりは最終的に私が判断する。理由を話してみろ」

「は、はい。ラグゥ様が仰るには、『元々アルフ様は国を貶めた貴族たちを許すつもりはなく、そのために我らの内戦を誘っている。そのためには手段を選ばずに、裏で魔族とつながっていることも確認している。その証拠が今、ドジャーノが魔族領にいることだ』というみたいです」

「……っ!? ドジャーノは魔族領にいるのか?」

「はいっ、それは間違いないようです」

「……それなら王子が嘘を? いや、ドジャーノの処罰として、無理矢理魔族領に送り込んだ可能性もあるな。どちらが嘘を言ってる?」



 ブライトは真剣な表情をして考え始める。

 確かにブライト自身もアルフ王子が魔族とつながっている可能性を考え、直接王都へと出向いた。

 その結果、王子は誰ともつながっていないことを確認したはずだ。

 ただ、裏でつながっているならそれは調べようがない。


 しかし、それは今のことで、王子が示したのは過去のことだ。

 我が妻や子を殺した魔族をけしかけた人物……。果たしてそれが誰なのか……。


 いや、さすがにそのときは王子は留学していた。

 その状態で策を巡らすはずがないか。


 つまり、嘘をついているのはラグゥの方か。


 全てを理解したブライトは使者に更に情報を聞く。



「それでラグゥの様子はどうだった? 何か変わったところはなかったか?」

「そうですね……。領内は平穏そのものでしたね。ラグゥ様も急いでいる様子もなく、穏やかな雰囲気でした」

「なるほどな……。わかった、助かったぞ」

「はっ、では私は失礼します」



 使者の男が出て行った後、ブライトは再度考える。



(交易の要になるから慌ただしい毎日を送っているラグゥが穏やかだった? それこそが異常だな。いつも通りにいられない事情があったとみるべきだろうな)

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