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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第二章、三つ巴の戦い

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貴族たち

 アルフが戻ってくる一年ほど前。

 ユールゲン王国の今後について、貴族たちが集まって話し合っていた。



「誰か、この中で次の王になりたいやつはいないのか?」

「誰がそんな貧乏くじを引くか! どうせ、お前たちの傀儡として働かされて、用済みになると同じように消されるんじゃないのか?」



 貴族の一人が大声を上げると、他の人物たちも無言で周りを見渡していた。


 こうやって、国を凋落させようとしている人物を信用できるはずもない。

 結局誰も国のトップに名乗り出る人物はいなかった。



「……仕方ない。こうなっては長の国王だけはそのまま残ってもらうか。幸いなことに今はちょうど病に伏しているからな。国として機能しないように必要な物は山分けしてからな」



 貴族の一人がにやりと微笑む。

 それをみた他の貴族も同様ににやり微笑む。



「なるほど。反乱されないように、金目の物は奪って……、いえ、保管しておくのですね。それも必要なことですもんね」



 金のことばかり話している貴族たちに、ブライトは嫌気がさして、冷たい視線を向けていた。


 国の金を奪うだけなら住民たちにはそれほど影響が出ないだろう。

 国のサポートがなくなるだけで……。


 だからこそ、腕を組み、目を閉じてこの面倒な会合をやり過ごそうとしていた。

 すると、貴族の一人がとんでもないことを口にした。



「城下町に住む奴らが反乱しても鬱陶しくないか? 町も少し壊しておくか?」

「おぉ、それもそうだな。適当に壊しておくか」



 ど、どうして、関係ない民たちも襲うんだ……。


 ブライトは慌てて立ち上がる。



「ちょ、ちょっと待て!! わざわざ襲う必要はないだろう!!」

「いや、後ろから刺されたらどうするんだ? 奴らは容赦なく狙ってくるぞ」

「……わかった。付いてくるやつは全員俺が引き取ろう。人数さえ減れば、無用に襲う必要もないだろう」

「くくくっ、そんなことを言って、何人がお前に付き従っていくかな」

「やれるだけのことをやるさ。むざむざと殺させないためにもな」



 ブライトが背を向けると、更に貴族が鬱陶しさを感じさせる声を出してくる。



「ブライト卿が民を選ぶというのなら、金の配分はもういらないと言うことでよろしいのですね? 何事も平等に分ける……と言う話でしたので」

「――勝手にしろ!」

「かしこまりました。あと、この国には魔族が出入りしているという情報もあります。本当にここにいる民が人間なのか……それをしっかりと調べておく必要はあるかと思いますよ」

「……なにっ!? 本当に魔族が?」



 ブライトの表情が険しい物に変わる。

 すると、貴族の男がにやりと嫌らしい笑みを浮かべる。



「あぁ、元々この国はすぐ近くに魔族領があるだろう? つまり、いつ来ても仕方ないわけだ」

「……わかった。もし魔族を見かけたらそのときは――。俺はここの人だけ集めたらあとは関与しない。魔族を野放しにする統治者なんて、用済みだからな」



 ブライトが握りこぶしを作ると、それを側に置かれたテーブルへ落とす。

 激しい音を鳴らすテーブル。


 しかし、それを気にした様子はなく、ブライトはそのまま部屋から出て行く。


 そして、ブライトは必死に王都の人間を説得して、自身の町へと案内した。

 その後に貴族たちが、まるで暴徒のように金目の物を荒らし回ったが、そこにはブライトは混ざらずに、先に自身の領地へと戻っていった。



◇■◇■◇■



「ブライト様自身は町を襲う加担はしていないのですが、どうしても魔族と聞くと人が変わられるお方なので――」

「そういうことか……。民に好かれているならなんとかして手を貸して欲しかったのだが――」

「この町に魔族がいる限りまず無理だと思います。特にその……」



 ジャグラの方を向くブライト兵。



「あぁ?」



 ジャグラが少し威圧すると、すぐに怯えて首を横に振っていた。



「そうなると、襲われる前に対処するしかないな。いや――」



 ようするにやつが魔族を倒せたと思えば良いのか。

 それも俺の協力があって、なんとか倒せた……と。


 同じ魔族を憎む者同士……と思わせればブライトも協力を申し出てくるはず。


 魔族嫌いの部分以外はまともそうなやつだからな。せいぜいうまく使っていこう。


 俺が口をつり上げて笑っていると、ブライト兵は首をかしげてしまった。



「ありがとう、助かった。とりあえず、あとはシャロの手伝いをしてやってくれ」

「も、もちろんです! 料理を食べるために……」



 そこまで話し終えた俺は、そのまま城へと戻っていく。

 どうやってブライトを懐柔して、そして、どこで切るかを考えるために――。

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