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貧乏国家の黒字改革〜金儲けのためなら手段を選ばない俺が、なぜか絶賛されている件について〜  作者: 空野進
第二章、三つ巴の戦い

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ジャグラとリナ

「本当に聖女様を魔王討伐に出してしまってもよろしかったのでしょうか? あれだけの浄化魔法の持ち主、早々見つかりませんよ?」



 リナが旅立った後、巨大な神殿の中で神官服の若い青年が、少し高そうな服に身をつつんだ神官長に尋ねていた。



「それでいいのですよ。今は前聖女様が浄化魔法を使えます。それも現聖女様よりも遙かに強力な魔法を……。だからこそ、聖女様には我が教会の名を上げてもらうために、無理をしてもらうことにしました」



 神官長がにっこりと微笑む。



「と言いますと、やはり魔王を倒してもらってってことでしょうか?」

「まさか、まだ六歳の少女だぞ? しかも、浄化魔法の適性はあるとはいえ、まともに使い方すら知らないやつだ。そんなやつが魔王を倒せるとでも……。いや、魔王の居所に到達することすらできないだろう」

「そ、それじゃあ、むげに聖女様を旅出たせただけ……ということで、教会の名誉は落ちてしまうのでは……?」

「いや、そんなことはない。例えば、聖女様はその身を犠牲にして、魔王の卑怯な罠から我々を守ってくれたとか、言い方は何とでもなるだろう」

「な、なるほど……」

「本当は路銀も無駄になるわけだから減らしたかったが、まぁそこは信者どもを騙すために必要だったと割り切るしかないな。将来的には、今回のことが気にならないほどに収入を得ることができるわけだからな」

「し、しかし、次の聖女様が見つかるかどうか……」

「そんなもの、簡単に見つかるであろう。どうせ、適当に浄化魔法を使えるやつを任命すれば良いのだからな。それよりも、現聖女が死んだ後の美談を考えておけ。なるべく涙を流せるものが良いな」

「は、はっ!」



 神官長が高笑いを見せる中、青年はなんともいえない気持ちになっていた。



◇■◇■◇■



「それで、これからどうするんだ?」

「……どうしよう」



 リナが顔を伏せていた。



「元いた国に帰るのはどうなんだ?」

「……もう路銀は使い果たしてしまったの。片道分のお金しかなかったみたいで……」

「……それ、元々お前が無事に帰ってくると思われてないんじゃないか?」



 呆れた様子で伝えるジャグラ。

 すると、リナは必死に首を横に振っていた。



「そ、そんなことないはずです……。だ、だって……」

「でも、今の状態がそうだからな。とりあえず、俺が借りている宿に来るか? まぁ、金には余裕があるからな。宿代くらい払ってやる」

「えっと、い、いいの?」

「あぁ、そのくらいしかできないけどな」

「あ、ありがとうございます」



 リナが頭を下げてくると、ジャグラは頭を軽くかいていた。





「はぁ……、何でこんな風になったんだ……」



 ジャグラは隣で、すやすやと眠るリナを見て、ため息をはいていた。

 一緒の宿に来るか……っていうのは、ジャグラ的には別の部屋を借りて、そこに泊まってもらうつもりだった。


 でも、リナが「ジャグラさんと同じ部屋で良いです」と言い切ってしまい、今の状況になっていた。


 流石にこんな小さな子供を放っておけないと思っただけなのに……。



「このまま放っておいても、こいつは飢え死にしそうだし、仕方ないか。なんとかこいつがしっかり食っていけるようにしないとな。……子供にできるようなことはあるのか?」



 ジャグラは頭を捻らせるが、結論は出なかった。



「仕方ない。明日にでも、ポポルに相談するしかないか。それでもダメそうならアルフに押し付けても良いだろうしな。俺に仕事を押し付けてくるんだし、そのくらいのわがまま、聞いてもらえるだろう」





 翌日、まずは朝早くから畑のほうへと出かける。

 さすがに、リナはまだ寝ているだろうなと思っていたのだが、ジャグラが出て行こうとした瞬間に目を覚まし、眠たそうに瞼をこすりながら言ってくる。



「んっ? もうお出かけするの?」

「あぁ、ちょっと畑の様子を見にな。まだ朝も早いから寝ておくと良いぞ」

「ううん……、一緒に行く……」



 ふらふらとした足取りでジャグラの後を追いかけてくるリナ。


 前から人が来るとぶつかりそうになっていたので、さすがに心配になり、背中に乗せる。



「わっ……」

「良いから寝ていろ。そんなちんたら歩かれても迷惑だ!」

「う、うん……」



 小さな声で嬉しそうに頷くと、ぎゅっと両手をジャグラの体に回していた。

 そして、そのままあっという間にリナは眠ってしまっていた。


 その様子に苦笑しながら、畑にたどり着いたジャグラは一通り作業を行っていく。


 さすがに、その途中で目が覚めるだろうと思っていたが、結局リナは昼前になっても目が覚めなかった。



「もしかして、あまり寝られなかったのか? 俺が寝る前はもう寝ていたはずだが……?」



 こんな歳で一人、馬車を乗り継いでこの国に来たらしいからな。金もほとんど持っていなかったし、ろくなものも食べていないだろう。

 よほど疲れていたんだろうな。


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