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番外編 エリック王子の秘密2

俺はスズコ様と世間話をしていた。


ラウルも俺の隣に腰掛けてその様子を見守っている。親父は三人で話したらいいと言って執務室を出ていた。俺が親父と実際に呼んだらあの王の事だ。ゲンコツを食らわされるのは目に見えている。

「……どうかされましたか?」

スズコ様が小首を傾げてきいてきた。

「ラウル叔父上。スズコ様と二人きりにさせてください。お願いします」

「……エリック様?」

ラウルが訝しげに眉を寄せた。まずい、怪しまれてるな。

「あの。スズコ様にききたい事があって。後で叔父上にだけは説明します」

「はあ。わたしにだけは話していただけると。仕方ないですね。わかりました」

「ありがとう。叔父上」

俺が素直に礼を言うとラウルは頭を軽く撫でてきた。「礼はいい。じゃあ、失礼します。母上」

ラウルは母君であるスズコ様に頭を下げた。

「ええ。悪いわね。ライザー様とレアン様には私が王宮にしばらく留まる事はあなたから伝えて。お願いするわ」

「わかりました」

ラウルは頷くと執務室を出ていく。足音が遠ざかるとスズコ様は防音と防御魔法をかけた。俺は驚いて彼女を見る。

「あ。今更驚く事じゃないやろ。エリックさん」

「……スズコ様?」

「めっちゃ驚いとうやん。そんなにあたしが関西弁なの意外?」

こくんと頷いた。見かけがミステリアスな美人なだけに。

「はは。面白い子やね。それはそうとあたしと二人っきりにさせたのは何で?」

「……スズコ様にどうしてもききたい事があるんです。あなたは異世界からいらっしゃいましたね?」

単刀直入に切り出すとスズコ様は少し目を見開いた。

「……そうや。あたしが異世界から来たんはほんまや。後育った国は日本。今時の言葉で言うんやったら異世界転移っていうのをしたことになるな」

「やっぱり。もうひとつ聞いてもいいですか?」

「かまへんよ」

俺は深呼吸をした。

「……『華やかなる貴公子たち〜フォルド王国物語〜』ていう乙女ゲームをご存知ですか?」

「フォルド王国物語なあ。うーん。友達がめっちゃ好きでやってたわ。あたしも興味持って買うたけど。確か、全員のトゥルーエンドは見たかな」

「そうだったんですか。だったら話は早いですね」

「エリックさん?」

「スズコ様。俺も日本に住んでいたんです。そこでは女でしたが」

スズコ様は驚いて先ほどより大きく目を見開いた。

「……ええっ。エリックさんもあたしと同じ日本人?!」

「だったと言うべきでしょうね。俺、わたしは今はこの通り男ですが」

「ふうん。てことは前世が日本人やったいうこと?」

「そうです」

俺は頷いた。そしてスズコ様に前世の事とフォルド王国物語の事を順を追って説明したのだった。


「……なるほどな。あのシェリアちゃんを助けたいと。そのためにラウルにシェリアちゃんを好きにさせた方が都合がええと」

「まあ、言い方は悪いですが。そういうことになりますね」

「でもうちの息子にあんたの婚約者盗られる事になるんやで。それは平気なん?」

スズコ様もとい鈴子さんは心配そうに俺に尋ねた。俺はゆるゆると首を横に振る。

「いいんです。俺はシェリアちゃんに幸せになってもらえたら構いません。主人公と俺が結ばれたとしても。まあ、主人公のアリシアーナに何か問題があったらシェリアちゃん以外の女の子を選びますし」

「なんや、エリック君四歳には見えへんな。わかった、ラウルにはあたしとあんたの事は話しとく。任しとき」

鈴子さんが力強く言ってくれた。俺はホッと胸を撫で下ろす。

「ありがとうございます。鈴子さんが協力してくれたら俺としても助かります」

「ええんよ。エリック君、ラウルもほんまの事話したら協力してくれると思う。ライザー様とレアン様にもな、話したらええんとちゃう?」

「……そうですね。検討してみます」

俺が頷くと鈴子さんはにっこりと笑う。よしよしと頭を撫でられた。

「エリック君。これから頑張ろうな」

「はい!」

勢いよく返事をすると鈴子さんは「んもう可愛いわ!」と言って抱きしめてきた。あ、いい香りと柔らかな物が顔に……。

俺は現実逃避しかけた。けど、鈴子さんって何で俺が返事しただけでこんなリアクションを起こしたのだろう。不思議だ。

「……母上。エリックに何をしてるんですか?」

背後から冷たい気配がして俺は固まる。声はラウルのものだった。

「あ。ラウル。んもうええとこやったのに。いけず」

「母上。関西弁になってるよ。直したんじゃなかったっけ?」

「ええやん。別に。エリック君とラウルを交換したいわ。もう可愛げがなあてなあて」

鈴子さんは言いたい放題である。ラウルの周りの温度がまた低くなったような気がした。

「……は・は・う・え?」

「……わかった、わかった。もうエリック君を離せばええんやろ」

そう言ってやっと俺は解放された。ふう、危うく昇天しかけるとこだった。

「ちぇっ。もうちょっと堪能したかったのになぁ。ラウルが邪魔するからや」

「な。僕のせい?!」

「そうや。ラウルが止めへんかったらエリック君を離さんですんだのに。せっかく可愛い子を見つけられたのになあ。残念や」

鈴子さんとラウルは睨み合う。既に俺は離れている。ラウルが何故か俺を背中に隠していた。

「母上。ショタコンなのもいい加減にしてくれよ。エリックが困ってるだろ。あーあ、陛下はいないし。僕が一番しわ寄せ食らってるよ」

「……叔父上。なんかわかんないけど。ごめん」

「エリックが謝る事はないよ。悪いのは母上だから」

ラウルはそう言って俺に優しく微笑んだ。うわー、激レアな本物の笑顔だよ。

「ラウル。何、あたしのことを悪者扱いしよるんよ。酷いんとちがう?」

「ひどくはないよ。エリックに無断で抱きついた母上が悪い。陛下が見たら不敬罪で捕まりかねないのに」

「んもう。すぐ、そんな堅いこと言う。でもまあ。エリック君。いきなり驚かせたのは謝るわな。ごめんな」

鈴子さんは申し訳なさそうにしてきた。ラウルもため息をつく。

こうして俺は鈴子さんとラウルという味方を得る事が出来たのだった。



その後、俺は鈴子さんとラウルと自室や王宮の裏庭で密かに会い、話し合いをするようになった。俺が前世でフォルド王国を全コンプリートしてバッドエンドもやり尽くしていた事や第二弾も出ていた事を話した。

最初、ラウルは俺が前世の記憶持ちである事に非常に驚いていたが。母である鈴子さんが異世界からの転移者である事は知っていた。それを俺も聞いたと言うとならばと彼の方から協力したいと申し出てくれた。

「ふうむ。あたしが説明聞いてからもう一年経ったな。ラウルも九歳、エリック君が五歳か。早いわあ」

「そうだね。鈴子さん、シェリアちゃんの方はどうですか?」

「ああ。シェリアちゃんは特に変わりはないよ。ラウルとも王宮で会って仲良うしてくれとるし」

そっかと聞いて安堵する。このまま行けば、ラウルとシェリアちゃんが想い合うのも時間の問題だ。シェリアちゃん、まだまだ困難はあるが。ラウルと仲良くしてやってくれよ。

「……エリック。それで。アリシアーナ殿の事だが」

「ああ。そうだった。どう、調査の方は」

「まずまずだな。アリシアーナ殿も君と同じく前世の記憶持ちらしい。変な事を口走ったりしていると報告があった」

成る程と俺は納得する。同じ記憶持ち、しかも日本人だったならこちらに取り込めば優位になるな。

「わかった。叔父上、今後も何かあれば報告してほしい」

「そうする。じゃあ、母上。そろそろ帰ろう」

「そうやな。バイバイ、エリック君」

「うん。バイバイ。鈴子さん、ラウル叔父上」

「また来るよ」

二人は言いながら裏庭を去っていく。俺は見送ったのだった。

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