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番外編 エリック王子の秘密1

俺には前世といえる記憶があったりする。


俺はかつては異世界の日本という国ー魔法や魔術などは一切存在しない所で生まれ育った。この日本は平和で豊か、科学技術が非常に発達した国だった。

現代文明といえる時代で俺は暮らしていたが。発明品がたくさんあり便利な物が溢れていた。

そんな俺は日本のごく普通の一般人で女だった。年齢は確か28歳くらいだ。

享年もそれくらいだといえる。職業はしがないOLー会社員だった。

そんな俺ことわたしはこの時独身で一人暮らしをしていた。彼氏はおらず、毎日ラノベやゲームにお金と時間を費やした。ネットでの二次創作の小説も読み漁っていた。

そんなゲームの中でお気に入りだったのが「華やかなる貴公子達~フォルド王国物語」であった。ちなみにわたしはこのゲームにどっぷりはまり込み、ヘビーユーザーとなっている。けど自分がいつ死んだのかははっきりと覚えていない。多分、二十八歳以降の記憶がないので享年はそのくらいだろう。

そして、前世の記憶を思い出したのはわたしが三歳の時だった。きっかけは婚約者候補だとしてシェリアたん、いや彼女が王宮に来て引き合わされた事だ。

いきなり、シェリアの顔を見た途端、大量の情報が頭の中を駆け巡った。だが、三歳児の体には過剰な負荷が掛かったらしい。キャパオーバーを起こしてわたしー俺はぶっ倒れた。周りが大騒ぎする中で俺を涙を溜めた目で悲しげに見つめてくるシェリアたんが最後に視界に入る。ごめんなさいと呟きながら意識を手放した。



目覚めた後、俺は必死こいてシェリアたんや攻略対象、主人公のアリシアーナの事などを思い出した。まず、フォルド王国物語のストーリーが始まるのはアリシアーナが王立学園に編入するところからだ。

「確か、シェリアたんはエリックの婚約者でもう一人の攻略対象のトーマスの妹。見かけはきつい美女だが。性格は穏やかで温厚。なのに何故悪役なのか。シェリアたんはエリックを昔から好きで。最初はアリシアーナに嫌がらせをしないんだよ。けどシェリアたんを王妃にさせたい貴族でスフィア侯爵が画策。侯爵は言葉巧みにシェリアたんに近づき、王妃になりたければアリシアーナを追い詰めろと囁く。シェリアたんは徐々に策に嵌まり苦悩する。アリシアーナがエリックと恋仲になり嫉妬にもかられてついに。アリシアーナを誘拐させ、殺そうとした。それをしたせいで侯爵に裏切られシェリアたんは断罪される。エリックルートとトーマスルートではもれなく処刑だったよな」

俺はそこまでを思い出して身体中から血の気が引いていくのがわかった。シェリアたんが処刑だと?!俺の一番の押しキャラで憧れの子なのに。そんなのダメだ、絶対に。

よし、俺はシェリアたんのためなら悪役にもなってみせる。何が何でもあの子を処刑と修道院行きエンドから救うんだ!シェリアたんはエリックルートの場合、処刑エンドにまっしぐらでトーマスルートもそうだった。侯爵はいけしゃあしゃあとエリックやアリシアーナに協力しシェリアたんを陥れる。このゲームの真のラスボスといえよう。

そこまで考えて俺はふと閃いた。シェリアたんが俺を嫌いになればいいんじゃないか?そして別の奴を好きになるように仕向ける。自分が辛い思いをするがシェリアたんを救うためなら耐えてみせましょう。俺は一大決心をして紙とペンを用意した。ゲームのストーリーと人物、時系列などを詳しく書き込んでいったのだった。



俺はある計画を立てた。まず、シェリアたんとは距離を取る。アリシアーナについても情報収集をしてこれを同時並行させて。だが、シェリアたんを任せられる頼りにできる男という点で俺はどうしたものかと頭を抱えた。三歳の俺では探すのにしたって限度がある。まさか、他の攻略対象とくっつけるわけにもいくまい。大事なのはシェリアたんの好みと気持ちなわけで。仕方ない、誰か協力者を探そう。俺の前世などを話してもバカにせず、信じてなおかつ黙ってくれる人間をだ。俺は誰がいいか思案した。



が、なかなか協力者は現れない。一年経って俺は極力シェリアたんに会わないようにした。父である国王陛下にはシェリアたんは好みではないと言っておいた。陛下はそうかと苦笑いしていたが。それが効を奏してシェリアたんは俺に対する好意はまだないらしかった。



「エリック様。こんな所でどうなさいましたか?」

声をかけてきたのは俺の叔父で王弟であるラウルだ。彼もゲームの攻略対象だが扱いは隠しキャラである。淡い金の髪に薄い水色の瞳。俺とどことなく似た超絶な美形だ。

「あ。ラウル叔父上。お久しぶりです」

俺はわざとらしく丁寧に挨拶した。今、俺が四歳でラウルは八歳だが。うーむ。ちょっと待てよ?

俺は廊下の隅で蹲っていたのを忘れてラウルを凝視する。いたじゃないか。

シェリアたんを任せられる頼りになる奴が!ラウルは性格が穏やかで温厚。腹黒くはあるが頭もずば抜けて良いし武術もかなりの手練だ。シェリアたんを任せたとしてもこいつだったら大事にするはず。

「……エリック様?」

ラウルが居心地悪そうにしている。俺はしまったとすぐに慌てて視線を逸らした。


「な、何でもありません。叔父上、何かご用ですか?」

「……僕の母がエリック様にお会いしたいと言っていまして。来てくださいますか」

「え。スズコ様がか。いいですよ。今どちらにおられますか」

「陛下の執務室です。人払いはしてありますので。ご案内します」

ラウルの言葉に頷いて付いていく。父王の執務室に到着するまで互いに無言でいた。



執務室に着いて俺はラウルと来た事をドアの両脇にいた騎士に伝えた。その内の一人がわかりましたと言ってドアを開ける。

「父上。エリックです。入ってもいいでしょうか?」

「構わぬ。入りなさい」

低い声で返答があった。俺はラウルより先に入る。彼は後からゆっくりと入った。

「失礼します」

俺は入室したと同時に言う。父王は執務机の付属の椅子に腰掛けていた。周りを見たら左側の応接セットのソファに黒髪と薄茶色の瞳が印象的な美女が座っている。色は違うがラウルと顔立ちはよく似ていた。

「陛下。エリック様をお連れしました」

「ああ。ラウル、ここにはわしとエリック、スズコ殿しかいない。遠慮せずに兄と呼んで構わぬ」

「では。兄上、お話とは何でしょう」

ラウルが尋ねると父王はにこりと笑った。

「うむ。ラウル、これからは度々王宮に来なさい。その代わり、エリックの遊び相手になってほしい。後勉強を見てやってくれたら助かる」

「父上。俺は無視ですか?」

「……無視などしていないぞ。エリック、お前最近は部屋でぶつぶつ独り言を言って滅多に外に出ないらしいじゃないか。わしはそれが心配でな。だからラウルにお前を外に引っ張り出してもらおうと思い、スズコ殿と一緒に呼んだのだ」

父王は良い笑顔で説明する。が、スズコ様の紹介忘れてるぞ。親父。

内心で突っ込んだら何故か父王が一瞬睨んできた。あ、親父、俺がアホな事考えたの読み取ったな。さすがは父親だ。

「……こほん。エリック、あちらがラウルの母君であるスズコ殿だ。お前の遠縁の親戚にも当たる。さ、挨拶を」

父王、まあややこしいから親父は咳払いしながらスズコ様を紹介する。俺は頭を下げて挨拶した。

「初めまして。スズコ様。俺は第一王子のエリック・フォルドといいます」

「はい。先ほどご紹介に預かりましたスズコ・イルミナです。殿下、今日はお会いできてようございました」

涼やかな声でスズコ様は答えてくれた。お祖父様ー先王の二番目の王妃で今は田舎で静かに暮らしている大伯母に当たる方だ。ラウルの実母でもある。

「あの。スズコ様。殿下と呼ばずに俺の事はエリックとお呼びください」

「あら。よろしいのですか」

「はい。俺はまだ子供です。殿下と呼ばれるには未熟な身ですので」

「……ふふ。わかりました。エリック様とお呼びしますね」

スズコ様はそう言って俺に微笑みかけた。なかなかに察しのいい方らしい。

ラウルが面白くなさそうにしているが。俺はため息をつきながらもスズコ様に話しかけたのだった。

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